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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第94話 幸運の前兆

幹部昇格試練。


その新機能が解放されてから一日。


忘れられた洞窟は妙な熱気に包まれていた。


原因は単純。


対象者達が本気になっているからである。


訓練場。


森護兵将が鉄牙兵達を率いている。


以前より指示が細かい。


部隊の動きも洗練されている。


軍団長としての成長が目に見えて分かった。


一方。


岩牙守護将。


こちらはひたすら戦っていた。


重岩熊兵。


鉄牙兵。


鋼影狼。


片っ端から相手をしている。


完全に脳筋だった。


しかし強い。


異常なほど強い。


「方向性が分かりやすいですね」


リリスが呟く。


「そうだな」


アルベルトも頷く。


森護兵将は統率型。


岩牙守護将は武闘派。


既に差別化されていた。


そして。


もう一人。


いや。


もう一匹。


鋼影狼。


訓練場の端で黙々と走っていた。


誰よりも地味。


誰よりも真面目。


そして。


誰よりも訓練時間が長い。


「頑張りますね」


「昔からだ」


アルベルトは知っている。


鋼影狼は派手な才能で成長した訳ではない。


毎日積み重ねた。


戦った。


走った。


生き残った。


その結果が今だった。


その時。


アダプトロードが現れる。


珍しく資料を持っていた。


「主」


「なんだ」


「結果」


紙が渡される。


昇格試練適性評価。


アルベルトが開く。


まず森護兵将。



昇格適性


A



高い。


予想通りだった。


次。


岩牙守護将。



昇格適性


A



こちらも高い。


そして。


鋼影狼。



昇格適性


S



沈黙。


リリスが固まる。


二度見する。


三度見する。


間違いない。


Sだった。


「え?」


思わず声が出た。


「高いな」


アルベルトも少し驚く。


アダプトロードが頷く。


「経験値」


なるほど。


戦闘回数。


生存回数。


実績。


積み重ね。


全てが評価された結果だった。


「これは筆頭候補ですね」


「ああ」


鋼影狼が幹部へ最も近い。


そういう評価だった。


当の本人は。


まだ走っている。


全く気付いていない。


実にらしかった。


その頃。


黒影樹の周辺。


夜宝守が巡回していた。


いつものことだった。


黒影果確認。


樹木確認。


ナイトレイブンウルフ確認。


異常なし。


満足。


仕事熱心である。


そして。


その近く。


ぷにがいた。


「ぷにー」


平和だった。


非常に。


黒影樹の根元で転がっている。


ぷに。


転がる。


また転がる。


さらに転がる。


何をしているのか誰にも分からない。


「暇そうですね」


リリスが苦笑する。


その時だった。


ぽよん。


ぷにが跳ねる。


黒影樹の根元へ頭突き。


ごつん。


小さな音。


次の瞬間。


通知が現れた。



プニシャドウ


進化条件達成率


78%



沈黙。


管理室が静まり返る。


「上がってますね」


「ああ」


しかも。


かなり高い。


リリスが驚く。


「もうそんなにですか」


六十台だったはず。


気付けば七十八。


かなり近い。


「何をしたんですかね」


「転んだな」


アルベルトが答える。


正確だった。


実際転んだだけだった。


ぷに本人も分かっていない。


「ぷに?」


首を傾げている。


本人が一番理解していなかった。


その時。


リリスがふと思い出す。


「そういえば」


「ん?」


「この子、いつも変なタイミングで成長してません?」


沈黙。


全員がぷにを見る。


ぷにも見返す。


「ぷに!」


元気だった。


理由は不明だった。


だが。


否定できない。


大成功。


異常成功。


幸運発動。


進化率上昇。


何故か毎回近くにいる。


偶然なのか。


違うのか。


誰にも分からない。


ただ一つ。


アダプトロードだけは真顔だった。


「幸運」


それで全部説明しようとしていた。


そして。


その日の夜。


アルベルトは一人で配合画面を見ていた。


黒霧狼王。


鋼影狼。


成功率八十二%。


まだ残っている。


魅力的だった。


非常に。


その時。


新しい通知が現れる。



特殊条件検出



第三因子候補確認



アルベルトの目が細くなる。


見たことがある表示だった。


夜宝守。


異常成功。


あの時と同じ。


「またか」


小さく呟く。


画面の先には。


見たことのない配合候補が表示され始めていた。


忘れられた洞窟の次の騒動は、思ったより早くやって来そうだった。

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