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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第99話 第一育成区画への鍵

第二育成区画が発見されてから三日が経過した。


忘れられた洞窟は目に見えて変化していた。


育成補正。


その効果は想像以上だったのである。


訓練場では鋼影狼が鉄牙兵達を率いていた。


以前より速い。


以前より強い。


そして何より動きに無駄がない。


森護兵将との模擬戦以降、鋼影狼はさらに訓練へ打ち込むようになっていた。


「本当に頑張っていますね」


リリスが映像を見ながら呟く。


「幹部候補だからな」


アルベルトも頷いた。


派手な異常成功個体ではない。


英雄種でもない。


だが鋼影狼は地道に強くなっている。


最近では鉄牙兵達からの信頼も厚く、部隊長としての風格すら出始めていた。


一方で森護兵将も負けていない。


軍団長としての能力を磨き続け、部隊運用は日に日に洗練されている。


岩牙守護将は相変わらずだった。


毎日戦う。


とにかく戦う。


戦闘こそ鍛錬という生き方らしい。


「元気ですね」


「元気だな」


忘れられた洞窟の主力達は順調に成長していた。


そして現在、最も育成施設の恩恵を受けているのはナイトレイブンウルフだった。


黒影樹の下。


夜属性魔力が濃い場所で静かに眠っている。


その頭上に通知が浮かんだ。



ナイトレイブンウルフ


進化条件達成率


71%



73%



「また上がりました!」


リリスが嬉しそうに声を上げる。


進化まであと少し。


伝説級候補と評価された個体だけに期待は大きかった。


そしてその近くには、もう一匹の有名人がいた。


ぷにである。


「ぷに!」


元気だった。


黒影樹の周囲を転がり回り、時々夜宝守の後ろを付いて歩く。


完全に自由だった。


夜宝守も慣れたもので、特に気にしていない。


最近では二匹で行動することも増えていた。


「仲良くなりましたね」


「そうだな」


その時だった。


夜宝守が突然走り出した。


何かを見付けたらしい。


ぷにも後を追う。


管理室の映像には、育成区画の奥へ向かう二匹の姿が映っていた。


「また宝探しですかね」


リリスが苦笑する。


夜宝守は定期的に何かを見付けてくる。


今や忘れられた洞窟一の探索家だった。


しかし十分後。


育成区画の奥から大きな鳴き声が響いた。


「グルルルル!」


「何かありました!」


リリスが立ち上がる。


アルベルト達は急いで現場へ向かった。


そこにいたのは夜宝守だった。


誇らしげに胸を張っている。


そしてその横には。


壁に半分埋まったぷにがいた。


「何してるんですか」


リリスが真顔になる。


「ぷに……」


どうやら勢いよく転がった結果、壁に突っ込んだらしい。


いつも通りだった。


だが今回は違った。


壁が割れていたのである。


崩れた石壁の奥に小さな空洞が見える。


アルベルトは慎重に瓦礫を取り除いた。


中から現れたのは金属製の箱だった。


保存状態は驚くほど良い。


箱の表面には文字が刻まれている。



第一育成区画管理鍵



全員が固まった。


「本物ですか?」


リリスが慌てて確認する。


記録妖精の能力が反応する。


数秒後。


リリスは大きく頷いた。


「間違いありません。本物です」


管理室がざわついた。


第二育成区画の発見だけでも大事件だった。


その直後に第一育成区画への鍵まで見付かるとは思わなかった。


アルベルトは箱を開く。


中には古い銀色の鍵が入っていた。


その瞬間、リリスの能力が反応する。


断片的な記録が流れ込む。


白衣の研究者。


古い研究室。


そして一つの声。


『第一育成区画は成功だった』


映像が揺れる。


次の言葉が続く。


『だが危険すぎる』


『だから封印する』


そこで映像は終わった。


リリスは静かに息を吐く。


「危険だそうです」


「成功したのにか」


「そうみたいです」


成功。


だが危険。


研究施設らしい話だった。


アルベルトは鍵を見つめる。


三十年前の研究者が残した施設。


忘れられた洞窟の本当の姿。


その核心に近付いている気がした。


「行きますよね?」


リリスが聞く。


「行く」


即答だった。


予想通りだった。


夜宝守は得意げに尻尾を振る。


ぷには壁から引き抜かれた。


本人は何が起きたのか分かっていない。


「ぷに?」


首を傾げる姿にリリスは思わず笑った。


「今回の功労者ですね」


「そうだな」


夜宝守が見付けた。


ぷにが壁を壊した。


結果として第一育成区画への鍵が発見された。


偶然なのか。


幸運なのか。


もう誰にも分からない。


ただ一つだけ確かなことがある。


忘れられた洞窟はまた新しい秘密へ辿り着いた。


そしてその先には、三十年前の研究者が隠した本当の遺産が待っているのだった。

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