#21自分で自分を苦しめて
学校にバイト、色々忙しい日々が続いていく。
さらには家での家事が地味に大変だ。ついついさぼってしまいたくなる。だがそんな中でも忙しさが増していく。なぜなら。
「河野は中間テストとか余裕そうだよなぁ…」
「いや、さすがに余裕なわけないよ…。結構勉強してやっとっていう感じかな」
「でもお前中学の時めっちゃ成績良かったんだろ?」
「まあ悪くはなかったけど…。というか誰に聞いたのその情報」
中学の僕を知ってる人はこの学校には林さんぐらいしかない。なのに大船がこの情報を知ってるのはなぜだろう?林さんから聞いたのかな?
「浅見先生に聞いた」
「あの先生個人情報をなんだと思っているんだろうな…」
ほかの先生からの評価も異様に高いのは絶対に浅見先生のせいだと思っている。
そもそも最初に教師間で僕のことが噂になっていたのは、浅見先生が僕の推薦書などの内容をほかの先生にも話したのだろう。あの先生ならあり得る。
「まあいい先生だからいいじゃねえか。美人だし」
「いい先生だとは思ってるよ、ただ先生の明らかな期待が怖い…」
先生は時々「まあ河野くんなら中間テストの成績学年一位とか余裕よね」とか言ってくる。
ちょっと理解できない。いや確かに小テストはほとんど点数落としていないんだが。だからと言って中間テストも余裕なわけではない。
「河野に期待する気持ちは分からなくはないけどな。お前授業中の態度とか小テストとかめちゃくちゃいいからな。ましてや予習復習も怠ったことないんだろ?」
「確かに予習復習はやってるけども…」
毎日バイトが終わって帰ってきた後に家で三時間ほどはその日の学校の授業の復習や教科書の先のところをワークなどを使いながら予習している。
去年まで入っていた塾でこうしておけば困ることはないと言われていたからだ。お陰で睡眠時間は減るんだけどね。バイトしながらはやっぱりきつい。慣れるまでやるしかないんだけど。
「お前マジですげえよな。俺だったらすぐに心折れてゲームとかやっちゃうわ」
「ここまで勉強をずっとやってきたからね。今更さぼるのは自分が許さないよ」
「そう思えるのがすげえわ…」
まあ自分でもすごいとは思う。
だけど、今更この考えをやめられないというのが本音だ。
なぜかというと、誰も失望させたくないという気持ちが強いからだ。前回の人生で親は僕に失望していた。友達もこいつは気楽でいいなとか思っていただろう。そんな空気感は話すたびに感じていた。
もしここで僕が勉強をさぼって何もしなくなってしまってはきっと前回の人生どころじゃないほど失望されるだろう。今までが良い分さらにね。
だから僕はもう止まることができなくなっている。ここで止めて嫌わるのが怖いから。親や友達、そして林さん。もし嫌われることがあったら僕は耐えられないだろう。
だから僕は多少無理してでも頑張らなければいけないんだ。
――――――――――――――――――
「浅見先生、すこしいいですか?」
中間テストの二週間ぐらいに僕は浅見先生のもとを訪ねた。
「どうしたの、河野くん」
職員室で机に座りながら書類整理していた手を止めて、こちらを向く。
「先生って生徒会の副顧問ですよね?」
「ええ、そうだけど。もしかして生徒会に興味あるとか?」
「はい、高校に入ったら生徒会に入りたいって思っていたんですけど、どうすれば入れるかわからなくて…」
「ああ、なるほどね。それなら生徒会に体験で入ってみる?次の生徒会長が決まるまでは正式に役員にはなれないと思うけど、先に生徒会に馴染んでおけば次期生徒会長がきまった時に誘われると思うし」
友澄高校は現役員に誘われた人が生徒会に入っていくという方式らしい。まあだれも入らなかった場合は先生が適当に声をかけるらしいが。
「えっと、じゃあ生徒会室に訪ねてみれば大丈夫ですかね?」
「ええ、ちょうど選挙も近くて忙しくしてると思うから歓迎されると思うわ。一応生徒会の子たちに伝えておくわね」
「はい、お願いします」
「それにしても、テストが近い時期に生徒会の手伝いもしたいなんて、やっぱり余裕ね…」
「ははは、これでも結構努力はしてますよ…」
実際最近は勉強量を増やして全然睡眠時間が取れていない。今のところ生活に支障は出ていないが、そろそろ思いっきり休みたい気持ちもある。まあテスト明けでいいだろう。
「あまり無理はしないようにね。バイトもしてるんでしょう?」
「まあ、はい。週に四日から五日ほど」
「結構多いじゃない。大丈夫なの?」
「何とかなっています。一人暮らしで親に負担賭けてしまっているので少しでも多く稼がないと申し訳ないので」
お父さんには生活費は振り込まないでいいと言ってある。
家賃を払ってもらえてるだけで十分に助かっているのでそれ以上負担はかけられない。
「はぁ…しっかりしてるわねぇ。でも、まだ高校生なんだから、何かあったら相談はしなさいよ?無理しすぎも良くないんだから」
「はい…、ありがとうございます」
浅見先生に礼を言い、職員室を出る。
「無理…か。してるのかなぁ…」
職員室のドアを背に僕は小さくつぶやいた。
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