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もしも十年前に戻ったら  作者: 茶々
第1章 動き始める人生
25/28

#25嘘が増える日常



「というわけで、河野くんには是非生徒会に入ってもらいたいんだけどいいよね?というかもう入っているようなものだたけど…」


 5月下旬、生徒会選挙が終わり無事に雪宮先輩が生徒会長になった。

そうすれば当然役員を探す。

そして当然最初に声をかけてくるのは、4月からずっと生徒会を手伝っていて、仕事内容もある程度わかっている一年の僕だろう。

それが分かってたからこそずっと手伝ってたんだけども。


「当然入りますよ。というか、雪宮先輩に言われるまでもなく、浅見先生に言われて生徒会入る紙に記入させられてましたよ。特に拒否する理由もなかったので書きましたが」


「あ、そうだったんだ。あれ?ということはすでに役員?」


「そうなりますね」


「おおー!ようこそ生徒会へー!」


 というわけで、僕は生徒会役員になった。

ちなみに。


「えっとそれで、そっちが中間テストで学年二位だった林さんってことで大丈夫?」


「はい、わたしもその、生徒会に入りたいです。特に手伝いとかはしてこなかったんですけど…」


 林さんは中間テストで学年で二番目の点数を取っていた。

ちなみに一番は僕、ではなかった。

隣のクラスの女子だったはずだ。正直結構絶望した。

 毎日のようにめちゃくちゃ勉強して、睡眠も削って、体を壊しそうになるような生活をずっとやっていたのに一位は無理だった。

中学までの勉強は何とかなった。だが、高校は違った。そもそも僕には限界があるのかもしれない。

前回の人生で学んだはずだった。無理なものは無理だと。できない人が頑張っても天才には勝てない。

だけど、中学までは努力で行けていた。高校でも努力はした。というか今までよりもさらにした。

結果はだめだった。

 いや、決してダメなわけではないだろう。

学年で四番目に点数が高いのだから。だけど、僕は結果が出た次の日動けなくなっていた。

 林さんは「わからない選択問題が勘で当たっていた」と言っていた。きっと僕の気持ちを思ってだ。

林さんは僕の努力に気付いてくれていた。だからこそ慰めてくれたのだろう。嬉しかった。だがきつくもあった。

だから、僕は決めたのだ。

 期末テストで一番になる。

そして来年は生徒会長になる。

自分の考えられる最高の自分になる。目指すのではない。なるんだ。絶対に。



 中間テストが終わってから僕の生活はさらにハードになっていた。

それこそ身体を壊してもいいと思えるぐらいに。

だが学校やバイトでは、悟られたくない。心配かけたくない。そして無理をしているとは思わない。自分に嘘をつき続ける生活。それを続けていた。

 そして、今日。ひとまず生徒会には入ることが出来た。絶対入れるとは思っていたけど、いざ理想の自分への一歩目を踏めたことは少し心に余裕をくれた気がした。



「さて、今期の生徒会メンバーがそろいました!一応自己紹介しておこうか。まず私からね。生徒会長の雪宮麗(ゆきみやれい)です!色々迷惑とかかけちゃうかもしれないけどよろしくね!」


 生徒会室の机を囲むようにして自己紹介が始まる。


「えっと、僕は田中圭太です。なんか、去年から生徒会にいたせいで副会長になっていました…。頼りにならないと思うけどよろしくお願いします…」


 かなり気の弱そうな自己紹介が行われる。


「河野颯太です。四月から生徒会で手伝いをしていたので再度という形になりますが。改めてよろしくお願いします」


「林花凛(かりん)です。えっと生徒会で何をするのかとか具体的にはわからないので迷惑をかけてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします」


 林さんも自信なさげに自己紹介をする。


「じゃあ最後に俺ですね!佐藤孝太郎(さとうこうたろう)です!多野先輩から是非入って!って言われて入ることになりました!正直仕事とか全然できることないですけどよろしくです!」


 大丈夫なのかな?この人は。

一年らしいけど会ったことはなかった。結構チャラそうな人だけど、多野先輩とどういうつながりだろう。正直接点がなさそうに見える。


「というわけでこの五人で一年間生徒会を運営していくことになります!大変なことも多いと思いますがみんなで協力して頑張っていきましょう!」




*――*――*




「おはようございます」


「あ、おはよう」


 学校が終わり16時からのバイトをするために東栄ショップへやってきた。

なんだかんだでバイトを始めて二カ月が経っていた。

もともと慣れていた仕事だったが、二カ月やることで完全勘を取り戻していた。

 僕は今の生活でバイト中が一番安心する。なぜかというと、ここでは自分ができる人だと思い込むことができるからだ。

実際は前回の人生で働いていたから、最初から何もかもできたわけではない。でも、仕事ができると褒められる。先輩から、そしてもちろん林さんからも。

そのことで承認欲求が満たされ、安心する。勉強では林さんほどの成績は保てないが、ここでは圧倒的に優秀だ。

それが今の僕には安心感を与えてくれる。それが良くない事と分かりながらも…。



*――*――*




「お疲れさまでした」


「あ、河野くんちょっと良い?」


 閉店作業が終わりタイムカードを押したので帰ろうと挨拶をした、がそこを先輩の三司さんに止められる。


「はい、なんですか?」


「あー、えっと大丈夫?」


 言われて少し驚く。だが顔には出さないよう気を付ける。


「え、っと何がですか?」


 あくまでも何のことを言われたかわからないような、そのように振舞う。


「あのね、勘違いだったらごめんね?河野くん無理してない?」


 予想通りの言葉だったが、いざ言われると顔に出そうになる。

三司さんは前回の人生の時もここのバイト先で出会っていた。その時も一度言われたことがある。

それは僕が不足シフトを埋めるために8連勤していた時のことだ。その時はまだしっかりと大学にも通っていた。

そんな時だ。『河野くん?大丈夫?』と帰り際に言われた。この人は本当に人の変化に気付く人だと思う。事実、林さんですら気づかなかった僕の変化に気付いている。素直にすごいと思える。

だけど僕は優しさは受け入れない。受け入れてしまったら無理をすることをやめてしまうから。


「特に無理した記憶はないので勘違いだと思いますよ。でも、心配してくださってありがとうございます」


「そ、っか。ならいいんだけど…。うーん…。何かあったらいつでも相談してね?」


「………はい、ありがとうございます。もしかしたらいつか頼らせていただくかもしれません」


「うん、任せて!」


 つい、やさしさに甘えそうになる。

もし、本当に耐えられなくなったら頼ることにしよう。そんなときは来ないだろうけど。





なんとか今月中に出せました。

ちなみにですが、ヒロインの名前ここにきて初出しです。


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