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 アキラと祈織は沖縄へとやってきた。

9月も中旬だというのに、まだ夏真っ盛りといった気候だ。東京だともうこの時間は暗くなっているというのに、太陽の光が眩しい。アキラは久しぶりに来たなと感慨深い思いでいた。去年の今頃は涼子と旅を共にした。出逢ってまだ数時間しか経っていないというのに、ベッドに誘われたこと。詩音との純愛、涼子との情事、その全ての記憶がこの琉球王国に宿っている。国際通りのあのパワーストーンショップは涼子が国産の天然の翡翠を買った場所だ。

 祈織ははじめての沖縄ということなので、定番の国際通りに連れてきたのだ。約1.6キロに及ぶメインストリートには、民芸店、パワーストーン屋、ステーキハウス、公設市場、ドン・キホーテなどが軒を連ねる。一歩でも小道に入ってしまうと、昭和レトロなおもちゃ屋やお土産屋などがひしめき合っている。どれも同じようなものを売っているのはご愛敬だろう。

 どこからか三線の音が聴こえてくる。心に優しく響き渡るようなその音色。ドミファソシドの琉球音階から放たれる旋律。人々の心は踊る。商売人たちはそれに便乗して、声をかけてくる。琉球ガラスの美しいブレスレットに魅了されてしまう。

「アキラさん、沖縄って日本じゃないみたいですね!」

 興奮気味に祈織が言う。

「ここは江戸時代まで琉球王国という独立した国家だったからね」

「そうか。高校の時に習いました」

「夕飯前だけど、お菓子かアイスでも食べようか?」

「いいですね!あ、あのアイス屋さん有名ですよね」

 祈織が指さした方向にアイスクリーム屋があった。ブルーシールは沖縄の米軍基地が発祥の地である。

「最近では横浜にもあるよね」

「ワールドポーターズにあるみたいですね」

「さすが横浜は僕の第2の故郷だよ」

 懐かし気にアキラが言う。

「ちょっと一休みしていきませんか?」

「OK!」

 オレンジとブルーの看板の下、たくさんのアイスの見本が置かれている。期間限定のトロピカルヨーグルトが美味しそうだが、なぜかいつも紅芋をオーダーしてしまう。

「わたし美らいちごミルクにします!」 

 興奮気味に言う祈織の横顔をみて、修学旅行にでも来た気分になる。店員からカップを渡されるとき、祈織は「うわぁ~」と言って、その美しさに酔いしれていた。

 店内が混んでいたため、外のベンチ腰を掛けてアイスを食べる。祈織がアイスをスプーンですくって口へと運ぶ。言葉にならないといった様子だ。

「祈織ちゃんはどうして看護師になろうと思ったの?」

「おばあちゃんが病気で亡くなってるんです。生前、おばあちゃんの看病をしているうちに、人助けができるお仕事に就きたいと思うようになりました。まだ中学生くらいでしたから解らなかったけれど、進路を決まるときに友達から看護師が向いてると言われて、そのまま今に至るって感じです」

「そうか。おばあちゃんっ子だったんだね」

「はい。おばあちゃんは小さい頃、ライトのことも可愛がってましたよ。彼は小さいころ野球少年で、よく多摩川で素振りをしていていました。その傍で私はおばぁちゃんとい一緒にバトミントンをやってましたね」

「ライト君は占術を通してもイケメンなんだけどね。祈織ちゃん一筋で生きてきたんだね」

「困ります。私、そんなに純潔じゃありませんから」

「まぁ、生きてれば出会い別れあるからね」

 詩音とは違ってヴァージンということではなさそうだ。それが普通なのだし健全なのだが、なぜか寂しい気持ちにもなった。

「詩音さんはアキラさんにヴァージンを捧げたのですよね?」

 祈織のセリフにアキラは言葉に詰まる。「そうだね」と告げ空を仰ぐ。

「失礼なこと聞いちゃってすみません。私も詩音さんみたいに運命の人と結ばれたかったです」

「まぁ、僕は意外と遊び人だから気にしないで」

「アキラさんは遊び人なんかじゃありませんよ。ただ優しいだけです」

「優しい?僕が?」

「ちょっとだけ雰囲気に流されやすいだけです」

 そう言って祈織はくすくすと笑って残りのアイスを平らげた。

国際通りは街灯の明かりが付いて少しだけ涼しい風が吹いていた。風でヤシの木が揺れれば、二日月がうっすらと見え隠れしている。ここは恋人たちの永遠の憧れ、琉球王国の歴史あるストリート。外国人たちがビンのコカ・コーラを飲みながら歩いていく。

「沖縄ってパワーストーン屋さん多いですね」

「そうだね。本物のパワーストーンが欲しかったら、スリランカか沖縄かって言われてる。沖縄は聖地もおおいからね。」

「おすすめのパワーストーンとかってありますか?」

「予算にもよるけど、だいたい1万円から3万円くらい予算組んでもらえれば、かなり素敵でパワーあるブレスが買えるよ」

「じゃあ10万円出します」

 にっこりとして祈織が言う。

「え?大丈夫?」心配そうにアキラが尋ねる。

「はい。全く問題ないです」

「じゃあ、特別なお店を紹介するよ」

「やったー!楽しみです」

喜々として祈織は言った。


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