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もしも十年前に戻ったら  作者: 茶々
第1章 動き始める人生
19/28

#19初めての(大嘘)アルバイト



「おはようございます」


「おはようございます」


 レジの傍らにロッカーのカギが置いてあるので、レジに立っている店員の松永さんに挨拶をした。


 鍵を取り、更衣室に行き着替えをする。面白いことにロッカーは前回の人生と同じだった。ロッカーは二人で共同だ。僕と同じロッカーを使っているのは一年前ぐらいに入った大学一年生の男の人らしい。まだ会ったことはないが、おそらくあの人だろう。前回の人生で僕が入った時に大学四年生でロッカーが同じだった遠藤さんなんだろうな…。

全く違和感のない更衣室で着替えて、事務所に向かう。多少の違いはあるがほとんど三年後と変わらない。違うといえば、やはり人だろう。僕が前回の人生でバイトを始めたのは、今から丁度三年後のことだ。社員の人は同じだが、バイトの人が全然違う。

知ってる人もいるが知らない人も数人いる。どんな人なのだろうか。というか、あの二人はこのころからいたのか。僕が入った時にバイトリーダーをやっていて、めちゃくちゃ仕事が早くて素直に尊敬できていた二人だ。確か僕の二歳上だったから今はまだ高校生なのか…。少し面白い感覚だ。


 事務所に行くと社員の人がPCでの作業をしていた。


「おはようございます」


「おはようございます、あれ?今日初めてだっけ?」


「はい、そうですね、あ、すいません挨拶を忘れていました。今日からお世話になります河野です。よろしくお願いします」


 面接をしてくれたり、ロッカーの場所などを説明してくれた社員さんはほかの人だったので、一応初対面だ。まあ僕からしたら会ったことのある相手みたいな感覚なんだが…。


「あ、そういえば初対面だったね。杉野です。よろしくお願いします」


 僕が戻ってくる直前でも変わらずにここで働いていた杉野さんが挨拶をしてくれる。


「最初の三回は研修ってことになってるから、レジに入るときはだれかと一緒に入ることになるんだけど…。申し訳ないんだけど今日一緒に入る予定だった人が体調崩しちゃって来れなくなったんだよね…」


 おぉ…。それは何とも…。


「来てもらって申し訳ないんだけど今日の研修は難しいかもしれないんだよね…」


 まあ、そりゃあそうなるよな。多分事前に連絡できなかったのは、体調不良で来れなくなったという連絡が結構遅くに来たのだろう。

幸い最初の研修ということで、お客さんの少ない日曜の昼から夕方にかけてのシフトに研修が入っている。これならいけるか?


「あの、レジの操作など軽く教えてもらえれば一人でもレジ出来る気がします。幸いお客さんの少ない時間帯みたいですし、わからないところは隣のレジに入っている方に聞けば大丈夫だと思うので…」


 普通ならだいぶきついと思うが、僕はここでの仕事には慣れているし、三年前なので分からないことなどがあるかもしれないが、それこそ聞けば解決するだろう。だいぶ無茶苦茶を言っている自信はあるが、一人来れなくなって人手が足りてないだろうから、この案は通る気がする。


「私としては助かるけど、本当に大丈夫?じゃあ一番お客さんが少ないレジに入ってもらって、隣のレジに入る人を…。うん、大丈夫かな。わからないことがあったら遠慮せずに隣のレジの松永さんに聞いてね」


 良かった。なぜここまで無茶を言ったかというと、最初の研修はたいてい土日に入れられるので次の研修は来週になってしまう可能性が高い。そうなると研修を終えるのがだいぶ後になってしまう。まあそれが嫌なだけなんだけどね。


「了解です。じゃあえっと、レジの説明だけお願いしてもいいですか?」


「うん、じゃあついてきて」


 僕は杉野さんについて、レジに向かった。

レジは駅側に三個、駅の逆側に二個ある。出入口が駅側と駅の逆側にあるのでこういう配置になっている。

駅側に3レジから5レジがあり、駅の逆側が1、2レジだ。

今回入るのは1レジだ。駅の逆側なので一番空くし、何か問題が起こっても、事務所が近いので対応がすぐ済む。レジにもともと入っていた人がいたけど、杉野さんが事情を説明してレジを移ってもらっている。とりあえず別のレジに行く前に挨拶だけはしておく。


「今日から入りました河野です。よろしくお願いします」


「三司です。よろしくお願いします。高校生一年生?」


 お客さんがレジに来る気配がないので三司さんが話しかけてくる。ちなみにこの三司さんは、前回の人生で僕が入った時にはもうバイトリーダーをやっていた人だ。先ほど言っていた仕事が早くて尊敬できる先輩の一人だ。


「はい、高校一年です。なのでバイトが初めてなので緊張しています」


 あははと笑いながら、言う。実際は慣れているので全く緊張はしていないのだが。


「はは、そりゃあそうだよね。というかそういう状況でいきなり一人でレジって大丈夫なの?」


「日曜だし大丈夫じゃないかなっていうことでこうなったんだよね」


 杉野さんが三司さんに言う。


「河野くんは大丈夫なの」


 僕が特に何も言わないから、杉野さんにそうするように言われたのかと疑ったのか三司さんが心配してくれる。


「大丈夫だと思います。というか僕から一人でも大丈夫って言っちゃったんで…」


「え?そうなの?じゃあまあ大丈夫なのかなぁ、とりあえず私は向こうのレジ行かなきゃだから行ってくるね」


「はい、ご心配ありがとうございました」


 心配してくれていたので、お礼を言っておく。


「じゃあレジの説明するね。メモは大丈夫?」


 そういわれてメモ帳をエプロンのポケットから取り出す。


「じゃあまずは…」


 僕がメモ帳を取り出したのを確認して、レジの説明を始めてくれた。




――――――――――――――――――




「これで大体の説明はしたけど、大丈夫そう?」


 時間にして七分ぐらいだろう。杉野さんがレジの使い方を説明してくれた。


「はい、大丈夫だと思います。もしわからなくても、松永さんに聞けば大丈夫ですよね」


 軽く笑いながら、そう言う。ここで無駄に話を長引かせてしまっては、レジを止める時間が長引いてしまうので杉野さんにも松永さんにも申し訳がない。あ、ちなみにメモは取るふりだけしていました。レジ自体が変わっていなかったからメモをする必要はないと思ったのだ。


「じゃあお願いね、私は向こうのレジにいるから、松永さんの方が忙しそうでわからないことがあったら向こうのレジまで来てね」


「はい、わかりました」


 日曜ということで、全員がレジに入っていて、事務作業は社員さんがすいているときにやっている。こういうところも僕が働いていた三年後と何も変わらない。

杉野さんが向こうのレジに行ったので、僕はレジを開ける。今はお客さんが来ていないので松永さんに挨拶をしておく。


「色々迷惑かけてしまうかもしれませんが、宜しくお願いします」


「大丈夫よ、というかこっちこそ初日から一人でレジやらせちゃってごめんなさいね」


 松永さんが逆に謝罪をしてくる。この人全く変わらないな。

松永さんは高校卒業後にここに就職した人でまだ21歳ぐらいだったはずだ。戻ってくる前の僕とほぼ同じ年なのに本当にしっかりしている人だと思う。というかここで働いている社員の人ってみんな若いよな。パートの人はだいぶ歳いってる人が多いが。


「いえいえ、むしろ僕の方から提案した話なので全然大丈夫ですよ」


「とは言っても今日は人手が足りなかったから助かったのは事実よ。ありがとうね」


「はい、ですが、本当に初めてなので迷惑かけてしまうかもしれませんが…」


「それは仕方ないわよ。わからないことあったらすぐに聞いてね」


「はい、助かります」


「あ、いらっしゃいませ」


 お客さんが来たので、会話を止めて松永さんが対応する。

そしてもう一人お客さんが来たので僕も対応をする。


「こちらのレジもどうぞご利用ください」


 大きく声を出してお客さんを僕のレジの方へ誘導する。

ここからはいつも通りの対応をする。前回のバイトからゆうても五年ほど経っているのに違和感なくいつも通りにできる。なぜなのかわからないが助かるな。


「ありがとうございました。またどうぞお越しくださいませ」


 特に問題も起きずに一人目のお客さんを送り出した。

少し野菜のパネルの位置が変わっていたのが違和感だったが、すぐに見つけられたので問題はなかった。


「河野くん、本当に初めて?」


 松永さんが少し戸惑った表情で話しかけてくる。

まあ初めてレジをする人がここまでしっかりやっていたら戸惑いもするか。


「はい、初めてですよ」


「はぁ~。なんか慣れてるから経験あるのかと思ったわよ…って河野くん高1だからありえないか」


「まあ杉野さんに説明もしてもらってたし、普通にレジをする分には問題ないですよ。わからないことが来たら無理ですけどね」


 実際は大体すべての対応ができるんだがそれを言う必要はないだろう。というか言ったら変に思われるだけだろう。


「もしかして河野くんって優秀な子…?」


「あ、いらっしゃいませ!」


 松永さんが僕の方を向いてしまっていたので、僕が客を呼び対応をする。

こうやってなんどっも会話途切れるのが嫌なんだよなぁ。まあ仕方ないことなんだが。


「河野くん高校どこなの?」


「友澄高校ですよ。向こうの方にある」


 高校の方向を指さしながら言う。


「あぁ、あそこね。結構頭いいところじゃないの…。通りでしっかりしてる子だと思った」


「そんなことないですよ、結構勉強してやっと入れたぐらいですから」


 実際友澄は神奈川県内では五本指に入るぐらいの高校だ。

なのでそこに入っているというだけでこう思われるのもわからないでもない。まあ実際はもっと上の高校でも入れたんだけどね…。


「河野くんの場合勉強以外も凄そうだけどね…。こんなにしっかりした高校生見たことないわよ…」


「そうですかね…」


 軽く会話をしながら、特に問題も起きずに今日のバイトの終わりの時間が来た。

最初の研修ということで時間は三時間だけだった。空いていたので特に疲れることもなく終わった。


「お疲れ様でした」


「お疲れ様、河野くん。色々聞かれて教える気満々だったのに、河野くん全部完璧だったからびっくりしちゃったわよ」


「ははは…。杉野さんが丁寧に教えてくれたからですね」


 笑いながら適当に答える。

ちなみに松永さんも今日はもう上がりらしい。大体閉店までいた気がしたが、まだこのころは夕方に上がることがあったんだな。


 タイムカードを押して更衣室に向かう。


「では、お疲れ様ですー」


「うん、お疲れさまです。これからよろしくね」


「はい、宜しくお願いします」


 松永さんに挨拶をして帰宅の準備をする。

夕方に帰るのは前の人生ではほとんどなかったので少し違和感がある。まあ初日だから仕方ないんだが。早くがっつり働きたいな。林さんも来週には研修始まるらしいけど林さんならそつなくこなすだろうな。


「買い物して帰るか…」


 僕は東栄ショップで買い物をして帰った。

買い物中帰り際の松永さんに会って、買い物をしているということで僕が一人暮らしをしているということを知られた。

特に隠してはいなかったが、僕の評価がまた上がってしまって、“この子は凄い”というレッテルを張られてしまった。





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