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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第98話 研究記録No.2

第二育成区画。


三十年以上眠っていた施設が目覚めた。


魔法灯が灯る。


育成槽が稼働する。


水路には透明な水が流れ始めていた。


まるで長い眠りから目を覚ましたかのようだった。


だが。


今この場で最も注目されているのは施設ではない。


中央に立つ石碑。


研究記録No.2。


それだった。


「見ますか」


リリスが聞く。


「見る」


アルベルトは即答した。


迷う理由がない。


ここまで来たのだ。


見ない方がおかしい。


リリスが石碑へ近付く。


記録妖精の力が反応する。


金色の光。


石碑の文字が浮かび上がる。


そして。


映像が始まった。


 


最初に見えたのは研究室だった。


大量の資料。


魔法陣。


配合装置。


そして。


一人の男。


白衣姿。


三十年以上前の研究者。


顔はぼやけている。


だが以前より鮮明だった。


『研究記録No.2』


男が話し始める。


『育成施設の試験運用は順調』


『第一世代の成果も確認』


『しかし問題がある』


管理室が静まり返る。


誰も喋らない。


『配合だけでは限界が来る』


アルベルトの目が細くなる。


『優秀な個体を作れても育たない』


『進化しない』


『環境適応しない』


『だから育成施設が必要だった』


映像が切り替わる。


若い魔物達。


育成区画。


特殊環境。


訓練設備。


様々な映像が流れる。


『配合は始まりでしかない』


『完成ではない』


沈黙。


アルベルトが少しだけ笑う。


リリスはそれに気付いた。


「嬉しそうですね」


「面白い」


やはりその感想だった。


 


映像は続く。


『我々は新しい理論へ到達した』


『配合』


『育成』


『進化』


『環境』


『四つを組み合わせる』


そこで映像が止まる。


一瞬だけ。


図面が映った。


巨大なダンジョン。


今の忘れられた洞窟より遥かに大きい。


複数階層。


複数区画。


育成施設。


研究施設。


実験施設。


そして。


最深部。


そこだけ赤く印が付いていた。


『最終研究区画』


映像終了。


光が消える。


静寂。


誰もすぐには喋れなかった。


「……凄いですね」


最初に口を開いたのはリリスだった。


想像以上だった。


忘れられた洞窟は弱小ダンジョンではない。


元々は研究施設。


しかもかなり大規模な。


「まだ先がありますね」


「ああ」


アルベルトは図面を見ていた。


第二育成区画。


つまり。


まだ第一がある。


第三もある。


さらに。


最終研究区画。


気にならないはずがない。


 


その時だった。


新しい通知。



第二育成区画効果


適用開始



全配下


成長補正付与



管理室がざわつく。


アダプトロードが即座に確認する。


数秒後。


珍しく驚いた顔を見せた。


「大きい」


「どれくらいです?」


「想定以上」


それだけで十分だった。


軍師がそう言うなら本当に大きい。


 


訓練場。


鋼影狼が突然立ち止まる。


身体が光る。


周囲がざわつく。


「まさか」


リリスが立ち上がる。


通知。



鋼影狼


育成補正適用



成長率上昇



幹部昇格試練適性向上



鋼影狼が驚いている。


本人も理解していない。


だが。


確実に強くなっていた。


 


さらに。


黒影樹の下。


ナイトレイブンウルフ。


こちらにも変化。


通知。



ナイトレイブンウルフ


進化条件達成率


66%



71%



「早い!」


リリスが叫ぶ。


一気に五%。


異常な速度だった。


黒影樹。


育成施設。


夜属性環境。


全部噛み合っている。


 


そして。


ぷに。


当然いた。


何故か育成槽の上で転がっている。


「ぷに!」


元気だった。


非常に。


 


その時。


育成槽の一つが光る。


ぷにが落ちる。


ぽちゃん。


沈黙。


「またですか」


リリスが頭を抱える。


 


数秒後。


通知。



プニシャドウ


進化条件達成率


78%



83%



管理室が静まり返る。


「何で?」


リリスが本気で困惑した。


誰も説明できない。


本人すら説明できない。


 


アダプトロードだけが頷く。


「幸運」


万能理論だった。


もはや反論できない。


 


その日の夜。


アルベルトは第二育成区画の資料を整理していた。


育成施設。


成長補正。


研究記録。


どれも価値が高い。


だが。


その中で一つだけ。


気になる記述があった。


小さく。


本当に小さく書かれていた。



第三研究資料


保管場所


第一育成区画



沈黙。


 


第二育成区画の次は第一育成区画。


順番がおかしい。


普通なら逆だ。


だが。


忘れられた洞窟ならあり得る。


三十年前の研究者が何かを隠したのかもしれない。


 


アルベルトは静かに立ち上がった。


リリスが嫌な予感を覚える。


「まさか」


「探すか」


「やっぱりですか」


 


忘れられた洞窟の探索はまだ終わらない。


むしろ。


ここからが本番だった。


研究者が残した本当の遺産へ。


アルベルト達はさらに近付こうとしていた。

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