マッサージ
道中スミレが見つかっても面倒なので20層のツバキ達は迂回して会わないようにしていた。
29層に到着してから人気のオーク層なのでそこそこ人がいるかと思っていたのだが、自衛隊らしいパーティが2パーティほどいただけで、野良の探索者はいなかった。
「オーク肉目当ての人がいるかと思ったがいないんだな」
「オーク肉を取るならこんな下層にこなくても名古屋ダンジョンだったら12階層に狩ったほうが安全ですから」
と沙月の補足が入った。
「ああ、なるほど…他のダンジョンの事は考えてなかった」
「日本のダンジョンは全部行けるようにしておいてもいいかもなんですけどね」
実は北海道に行った際に北海道のダンジョンはカレンがちゃっかりマーキング済みだったりする。
まぁマーキングは別の機会にという事で今日はすでに夕方なので29階層は森林フィールドになってるので他の探索者が来ないところまで移動してキャンピングカーを出した。
「もう驚かないと思ってたけどナニコレ」
「まぁまぁとりあえず中に入ってからな」
驚いているスミレを中に押し込む。
全員で中に入った所で各々席に座り話し始める。
スミレは未だに辺りをキョロキョロしている。
「とりあえず今日は夜ご飯を食べて明日からオーク狩りをします」
「見張りはどうする?」
「障壁張っておくので大丈夫です。睡眠時間位なら持ちますので」
「了解、じゃあ飯は俺とカナタで用意するから休んでてくれ。特にスミレ足にキテるだろ」
と言ったらスミレが足を抑える。
恐らく長時間の緊張と力を入れていたせいで足がプルプルしていた。
「なんなら先に風呂入ってもいいぞ、ほぐしてこい」
「はい…お願いします。ただちょっと緊張抜けたらもう立てなくて…」
「まじか、カナタ飯頼んでもいいか?ちょっとマッサージするから」
「あいよ」
カナタは食事の支度に入る。
「ちょ待って、マッサージっていやちょっと休めば大丈夫だから」
「痙攣に近いだろうからちゃんと処理した方が」
俺は強引にでも足を取りほぐす。
「席を外した方が良さそうなのでそっち、私も手伝います」
「あれはなぁ…」
と言いながら2人はキッチンに行ってしまった。
失敬だな、2人ともやったことあるのに。
人体構造を把握している俺に取っては痙攣を治すのは容易い。
痙攣前よりベストコンディションにしてやる。
「ねぇ、待って。あーし達久しぶりに会ったばっかりじゃない?いきなり触るのは良くないと思うんだけど?」
「こういう痙攣とかはポーションじゃ治療出来ないからな早めに対処しないとクセになるからな」
「だから今は!ちょっタンマ」
「いいから大人しくしとけって」
そういってスミレの足をほぐすのを開始した。
―――――沙月side―――――
スミレさん…アキラさんの幼馴染という話だったが、彼女と関わるようになってからはアキラさんはかなり明るくなっていた。
歳相応というには少し幼くも感じるが非常に楽しそうである。
「なんかいつものアキラと違うけど…いいな、アレ」
「わかります…なんだろ、普段とのギャップ萌えって奴ですかね」
「ちょっと悔しい気持ちはあるけどな」
「それはそうなんですけどね、でも楽しそうにしてるのを見るだけでちょっと嬉しいです」
アキラさんは普段でもどこか影がある。
最近は、かなり改善しているがふと顔を見ると何を考えているのか消えてしまいそうな儚い表情を浮かべている時がある。
「精神衛生上は良さそうだよな」
「立場的には脳が焼かれる感覚あるのでこっちの精神衛生上は良くないですけどね」
「全くだな」
「アキラさんからはわからないですけどスミレさんからは確実に出てますよね」
「ああ、間違いないな。久々の再開で盛り上がったって奴を感じる」
とは言えアキラさんも楽しそうだしかなり有用なスキル持ちという事で取り込んだ事に後悔はない。
正直人はあまり増やしたくなかったというのもある。
「そういえば、女ばっかり集めてるけど男は入れないのか?」
「入れる気は0ですね」
「でもアキラがなんか言ってただろ?」
「ああ、1人くらい男性がほしいって話はしてましたね…まぁそれは無理です」
「まぁそうだよなぁ…正直私も御免だ」
「女所帯に男が入ると確実に揉め事が発生しますからね。もう少し割合が均等であればいいんですけどさすがに偏り過ぎてますからね」
昨日4人でいる時ですらかなりの頻度でパーティへの加入の話をしてくる輩がいた。
女性もいたが、全体の1割程度残りはすべて男性だった。
レベル不足に関しては解消出来るので問題ないがそもそもが有名人と一緒にパーティを組んで目立ちたい、金が稼げるなどの目的の人が多すぎて話にならなかった。
特にミレイさんとカレンの男性人気が高すぎるのもある。
まぁどことは言わないが2人の持つ女性の象徴のせいだろう。
本人達はこんなものとか言ってましたがそれは持ってる者の傲慢だと言っておきましょう。
特にカナタさんはその言葉を聞いてそれに掴みかかってましたからね。
カナタさんは女性からの人気があるようで1割の女性はカナタさん目当ての人が数人いた。
「まぁ無理だな、あそこまで露骨な奴らじゃ…」
「入れても良いって思えるのは氷川さん位ですけどもし勧誘したら西園寺さんに何をされるか…」
「はは、違いないしそもそもあの人は誘いに乗ってこないぞ」
「そうなんですか?」
「あの人はあんまりモンスターと戦うの好きじゃないって前に聞いたからな。代わりに対人戦はめっぽう強いぞ…今でもやっても勝てる気しないし」
「それアキラさんにも聞きましたね。スキル無しだと勝てるか怪しいって」
「たまに自衛隊とか警察の高レベルの人も指導受けに来てるレベルだよ」
思ってた以上に凄い人らしい。
「しかし、アキラのあれを受けるとああなるよな」
「さすがに防音はそこまで効いてませんからね」
先程から会話している間に後ろであられもない声が聞こえてくる。
いかがわしい事をしていない事はわかっている。
なぜならパーティメンバーは、全員経験者だからだ。
ちなみにランさんからプロの整体師以上だとお墨付きもでている。
「あれはヤキモチを妬くとかいうレベルじゃなくて羞恥の方で若干、可哀想な気持ちすらある」
「気持ち良すぎて変な声でますからね…正直アキラさんには隠してましたけど軽く…きましたからね」
「わかる、私もだ…触手使うのが反則過ぎるんだ」
「見る人から見たらなんかのプレイですからね」
筋肉痛や痙攣なんかはポーションでは回復しない。
恐らく筋肉などの成長を阻害しない為なのだろうがそういう仕様なのだから仕方ない。
「肉体強度はあがってもこういう所は人間ですからね」
「ひたすら狩ってる時とか普通に筋肉痛にはなるからな肉体は人間ってことだろうさ」
レベルが上がってパワードスーツが強化されても肉体自体は人間のままってことだろう。
普通に捻挫もするしひねったり寝違えたりもする。
実に不思議である。
ひときわ大きなスミレさんの声が響きそこから静かになった。
「ああ、可哀想に」
「ほんとですね…乙女の尊厳は守れてるといいですけど」
と食事の支度を終えていたが少し時間を置いて向かおうと思い1品追加するのだった。




