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もしも十年前に戻ったら  作者: 茶々
第1章 動き始める人生
15/28

#15閉じ込めなくてもいい言葉




『河野くん、明日暇?』


 林さんが引っ越してきた日の夜、林さんからメッセージが届いた。


『特に予定はないよ、どうかした?』


『このあたりで生活必需品買いたいと思ってて、河野くんが買い物したお店を案内してもらいたいなって思って』


『それは大丈夫だけど、せっかくだからもう少し別のところに買いに行かない?二駅先ぐらいに結構大きいお店あるから』


『あ、そうなんだ。じゃあ折角だし案内お願いしようかな?河野くん行ったことあるの?』


 行ったことはある。今回の人生ではないが。


『家探しに来た時に少し寄っていったんだ。女の子でも満足できる品揃えだったと思うから、結構いい買い物できると思うよ』


『いいね、じゃあ明日11時頃に新道駅に集合でいい?』


『了解、楽しみにしてるね』


『私も、河野くんとの買い物楽しみ』


『じゃあまた明日、おやすみ』


『うん、おやすみなさい』




――――――――――――――――――




「林さんお久しぶり」


 駅に着いたら、もう林さんはいた。

いつも思うけど、林さんは何分前行動をしているんだろうか。僕はいつも集合の10分前には着くようにしている、林さんはそれ以上に速早い。


「あ、河野くん!おはよう、試験の時ぶり?だよね。お久しぶり」


「そうだね、でもあの時とは違って二人ともこのあたりに住んでるんだよね」


「凄いよね、私なんてつい最近まで北海道だったのに今ではここに住んでるんだもん。なんかすごい感覚だよ」


 僕からしてもだいぶすごいと思う。15歳で初めての一人暮らしなのに北海道から神奈川に引っ越してくるなんてなかなかできないと思う。本当に凄い行動力だ。その動力になっているのが僕っていうのがめちゃくちゃ恥ずかしいが。


「でも、やっとだね。これからはいつでも会えるよ」


「ほんとに…。やっとここまで来れた…」


 林さんが感慨深そうにつぶやく。

だが、今はまだその時ではないと思っているので聞こえないふりをする。


「とりあえず行こうか」


「うん、そうだね。えっとどこの駅なの?」


「えっと、福圓方面に二駅行ったとこの北城駅ってとこだよ」


「了解、じゃあ行こっか」


 二人一緒に改札を通り、ホームへ向かう。ちょうど電車が来たので、電車に乗る。平日の昼なので、そこまで混んではいない。ちらほら学生っぽいのはいるが、社会人が少ない分やはり空いている。

ちなみにこの路線の朝と夜はひどい。前回は高校、大学と朝の電車に乗っていた。体を押し込まないと乗れない電車というのは本当にどういうことなのだろうか。意味が分からない。それなのに皆は電車に乗らなければならない、何度両数を増やしてほしいと思ったか…。


「河野くんってこのあたり何度か来たことあったの?」


「そんなにきてはいないかな。高校に行かなきゃいけない時と引っ越し云々の時ぐらいかな」


「あ、そうなんだ。なんか慣れてる感じしたからよく来たことがあるのかと思ったよ」


 林さんが間違っていないことを言う。実際前回の人生でここに住んでいたのだから当然なのだ。


「まあでも、林さんよりは多く来てるだろうから林さんから見たら慣れてるって思うのかもね」


「そうなのかな?」


「でも、北城駅は一回ぐらいしか行ったことないからお互いに初めて行く土地って感じになっちゃうかな」


「それも楽しそうだね。今後行くことが増えるだろうから色々散策しておこうよ」


「そうだね、この辺で遊べる場所って言ったら北城駅っぽいし」


 前回の人生でも遊ぶなら北城駅だった。

ネットで調べても北城駅が遊び場としては一番有力だという風に書いている。


「北海道に比べると、どこでも都会に見えるからどこにいても楽しいけどね」


「それは最初だけだよ。数カ月も経てば北海道に帰ってくつろぎたいなぁってなってくるよ」


「河野くんもそうなってたの?」


「そうだね、ずっとこっちに住もうとは思ってたけど、時々北海道帰るとやっぱりいいなぁとはなっていたね」


「私も時々北海道に帰省するだろうから、その時はそう感じるのかな」


「そうなると思うよ」


 僕は、毎年二回ある帰省がとても好きだった。

まず北海道は空気がいいし、気候が過ごしやすい気候だ。冬に帰ると寒くて死にそうにはなるが、それでも僕は雪が好きなので心休まる期間ではあった。

きっと林さんも同じように感じることだろう。


 気づけば北城駅についていた。

林さんと一緒に駅の外に出る。今回の人生で来るのは初めてだ。林さんには一回来たことあると言っていたがそれは嘘だったりする。一回も来たことないのに土地を理解していたらおかしいしね。


「わぁ、ここが北城駅か。都会だなぁ…」


「確かにここでも札幌の中心部くらいの都会だもんね」


「これぐらいの街がどこにでもあるって本当に関東に来ちゃったんだなぁ」


「はは、今更だよ。もう引っ越してきてるんだから」


「でもやっぱり信じられないよ、私が引っ越したなんて…」


「まあ、すぐに慣れるよ。困ったことあったら助けるしさ」


「ふふ、ありがと、頼りにしてる」


 どう考えても独り暮らしでは僕が先輩なので、きっと助けられる場面は多いだろう。

僕が助けられる場面もあるかもしれないが…。無いようにしたい。


 ここ北城駅にはシカクイがある。

シカクイは大型ショッピングモールだ。10階まであり、ご飯を食べる場所もあったり大抵のことならここで済む。

こういうショッピングモールは本当に便利だよな。買い物も終わらせられるしご飯も食べられる。最高だ。

 北海道にも一応こういう店はあるが、少し遠かったり行くのが大変だ。

二駅行くだけであるのは都会の利点だろう。

 この町にはほかにもゲームセンターや、ボウリング、カラオケなど遊ぶ施設もあらかたそろっている。

林さんと遊ぶならここに来ることになるのは間違いないだろう。


「とりあえず色々見て回る?」


「そうだね、回って買い物する店の目星つけてから一旦ご飯食べとてそのあと買い物しようか」


「いいね、とりあえず必要なものってどういうもの?」


「うーん、お風呂用品と洗面用品回りかな服とかは大体あるから、必要になるのはそのぐらいかな?」


「了解、じゃあ三階かな」




――――――――――――――――――




「いやー買ったね」


「ははは、ついつい買っちゃったよ」


 林さんは、明らかに今日買うべきではないものまで買ってしまった。

荷物を一人で持てなくなり、僕が持たなければ持ち帰れないぐらいの量を買っていた。

ちなみに何を買ったのかというと服だ。

必要なものを買い、時間が余ったということで林さんは服を見たいと言ってきた。

断る理由もないので、一緒に服を身に行くことになったが、女子の買い物をなめていた。

いろんな服を見ては、僕に意見を聞いてくる。正直僕はセンスがないので聞かれても困るんだが。

林さんは僕が似合うって言ったものはすぐに買うことに決めていた。なんというかむず痒い。ちなみに僕も多少服を買った。

折角なので林さんに選んでもらったのだ。ファッションのことはわからないので、とても助かった。


「そろそろ帰ろうか」


 時刻はまだ16時だが、荷物が多いのでこのままどこかで遊ぼうとは思えない。


「そうだね、この荷物だもんね」


 僕たちは、帰宅するために電車に乗り新道駅へと帰った。


「はぁー楽しかったね、今日は買い物付き合ってくれてありがと」


「こちらこそ楽しかったよ。いい服も買えたしね」


「じゃあまた今度、かな」


「あのさ」


「ん?どうしたの」


 まだ一緒に居たいがためについ、引き留めようとしてしまった。特に話すことも何もないのに。


「え、っと、家まで送ってくよ。荷物ひとりじゃ持ちきれないでしょ?」


「あ、ありがと助かるよ」


 

 あぁ、だめだな。好きだ。



 林さんのマンションの前に着いた。

方向は駅からみて北側だった。僕の家は南側なので逆ということになる。

まあ距離的には20分ぐらいで着くので遠いわけではないけどね。  


「送ってくれてありがと、ほんと助かったよ」


「そんな距離でもないから大丈夫だよ」


「そう言ってもらえると助かるよ。えっとそれじゃあ、また」


「林さん、荷物置いた後、少し話良いかな?」


「え…。…うん分かった。じゃあ荷物置いてくるね」


「ありがと」


 林さんが荷物置きにマンションの中へと入っていく。

勢いで言ってしまった。もうこれは後戻りできない。林さんに告げよう。閉じ込め続けていた気持ちを。




 林さんがマンションから出てくる。


「お待たせ、じゃあえっと…」


「ここじゃあれだし、向こうの公園に言って話すのでいい?」


 さすがにマンションの前で話すのは恥ずかしい。内容が内容なので。


「うん、じゃあ行こうか」


 僕と林さんは並んで近くの公園に向かった。公園に向かう最中僕と林さんは会話をすることはなかった。

だが、何も話さないその時間は気まずいということはなく、お互いにこの後に話すことを理解した上での沈黙だった。


 公園につきベンチに腰掛ける。

この公園は、遊具などがないので子供が遊んでいるということはなく、夕方を過ぎようとしている今の時間は無人だった。

だから、ここにしたんだが。


「やっとここまできたね」


 林さんが言う。


「そうだね。林さんが頑張ってくれたおかげだよ」


 林さんが、こんな僕をずっと好きでいてくれて、ここまで来ることができた。


「あの時のお願い覚えてる?」


「うん、もちろん覚えてるよ。だけどごめん。林さんのお願いは聞くことができない」


「え…」


「ごめんね。でもやっぱり僕から言いたくなったんだ」


「……」


 林さんが何も言わないで待ってくれる。

僕は何年もの間閉じ込め続けていた言葉を口に出す覚悟を決める。

林さんも言いたいのかもしれない。だけどここは僕から言わせてほしいと思った。わがままかもしれないが、これはもう譲れない。


「中学生の時、林さんに告白されて嬉しかった。だけどあの時は僕自身、人を好きになることができないと思っていた。だけど、そのあと林さんと再会して、ずっと真っすぐな気持ちを持っている林さんを見て、とても魅力的に見えた。そして気づいたんだ、僕の気持ちに。林さんがずっと好きでいてくれたから。林さんのお陰で、人を好きになるということができたんだよ」


 僕は一呼吸おいてもう一度口を開く。


「林さんのことが好きです。僕と付き合ってください」


 ついに僕は告白をした。前回の人生を含めても初めての事。人に好意を伝える行為。


「河野くんずるいよ、自分だけ言っちゃうなんて」


 林さんは瞳に涙をためている。


「…私も河野くんのことが好きです。こちらこそよろしくお願いします」


 瞳にためていた涙を零しながら、林さんも気持ちを口にした。


「やっと、だね」


「うん、やっと伝えられた…。どうしよう、私いま凄い幸せだよ…」


「僕もだよ…。本当に、長かった。やっと僕たち恋人同士になれたんだね」


「うん…うん、そうだね…。河野くん」


「なに…?」


「ありがと、大好き」


 そういって林さんはベンチに座りながら僕の肩に頭を預けてきた。


「こっちこそ、ありがとう…。ここまで来てくれて…。僕も大好きだよ」


 好きという言葉は凄い。

言っても言われても幸せな気持ちに溢れてくる。

これは林さんとだからなのだろう。

 

 こうして僕たちは恋人同士になることができた。





ついに次回から高校生になります。やっと物語が大きく動き出します。


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あいがとうございます。

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