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もしも十年前に戻ったら  作者: 茶々
第1章 動き始める人生
16/28

#16初登校は職員玄関



 新しい生活にも慣れ始めた春の日。今日は高校の入学式だ。

林さんと付き合い始めてからは一週間とちょっと経った。家が近いのでちょくちょく会えるのが良い。


 昨日学校には一緒に行こうと林さんに誘われた。だが初日はちょっとごめん、と断った。

理由は一つ。新入生代表になっているからだ。入学式の日は早く登校しろと先生から言われている。入学式の時にどういう風にすればいいかの説明や、軽いリハーサルのようなものをやるらしい。

 昨日電話で林さんに一緒に登校することを誘われ、断った時に色々怪しまれたが、とくに深くは追及してこないでくれた。信用されているということでいいのだろうか。

 そんなこんなで僕は今一人で高校に向かっている。朝早いので同じ学校の生徒は見かけない。


「このあたり懐かしいな」


 この高校に行っていたわけではないが、この道は通ることが結構あった。

やはり何度通ってもまだ懐かしさが強い。

だが、高校に行ってしまえば未知だ。何もわからない空間は今回の人生で初めてだから少しばかり怖い。

けれども、今の自分ならどんなことでもなんとかなると思ってしまうから、なんだかんだで成長したなぁと思える。


「さてと」


 校門をくぐる。

この高校は結構きれいだ。文化祭などには来ていないので校舎内は詳しくわからないが、外装から分かるものもある。

とりあえず見物はいつでもできるので今は職員室に向かうことにする。


 まだ靴箱なども分からないので、職員玄関から入る。職員玄関など使うこともないので少し貴重な体験をしている感じがする。というか初登校が職員玄関か。

勝手に入るわけにもいかないのでインターホンを押す。


「はい」


 インターホンを押してすぐに女性の声が聞こえた。


「えっと、本日の入学式で新入生代表挨拶をする河野です」


「あ、河野くんね。聞いています。どうぞ」


 職員玄関のドアを開けて校舎内に入る。受験の時に一回入っただけの校舎なので違和感が凄い。本当に入っていいのかっていう気持ちになってしまう。


「河野くんね?」


 職員室に行こうと思ったところで、女性の先生に話しかけられる。

ショートボブの身長は僕と同じぐらいの女性だ。凄くきれいな人だなぁと思った。

さっき対応してくれた人とは別の声なので、さっきの人は受付の人で、この人は普通に先生なのだろう。


「えっと、はい河野です」


 何を言えばいいのかわからずに、変な感じになってしまう。こういう時は相手の自己紹介を待つのが一番いいと思っている。相手は僕のことを知っているわけだし。


「私は河野くんのクラスの担任の浅見です。よろしくね」


「あ、えっと今日から友澄高校に通う河野です。よろしくお願いします」


 浅見先生が自己紹介をしてくれたので、僕も自己紹介をした。

まさか担任の先生だったとは。いや、こういう時に対応するのは普通担任か。


「じゃあとりあえず職員室に来てもらっていい?あ、原稿はちゃんと持ってきたよね?」


「はい、大丈夫です」


 さすがに忘れない。もし忘れても内容暗記しているので問題なしだが。

浅見先生に案内されて職員室へ向かう。そこで入学式の時の流れを説明してもらうようだ。

 職員室に入り、浅見先生の席であろうところへ向かう。丸椅子を置き、先生と向かい合う形で座る。


「じゃあ入学式の時の流れを説明するわね。とは言っても難しいことはないから安心してね」


「はい」


「生徒会長の子が在校生代表挨拶をし終えた後に、司会の人が『新入生代表一年一組、河野颯太』っていうからそこで『はい』って言って前に出ればいいだけ。難しいことないでしょ?」


 おぅ…。いや確かに難しいことはないんだが少なからず緊張しているであろう生徒にこの説明の簡潔さは凄いな。まあこういうのはそれなりに慣れているし得意だから大丈夫だが。


「はい、えっとあいさつし終えた後は普通に席に戻ればいいですよね?」


「え、ええ、そうだけど、あの説明で納得するのね…」


「え、と。思うところはありましたが、実際それだけだと思うので大丈夫です」


 実際無駄に長く説明されるよりは助かる。僕的にはだが。


「なんというか噂通りの子ね…、あぁ、悪い意味じゃないのよ」


「なんか変な噂でもあるんですか…」


 新入生代表ということで、少なからず教師間で噂になっていてもおかしくないが、こう言われてしまうと少し気になる。


「推薦書に書かれていた内容とか面接の時の印象とかから色々噂になっててね。今年は凄い奴が入るぞって。河野くん成績もめちゃくちゃいいでしょう?」


 あー、そういうことか。

というか推薦書の内容とかって広まるもんなのか?まあ中学の成績とか内申はだいぶ良かったから軽く噂になるのもわからなくないが…。


「まあ成績は悪くはなかったですね。ですけどそんな噂になるほどの人間じゃないですよ…」


「まあそこらへんは今後わかってくる気がするからいいわ。とりあえず時間もないし一度体育館に行ってみて軽くリハーサルしましょ」


 もうそろそろほかの生徒たちが来てもおかしくない時間になってきているので、時間がないのは事実だろう。

というわけで、職員室から出て体育館に向かう。



「河野くんはなんでこの高校来たの?」


 道中、先生が話しかけてくる。

というか少し難しい質問だ。この高校に来た理由は前回の人生のことが大きく関わってきている。どういうのが正解なのだろう。

近かったからとかは通じない。一人暮らししている時点で矛盾してしまうので。そして成績的にはもっと上の高校に行ける成績だった。うーん。


「別に無理に答えなくてもいいわよ。ただ、河野くんの成績ならもっといいとこも狙えただろうなって思ってね」


「まあ、そうですね。中学の先生には名門校ばかり勧められてました。でも、ここが良かったんですよね。理由はちょっと言いずらいんですけど」


 無理に言わなくてもいいなら言う必要もないだろう。


「あ、もしかして、好きな子を追ってきたとか?」


「は?」


「あ、違ったか。そういう話たまに聞くしもしかしたらって思ったけど」


「あー…、そんな大それた理由じゃないですよ。ただこの町が好きってだけですね」


 会話をしている最中に思い付いた理由を言う。

実際、この町に住みたいからこの高校にしたので大きく間違ってはいない。


「へぇ、このあたりって特に何もないと思うけどねぇ」


「ははは…」


 実際に何もないから何も言えなくなる。住宅街って感じだからなこのあたりは。


「さて、体育館はここね。えっと一組だから、席はこのあたりね」


 先生がだいたいの席の場所を教えてくれる。

入学式の時にはそこに座って、呼ばれたら前に出るのか。


「じゃあ軽く流しでやってみるけど、大丈夫?」


「はい、お願いします」


 僕は椅子に座り、先生に呼ばれるのを待つ。



「新入生代表挨拶。一年一組河野颯太」


 先生が僕の名前を呼ぶ。本番では浅見先生ではない先生が呼ぶらしいが。


「はい」


 できるだけ大きい声で返事をする。

ゆっくりと立ち上がり、椅子と椅子の間の通路を歩き壇上に向かう。

本番ではこの席全てに人が座っていると思うと少し怖くなってしまう。だが、大丈夫だ。もう慣れてる。


 演台に立ち体育館を見渡す。誰もいない体育館はとても広く見える。

僕は一度深呼吸をして息を落ち着かせてから口を開き暗記している文章を読み始める。




――――――――――――――――――




「26年4月8日 新入生代表河野颯太」


 一礼して壇上から降りる。

そして来た道を戻り、座っていた席へ戻る。


「完璧じゃない。ていうか暗記してるの?」


「はい、こういう時は暗記していた方が楽なので」


 過去に何度かこういう挨拶をしたことがある。絶対に暗記していた方が楽というのはそこからの情報だ。


「はぁ、やっぱり噂通りの子ってことね。これなら何も問題なさそうね」


 なんとか合格点はもらえたようだ。安心安心。


「じゃあそろそろほかの生徒たちも玄関口に集まる頃だと思うから、行っていいわよ。といっても河野くんはもうクラス分かっちゃってるんだけどね」


「ははは、そうですね。でもまあ何も見ないで教室に向かうのは変なので玄関から行きますね」


「うん、そうしなさい」


 一度職員玄関から外に出て、生徒の使う正面玄関に向かう。

そこには同じ制服に身を包んだ生徒たちが集まっていた。この人たちみんなが同級生なのか。

もう少し人が減ってから行こうかなと思い、遠目から玄関を眺めていると。


「河野くんおはよ」


「あ、林さん。おはよう」


「一緒に行かないって言ってたから何かあるのかと思ってたけど、普通に今来たんだね」


「うん、ちょっとだけ寄るところがあっただけなんだよね」


 もちろん嘘だが、職員室に寄らなければいけないという点では間違っていないだろう。


「ふーん、まあいいけど、あ、そういえばクラス同じだったよ!一組!」


 明らかに疑わしい目線を向けてきていたが、それ以上にクラスが一緒だったことが嬉しかったのだろう。すぐに笑顔に戻る。


「よかった。せっかく同じ高校に入ったんだし同じクラスがいいもんね」


 正直同じクラスであることは予想できていた。

なんたってこの学校は一組から順に学力が高い人が入れられていくのだ。

僕が一組なら林さんも一組だろうという予想は簡単にできていた。


「これで学校でも一緒だね。やった」


 横で林さんがとても喜んでいるのでそんなことを言うのは無粋だろうけどね。


「じゃあ教室向かおうか」


「うん!」


 僕たちは少し人が減ってきた玄関を抜けて教室に向かった。





投稿ペースはとても不定期です。

次投稿はきっと一週間以内に行われます。


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ありがとうございます。

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