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「んで、その女とはわかれたんか?」
生卵がはいった取り皿にすき焼き肉をいれて悪友の竹田が言う。竹田とは蒲田の居酒屋で飲んだ後、風俗遊びを共にする仲だ。アキラは竹田の問いかけに戸惑いを覚えた。
「……。別れてはないと思う。けど距離を置いてる」
ぐらぐらと煮える鍋の火を調整しながらアキラは言う。
「なんだそりゃ?浮気がバレたら普通わかれるべ」
「まぁ、普通はな。うちらは普通じゃないから」
「んで、別れてはないと思うってなに?」
「いや、オレは別れたつもりなんだけど。相手の方が嫌だってつっぱねるんよ。だから、せめて考える時間が欲しいってお願いしてさ。それで距離を置いてる」
「なんか複雑だな。オレそういうの面倒くさくてゴメンだわ」
「まっ、今日はとことん飲もう!」
アキラはお酒に強くない体質だが、せめてもの景気つけの言葉を口にした。買ってきたばかりの冷蔵庫からビールを取り出し、竹田へ手渡す。自分といえばアルコール度数3パーセントしかないほろ酔いのパッションパンチ味を氷で薄めて飲んでいる。
「そういえばよ」
竹田はうつむき加減になり神妙な面持ちで言う。
「なんだ?」
アキラはイカソーメンをむしゃむしゃかみながら適当に受け答えする。
「いつ女紹介してくれるんだ?」
竹田はアキラを睨みつける様に言った。
「はぁ?」
アキラは言ったあと半笑いを浮かべた。コイツいよいよ頭までおかしくなったか。
竹田はなかば逆ギレ気味でビールをグビグビと飲んだ。完全に勢いついたようだ。
「アキラの場合、職場も客も女だらけだろ?一人くらいこっちよこせよ!」
「よこせよっても、犬猫じゃあるまいし………」
「最近はいい女いねぇのか?」
「あ!そういえばいたな」
「まじか?芸能人でいうとどんな感じだ?」
「若い頃の柴咲コウにそっくりなんだけど、角度によっては柴崎コウ本人よりももっと小顔でさ。んで、ショートヘアで若くてめっちゃ可愛かった」
「おっぱいは?」
「たぶんCカップくらい」
「一見の客か?」
「いや、友達の紹介で占った子。昨日鑑定させてもらったんよ」
「柴咲コウよりも仲間由紀恵の方がタイプだな」
「残念だったな。俺らの由紀恵ちゃんは結婚しちまったし、ガッキーだってなぁ?」
「あーくそ!なんか世の中のイケメンにムカついてきた。今日は朝まで飲むぞ!」
「明日仕事だろ?ほどほどにしとけよ」
竹田はビールを一気に飲み干した。マジカルカラー青ゆえ明るくさっぱりとした性質を持っている。
(やれやれまたはじまったか)
アキラは諦めムードを漂わせ、冷蔵庫から追加のビールを取り出した。
「そういえば。明日、バイト来るか?」
竹田はこれでもいちおう建築会社の社長の肩書を持っている。根無し草みたいに生きるアキラを心配してたまに仕事を与えることにしている。
「は?こんなに飲んでるのに無理に決まってるだろ」
アキラは拒絶した。竹田の仕事は大抵めんどくさい作業だからだ。さほど給料が変わらないならすぐにでもヤラせててくれそうな可愛いメンヘラ女が多めの倉庫内軽作業をした方がいいに決まってる。
「いいから来いって。ただぼーっとしてるだけでいいから。給料も13Kやるよ」
「一万三千円か……。悪いけど定時には帰るぞ!」
2時間ほどフィリピンパブで飲んだあとにつけ麺エンペラーのタンメンとチャーハンが食える。男心くすぐる絶妙な値段設定だ。元・蒲田中学帰宅部の二人が考えることと言えば、酒、たばこ、女、ギャンブル、バイクにくるま。基本的にはそれしか頭にない。
「んじゃ、明日の6時に迎えに来るから。いつもの公園で待ち合わせな」
「はぁ。作業着なんてどこにしまったかな……」
「動きやすい恰好ならばなんでもいいぞ。ただし、長袖な」
「了解。もう帰るのか?」
「だな。あ!」
竹田は何かを思い出したかのようにポケットから袋を取り出した。
「これ。誕生日プレゼントだ」
「まさか。女のパンツとかじゃないよな」
「馬鹿か。そんな上等なもんやるかよ」
アキラはおそるおそるビニール袋の中に手を突っ込んだ。ざらざらとした手触りが伝わってくる。どこかで手にしたことがあるような手触りだった。
「なんだよこれ!チャイニーズエステの紙パンツじゃねーかよ」
「彼女と一発やるときに必要だべ?」
「彼女じゃねーし、早く帰れよ」
「ガハハ!」
竹田は豪快に笑いながら帰っていった。




