9冊目『こども風土記』柳田國男(青空文庫)
〇あらすじ
この作品は子どもとそのお母さんが共に読めるものを、という依頼を受け朝日新聞に掲載されたコラムのようなものです。
が、反響があったのは筆者と同年代やさらに年齢が上の方々だったようでぼやきから始まっています。
そして最初の項として掲載されているのは「鹿・鹿・角・何本」という遊びです。
アメリカのミズーリ大学のブリウスタアという人から「日本にこういう遊びはありませんか?」という手紙を受け取ったことから始まります。
目隠しをした子が立っていると別の子が「How many horns has the buck?(いかに多くの角を 牡鹿が持つか?)」と問いかけながら、背後で何本かの指を出して当てさせるという遊びです。
言語の違いによる差こそあれ、同様の遊びはドイツやイタリア、スウェーデン、トルコなどヨーロッパの国々やアメリカなど広範囲で確認されており、日本ではどうかと問う内容だったのです。
調べてみると、滋賀県の今津には少なくとも明治末期までこの遊びが行われており、その時の問いかけの文句は「鹿・鹿・角・何本」であったそうです。
また、次の「あてもの遊び」の項目では九州の久留米やその周辺でも「鹿なんぼ」という遊びがあることが紹介されています。
これは猟師が仲間同士で鹿の大きさ(一般に角の枝分かれした数が多いほど大きい)を声に出さず知らせあう動作が遊びとして子供たちに広がった、生活に即した遊戯であるとも書かれています。
東京の子供たちにもその遊びの名残ではないかと思われる「あてもの遊び」があったようです。
「かごめかごめ」も有名なあてもの遊びですね。
本当は怖い〜なんて言われる「かごめかごめ」の歌詞ですが、この作品の中では「屈め屈め」が変化したものだと説明されています。
それを誰かが鳥の籠と解釈して歌詞を付け加えていったのだそうです。
これは初めて見る説でした。
柳田國男氏の活動していた時期を考えるとこれが正しい説なのでしょうね。
他にもおもちゃの語源は「弄び」が「モチヤソビ」へ変化し、そこへさらに「オ」を付けたものに違いないとしています。
ままごとは女の子が河原などで料理をして食べるという行事が元になっていたり、日常の生活や信仰に根付いた行為が子供たちの遊びに繋がっていようです。
現代ではほとんど失われてしまった文化を知る良い機会になりました。
〇感想
最初の「鹿・鹿・角・何本」の項を読んで思わず「やばい! なにこれ!!」とテンションが爆上がりしました。
子供の遊びを通じて世界の文化に触れる。
しかもそこには国境、さらには大陸を超えた共通項が……!?
なんて民俗学大好きな私の好みど真ん中な題材。
早く出会っておきたかった。
前の項目と関連した遊びが紹介されたり説明の中で「他の地方では〜」と触れられたものが続いていくので続けて読みやすいですし、ひとつひとつが短いので限られた時間でも読めるお手軽感。
いいですよね。
語源の話なんかもあって、とても勉強になります。
たとえば、「おみやげ」は今では「お土産」と書きますが本書の中では「御宮笥」と書かれています。
「御宮」なのは神社などにお参りに行った時に買ってくるものが主だったからのようです。
最近ではその土地の物産品を買ってくることが多いから「土産」なのでしょうかね?
ほんの百年くらい前にはあった風習。何十年、もしかしたら百年単位で続いてきた遊びの文化ですが、私が知っているのは「かごめかごめ」と「ままごと」くらい。
それも本文中に書かれている内容と実際に私が見聞きしたり体験したりした遊びとも内容が違っていたりします。
お祭りや日常の行事もきっとそうなのでしょう。
近代化によって得たものと失われたもの。
考えさせられる部分も多い作品でした。
民俗学を学んでいけば失われた文化についてもっと深く知ることができるので、もっともっと勉強したいなと思わされますね。
民俗学って創作、特にハイファンタジーとか世界そのものから創るようなタイプの作品を書かれる方の文化の形成とかの役に立つんじゃないかなと思うんです。
加えて、タイトルにもあるように、この作品は子供が読むことも想定して極力わかりやすいように書かれていると思います。
項目が多すぎてご紹介出来ないものも多々ありますので、興味を持っていただけた方はぜひ、全編を通して読んでみてください!




