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文化祭編 その3

劇を終えた後の三人の様子です。


12話です

「わー!!」


 2-3の劇が終わり、パチパチと観客席から拍手喝采が起こる。そして舞台裏に戻ってきた萌は真っ先に優大の所に行く。


「どうだった優君?」

「あぁ……、良かったよ……?」

「?」


 やたらよそよそしい優大の態度に萌は不審に思い、もう少ししつこく追及してみた。


「どの辺が良かった?」

「どの辺って……全体的に?」

「それじゃあ分かんないよー。特にどの辺が良い?」

「……問題ないから、あれで大丈夫だ……!」


 彼はなにやら気まずそうにふいっと顔を背ける。そんな彼の態度に彼女はいたく戸惑ってしまう。

(……え、えーーーー!? 優君に嫌われたーーーー!?)


 話は変わって劇全体のことを言うと、評判はかなり上々だった。もちろん藍は当然なのだが、それよりもみんなは“あの女王様役は誰だ!?”と学校中で噂をし、たちどころに評判をかっ攫った。特に男子達がその女子の正体を知りたくて、ソワソワしている状態である。

 一方その頃、そんなことを気にとめず一人すたすたと廊下を歩きながら思案に暮れる優大の姿があった。

(まさか……あの子が……今まで恋い焦がれて探し求めていた子が…………萌だったなんて…………)

 あの9年前に見た少女の演技と今回した萌の演技とを重ね合わせる。

(……間違いない。美しい上に輝かしく、そして真に迫るあの演技は彼女そのものだ……!)

 初恋の相手がついに分かり優大の心は興奮冷めやまぬ状態だ。

 しかし……と続く。

(……これから一体どういう顔して会えば良いのだろうか? 今まで通りに接する? いや、それとも……)

 一方で初恋の相手が意外な存在なだけに戸惑いの気持ちも存在していた。つまり彼の心の中では嬉しさと困惑が共存しているのだ。


「うーむ……」

「あのさ、君……2-3の子だよね…?」

「え?」


 その頃教室でまだ衣裳姿のまま机に顔を向け、床を足でジタバタさせる萌の姿があった。

(うわーーーっ、やっちゃった、やっちゃったーっ! ……ど、どうしよう。………初恋の子の正体が私だと優君にバレて、幻滅されたかな……? いや、まだ正体はバレてない可能性が微レ存? いや、あの顔は分かってたよなーー! 優君そういうところはさどいからなーー! あー、やっちゃったーーー!!! オワタ……、萌はもう燃え尽きまし……)


「……萌ちゃん」

「?」


◇◇◇

「そうですが……」

「おっ。じゃ、じゃあさっ女王様役の子の名前知ってる?」


 知らない顔の男子二人組が優大にきょどりながら、いきなり話しかけてくる。


「えっーと、“上城萌”……だけど……?」

「上城……? えっ、もしかして女優の上城藍さんと親戚とか!?」

「あ、はい。双子の妹ですが……」

「おーーっ、そうなんだーー!! 道理で演技が上手い訳だ!」


 なにかの得心がいったのか、二人は同時に頷く。


「えーと、ところで貴方達はどちら様……?」

「こうしちゃおけない! 早く行くぞ!」

「お、おう!!」


 そう言ってその二人はこの場所から急いでどこかへと走り去った。


「なんだー……一体……?」


 そして一息ついて優大は自分のクラスに戻ってみたら、多くの生徒がこれでもかというぐらいクラス前の廊下に集まって、その状況に優大はついギョッとしてしまう。


「な、なにごと……!?」


 そしてクラスの一人が彼に近寄り、


「な、なんか……萌ちゃんを一目見ようと、どこからともなく他のクラスの人達がたくさん来たみたいで……」

「え………?」


◇◇◇


 藍は劇を終えた萌をじっと見ていた。

(萌……貴女……本当に……)

 見ていたら彼女は優大のところに行って話かけている。そして彼の様子が変になっていた。

(あら……どうしたのかしら? 萌への急なよそよそしいあの態度は…?)

 あの二人の昔の関係を知らない彼女は不思議そうに彼らを見る。

(別に劇が失敗したとは思わなかったけど……。一体どうして……?)

 結局あの態度の意味が分からず、彼女はそのまま友達とクラスに戻った。そしたらクラスの子達が彼女の元に押し寄せる。


「さすが藍ちゃんの芝居! 凄かったよー! 実力のある演技って感じで最高だったよー!」

「前見た映画より深みが増した気がするー」

「白雪姫がそこにいるって感じがしたー」

「みんなありがとー」


 その時は周りから褒められて良い気分になる藍だった。しかしそのまま話題は萌の方に切り替わる。


「萌ちゃんも凄かったよねー」

「うん、ほんとほんとー! 感動したー」

「あれで初めてとか凄くなーい?」


(…………)


「……初めてではないわ。多分、6、7年振りじゃないかしら?」

「え? それでも凄くない? 久しぶりに演技したってことでしょ? ヤバくなーい?」

「え? やっぱ天才なん!?」


 そう周りが萌の演技を高く評価して騒ぎ始めたので、幾分ムッとした。イライラしながら周りを見ると、何やらクラスの前に人が集まって来ていた。


「何かしら?」

「あら、本当だー。どうしたのかな~?」

「…なんか萌ちゃんを一目見に来たみたい……!」

「へえ……」


 藍は萌と大勢の生徒達のいるクラス半分の方を無言で眺める。そうしていると優大が教室に戻ってきた。


「あら、優大が戻って…………」


 そしたら彼はすぐに萌の方を眺める。その眺める様子がやはりおかしい。いつもと違う。今度はこの状況に対して明らかに嫌そうな表情をしていた。そして藍は嫌なことに気がつく。

(優大、もしかしてあの演技を見て、萌に………惚れた……?)

 そう感じ取った彼女はじっと自分の妹を見て、不愉快な気分で睨みつけるのであった。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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