10冊目『檸檬の棘』黒木渚(講談社)
〇あらすじ
「種」「幼木」「成木」「果実」の全四章。
「種」では夜中目覚めた主人公の女性が床に落ちた父親の頭部を見つけることから始まります。
頭だと思ったのは床に落ちたブランケットでした。それを長年恨み続け、葬式にも行かなかった父親の頭に見間違えていたのです。
その後ゾルピデムという「悪魔じみた名前」の薬(睡眠薬)を一粒掌に載せます。
「幼木」では主人公の幼少期、小学校高学年〜高校にかけての時期が描かれています。
九州の田舎で生まれた主人公、栞は中学受験をし、小学校卒業と同時に実家を離れて中高一貫の学校へ進学し、寮生活を送ります。
そこで出会ったのは飛鳥という一つ下の学年の少女。彼女は霊能力のようなものを持っていました。
飛鳥は栞の部屋に良くないものがいる、と言いカナちゃん、美月っち、マルの三人も助っ人に呼び除霊を試みます。
そしてそのことが寮中の噂となり、集団ヒステリーを起こす原因となりました。
そのことで寮長先生から呼び出された栞たち。
酷く怒られることを覚悟していましたが、飛鳥が一対一で話をしたいと申し出、一時間ほどして再び部屋に呼ばれた時には先生の態度は軟化していました。
軽い注意を受けただけで済んだ栞たちでしたが、それから半年ほどで飛鳥は自主退学してしまいます。
他の寮生の私物を盗んでいたことが明らかになったからでした。
飛鳥が退学してから数ヶ月後、両親が離婚したことを知らされます。
その時、父からは何も連絡がなく、栞の中で父への憎しみが膨れ上がっていきました。
それからしばらくして、栞が実家に帰省した時、泣いている弟を見つけます。
街中で偶然見かけた父の車の助手席には、弟と同世代くらいの少年が乗っていたというのです。
自分の存在に気付きながらも無視して走り去ったことを悲しんでいる弟に、栞は「父親に捨てられた記念に木を植えよう」と提案し、二人は病気にかかったレモンの苗を記念樹として庭に植えます。
「成木」では成人して以降、「果実」で現在の様子が描かれています。
この二章はぜひみなさんが手に取って、読んで確認してみてください。
〇感想
今回は牧田お気に入りのアーティストさんの作品です。好きだと言いつつ二年近く積んでいたんですけど……(笑)
言い回しが独特の感性を表していて好きなんですよね。
「波の音は世界がはじっこから崩れてゆくときの音だと思う。」とか、雲の色を「灰色と憂鬱を混ぜた色だ。」と表現していたりとか。
この作品では「怒り」というものが前面に押し出されています。
病気のレモンの苗を選んだのも、その木が自分たちと同じ怒りを抱いていると感じたから。
それは私が曲を聴いて受けた印象と一致していました。
他の楽曲でもそうなのですが、負けん気というか、理不尽への怒りというのを感じさせるものが多いんですよね。
その強さや鋭さが好きなのです。
写真に一緒に写したのでCDの方の説明も……。
本作は本とCD同時発売で、CDの初回限定版には特別冊子『黒木渚の棘』がついていました。こちらは楽曲の制作風景とか裏話のようなファン向けの冊子でしたね。
ちなみに、歌詞カードの最後には書籍版『檸檬の棘』の序章が載っています。
しかも!
同時購入者限定 (?)のサイン入りポストカードも!!
これは嬉しいサプライズでした。
表題曲の「檸檬の棘」はYouTubeでも聴くことができます。
書籍とリンクした歌詞と創作者のことを表現したようなサビが素敵な楽曲ですのでぜひ聴いてみてください。
他にもアルバム収録曲だと「美しい滅びかた」と「彼岸花」が好きです。
「美しい滅びかた」の方もすこーしだけ小説とリンクがあり、なぜだか嬉しくなりました(笑)
「檸檬の棘」を気に入っていただけた方はぜひアルバムの方も手に取っていただければ……と!!
書籍の方だとまだ『本性』と『呼吸する街』も積んでいるのでそちらも早く読みたいですね。




