上城姉妹の不和
さて藍が優大の家にやって来ます
14話です
土曜日の朝10時ごろからある男子の部屋に若い男女二人が距離を取って静かに座っている。彼らはやたら緊張している様子だった。
彼はどう話題をフっていくかに思考し、彼女は好きな人の家に呼ばれて喜んでいた。とはいえ彼もその娘が大変なオシャレをして自分の家に来たものだから満更でもなかった。
藍の可愛らしい服装をちらちら見る優大。彼女は白いニットの肩出しした上着に、黒のヒラヒラしたミニスカートを穿いていた。白い艶だった太ももはほどよい肉づきで、男子なら一度は見返してしまう形状だ。幼馴染とはいえそんな色っぽい格好で来られては当然優大だってどきまぎする。
「な、なかなか気合いの入った格好だな」
「え? う、うん。どう、似合ってる?」
「あ、あぁ似合っているさ。……可愛いよ」
「そ、そう。ありがとう……」
「……」
しかし会話が続かない。この空気を一蹴するために優大はとりあえず飲み物を取りに行った。部屋に戻り藍にジュースをあげる。
「……ありがと」
「おう……」
とりあえず藍が萌と不和になっている原因をどう話の中で持って行くかをある程度まとまった辺りの時に藍から質問が来る。
「どうしたの? わざわざ家にまで呼んで?」
「や、呼んだのは他でもない。……偶にはお前とゆったり色んな話をしたいと思ったわけだ」
「そ、そう……」
「仕事の調子はどうだ? トラブルとかないか?」
「そうね……、トラブルってほどではないけど……。あっ、そういえば共演者の中で私が女子高生だからってウザ絡みしてくる二、三人の男達がいるわね。普段周りにJKがいないからか知らないけど、かなり鬱陶しいわねー」
「ほう、kwsk」
「例えば俺はここが凄いとか、こういうの得意とか自慢そうにマウント取ってくる……」
そうこうしている内に話が盛りあがる。
「……うわー、やっぱり大人の男ってJKとか好きなんだな~」
「本当それよね。良い齢してだらしがないわ!」
「ふっ。要するにその芝居って前に言ってたヤンデレ役の話だろ?」
「そうよー! 役で好きだからって本気にしないでって感じよっ! あくまで役は役なんだから、あんた達には全然興味ないんだから!」
「おー、怖っ! 藍の説経節が炸裂だ!」
「もー、そんな言い方しなくて良いでしょー?」
「いよっ、藍姫!」
「だからその言い方も止めてよねーっ」
「あはは!」
こうしてついつい楽しく話してしまい、優大は当初の目的を忘れてしまうところだった。
(はっ、いかんいかん! 普通に会話を楽しんでしまった話を戻さないと)
「藍」
「なに~?」
「最近観た演者でこれはっと思う人とかいたか?」
その時藍はピクッと眉を動かし、さっきと打って変わって真顔になる。
「……。いないわ」
「……。そうか」
そして彼女は優大から目線を逸らして静かにジュースを飲む。しかし優大はすぐにその発言が嘘だと見抜く。
(やはりな……)
彼女の行動からでも分かるのだが、今の言葉が本当なはずはないのだ。萌のあの演技を一番間近に観て、掛け合いをしたのは他でもない藍なのだから。何かを感じずにはいられなかったはずだ。
「……。ま、確かに藍と双璧をなせる演者なんてそうそういないわな~」
「……」
「あ、そうそう。今期で面白いアニメなかったか? 相変わらず量が多いから絞りにくくてさ~」
「え? ……えぇ、それなら○○ちゃんの出てる『ユル♡ひら』なんてどう? 結構癒される作品ね」
「あれは確かにゆるふわ系で面白い」
「確かにそうよね。仕事終わりに結構観るんだけど、かなり良いわね」
「あ、そういえば△△ちゃんも出てたから、萌のやつも好きなのかなー?」
「…………どうしていきなり萌の話になるの……?」
「ん?」
萌の名前を出した瞬間、藍はかなり不機嫌な表情になる。
「いや、萌が△△ちゃんのこと好きって言ってたからな。どうした? なに怒ってんだよ?」
「いや、別に……」
「もしかして………ケンカでもしてるのか?」
「……! してないわ! ………してないわよ」
「……藍」
「……何よ?」
「何があった? そんな言い方するんだから、ケンカじゃないにしても何かしらの理由で怒ってるんだろ? 訳を話してくれないか? 僕としてはかけがえのない幼馴染だ。姉妹仲良くいてほしい」
そして藍は黙って俯く。
(よし、これは悪くない流れ……)
「……なにが幼馴染よ」
「ん?」
「誤魔化さないでよ……! 貴方も悪いのよ…! 貴方が萌に………萌に惚れてしまうからっ!!」
「…………え?」
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