12冊目『イギリスに伝わる怖い話 英国幽霊怪奇譚』高橋宣勝(大和書房)
〇あらすじ
タイトルの通り、イギリスに伝わる怖い話 (主に幽霊譚)をまとめた一冊。
「幽霊はなぜ現れるのか」「眠れない死者たちの夜」「異界からの訪問者たち」「『魔性の恋人』をめぐるフォークロア」「吸血鬼伝説と恐怖のかたち」の全五章から成る。
「幽霊はなぜ現れるのか」では残された人が死を悲しむあまり死者を呼び起こしてしまう話や幽霊が自分を殺した人間を告発する話、遺していった財産を気にして現れる幽霊の話などが紹介される。
「異界からの訪問者たち」では死の直前・直後に現れるというレイスや妖精、悪魔等について触れられる。
「『魔性の恋人』をめぐるフォークロア」では死んでしまった彼氏が彼女を迎えに来る話 (作中では「幽霊花婿」と分類)が複数紹介される。
その多くは彼女が恋人の後を追って死ぬ話だが、例外的に存在する「恋人が死人であることを知って逃げようとする話」が誕生した経緯を追い求める方向に話は進む。
最終章「吸血鬼伝説と恐怖の形」では幽霊花婿の正体は吸血鬼伝説の変形したものであるとしてそれを裏付ける話が紹介される。
〇感想
イギリスの民間伝承をまとめた本ということでタイトルだけで手に取ってしまいました。
日本とイギリスの幽霊観 (?)の違いが感じられたり、300年ほど昔の話もあったりと色々興味深かったです。
現代の幽霊譚は意図がはっきりしない、ただただ不気味なものが多いように思いますが、この本で紹介されている幽霊譚は人間味に溢れていて優しい印象のものが多いかも。
要求がハッキリしていて、それが叶うと満足して消えてくれたりするから理不尽さを感じにくいのかも知れませんね。
面白いなぁと思ったのは幽霊に取り憑かれた女性の話。
彼女が妊娠するとそれまで毎晩現れて恨み言を言ってきた幽霊が現れなくなります。その理由が「赤ちゃんは神様のものだから」というもの。
赤ちゃんが神様に守られているから、その子を宿している母親も幽霊から守られるというのです。
しかし、赤ちゃんというのはいずれ生まれてきてしまうもの。
その時に幽霊が来てしまうと恐れ、女性は友人を呼びますが……。
この本の幽霊譚を読んでいて感じたのは「致死率の高さ」です。
復讐の話が多いせいか、幽霊に遭遇した人がその日〜次の日にかけて死ぬ確率が高い。
恋人の幽霊が来たら自ら進んで同じお墓に入ろうとしちゃう話もありますからね。
後半ではひとつの話をきっかけに類話を辿り、口承文学ならではの変化を知る良い誘導がなされていると思いました。
自然な流れで小難しいテーマに移行している点。それでいて文章は堅苦しくない点がすごかったですね。
グリム童話のような、ちょっぴりブラックな雰囲気のある昔話が好きな方はこの本もハマるのではないでしょうか。
二十年ほど前の本なのでお近くの書店で見つけることは難しいかもしれませんが、運良く出会えた方はぜひお手に取られてみてください!




