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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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93/223

第93話 幹部昇格への道

「駄目です」


リリスはもう一度言った。


「まだ何も言ってない」


「言わなくても分かります」


アルベルトは配合画面を見ている。


鋼影狼。


黒霧狼王。


成功率八十二%。


上位種。


魅力的だった。


非常に。


だが。


今回は少し事情が違った。


アダプトロードが静かに口を開く。


「反対」


珍しい。


配合反対だった。


アルベルトも視線を向ける。


「理由は?」


「鋼影狼」


アダプトロードは訓練場の映像を表示する。


そこには鋼影狼がいた。


鉄牙兵を率いている。


指示を出している。


前線を駆けている。


そして。


部隊がきちんと動いている。


「幹部候補」


「ああ」


「今失う」


確かにその通りだった。


成功率八十二%。


高い。


だが。


十八%は失敗する。


幹部候補を賭けるには重い数字だった。


「珍しいですね」


リリスが呟く。


「何がだ」


「アダプトさんが配合反対するの」


確かにそうだった。


普段なら効率を優先する。


しかし今回は違う。


軍師として見ている。


現在の戦力。


未来の戦力。


その両方を。


「まず育成」


アダプトロードが言う。


「昇格確認」


「なるほど」


アルベルトも納得する。


鋼影狼はまだ伸びる。


その可能性がある。


ならば。


一度確認した方が良い。


「本人は?」


リリスが聞いた。


その瞬間。


鋼影狼が呼ばれる。


数分後。


管理室へ入ってきた。


堂々としていた。


以前より明らかに風格がある。


「鋼影狼」


アルベルトが呼ぶ。


鋼影狼が座る。


そして。


配合画面を見る。


成功率八十二%。


上位種。


理解したらしい。


「グル」


落ち着いていた。


意外だった。


もっと反応すると思っていた。


「どう思う?」


鋼影狼は少し考える。


そして。


森護兵将を見る。


次に岩牙守護将を見る。


さらに。


アダプトロードを見る。


最後に。


自分を見る。


「グル」


短く鳴いた。


リリスが首を傾げる。


「何て?」


アルベルトが答えた。


「まだだそうだ」


沈黙。


鋼影狼が頷く。


どうやら正解らしい。


「分かるんですか」


「何となくな」


「便利ですね」


鋼影狼は立ち上がる。


そのまま訓練場へ戻ろうとする。


未練はなさそうだった。


上位種。


魅力はある。


だが。


今ではない。


そんな意思を感じた。


その後ろ姿を見ながら。


アダプトロードが小さく頷く。


「良い」


評価しているらしい。


珍しかった。


その時。


別の通知が表示された。


リリスが目を丸くする。


「ん?」


新機能。


そう書かれていた。


実ダンジョン戦勝利報酬。


どうやら順位上昇に伴う追加解放らしい。


アルベルトが開く。


そこには。


⸻


幹部昇格試練


解放


⸻


沈黙。


全員が固まる。


「何ですかこれ」


リリスが聞く。


説明文が表示される。


⸻


幹部適性保有個体対象


試練突破で能力上昇


指揮能力強化


統率能力強化


特殊称号獲得可能


⸻


管理室が静まり返る。


そして。


全員の視線が一斉に鋼影狼へ向いた。


まだ帰っていなかった。


扉の前で固まっている。


「グル?」


何故見られているのか分からないらしい。


リリスが苦笑する。


「候補ですね」


「ああ」


間違いなく。


鋼影狼のためにあるような制度だった。


その時。


また通知が現れる。


⸻


対象個体


鋼影狼


森護兵将


岩牙守護将


⸻


「え?」


リリスが固まる。


森護兵将までいる。


英雄種なのに。


岩牙守護将までいる。


異常成功個体なのに。


「全員対象か」


アルベルトが呟く。


つまり。


幹部適性を持つ者はさらに成長できる。


そんな制度だった。


その瞬間。


森護兵将が立ち上がる。


やる気だった。


岩牙守護将も拳を鳴らす。


やる気だった。


鋼影狼も尻尾が動く。


やる気だった。


完全に競争が始まっていた。


「面倒なことになりましたね」


リリスが呟く。


「面白いな」


アルベルトが答える。


いつもの反応だった。


しかし。


今回は本当に面白い。


配合だけではない。


育成。


訓練。


昇格。


軍団そのものが進化し始めていた。


忘れられた洞窟はまた新しい段階へ進もうとしていた。

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