第88話 狼王討伐作戦
黒霧狼王。
シャドウファング。
ブラッドファング。
そして三十を超える狼の群れ。
霧の森の中心。
両軍はついに正面から向かい合った。
◇
狼達が唸る。
低く。
鋭く。
獲物を前にした捕食者の声だった。
対する忘れられた洞窟軍も一歩も引かない。
森護兵将が前へ出る。
岩牙守護将が並ぶ。
その後方に鉄牙兵。
重岩熊兵。
岩牙兵。
完全な戦闘陣形だった。
◇
黒霧狼王が一歩前へ出る。
その瞬間。
群れ全体が動いた。
◇
「来ます!」
リリスが叫ぶ。
次の瞬間。
狼の群れが一斉突撃した。
◇
速い。
圧倒的な数。
森の地形を熟知している。
左右から回り込む。
霧を利用する。
連携も良い。
さすが自然発生型だった。
◇
しかし。
アダプトロードは冷静だった。
「第二陣」
指示。
鉄牙兵が後退。
代わりに重岩熊兵が前進する。
◇
激突。
轟音。
重岩熊兵が壁になる。
狼達の突撃が止まる。
そこへ。
森護兵将。
◇
咆哮。
軍団強化発動。
鉄牙兵達の動きが変わる。
一気に押し返す。
◇
左翼。
シャドウファングが動いた。
速い。
通常の狼とは別格。
重岩熊兵を飛び越える。
そのまま後衛へ。
◇
だが。
影が動く。
シャドウリーパーだった。
◇
黒い閃光。
シャドウファングの首元を狙う。
シャドウファングも反応する。
回避。
さらに反撃。
◇
二体の影が森を駆ける。
見えない。
速すぎる。
リリスですら追えない。
◇
「互角ですか」
「ああ」
アルベルトが頷く。
相手も幹部級。
簡単には倒せない。
◇
右翼。
ブラッドファング。
こちらは力型だった。
岩牙守護将へ突撃する。
◇
衝突。
凄まじい音。
地面が割れる。
◇
しかし。
岩牙守護将は動かない。
◇
再び衝突。
また止める。
三度目。
今度は岩牙守護将が殴った。
◇
轟音。
ブラッドファングが吹き飛ぶ。
木を三本折って転がった。
◇
「強いですね」
リリスが呟く。
異常成功個体。
防御だけではなかった。
◇
戦況は互角。
いや。
やや忘れられた洞窟有利。
◇
だが。
アルベルトは敵軍を見続けていた。
◇
狼の数。
幹部の位置。
王の位置。
全部見る。
そして。
気付く。
◇
「やはりな」
「何がです?」
「統率型だ」
◇
リリスも理解した。
白骨の墓所。
小鬼の巣穴。
過去に見た敵と同じ。
◇
群れは強い。
だが。
王がいるから強い。
◇
黒霧狼王。
そこが核。
◇
「王を落とす」
アルベルトが言った。
作戦決定だった。
◇
アダプトロードも即座に理解する。
「暗殺」
「ああ」
◇
シャドウリーパー。
森護兵将。
夜宝守。
呼び寄せる。
◇
リリスが首を傾げた。
「夜宝守もですか?」
「ああ」
◇
夜宝守がやって来る。
黒影果をもう一個持っていた。
いつ取ったのか誰も知らない。
◇
「聞け」
アルベルトが地図を描く。
黒霧狼王。
黒影樹。
敵軍。
◇
そして。
作戦説明。
◇
森護兵将が正面突破。
群れを引き付ける。
◇
シャドウリーパーが潜入。
狼王を狙う。
◇
夜宝守。
黒影樹確保。
◇
「最後おかしくないですか?」
リリスが突っ込む。
◇
しかし。
夜宝守は目を輝かせていた。
完全にやる気だった。
◇
その時。
ナイトレイブンウルフが立ち上がる。
◇
沈黙。
◇
今まで戦闘には参加していない。
幼体。
成長途中。
だから温存していた。
◇
だが。
今回は違った。
◇
黒影果。
黒影樹。
夜属性高濃度環境。
◇
ナイトレイブンウルフの周囲に黒い魔力が集まり始める。
◇
リリスが固まる。
「まさか」
◇
ダンジョンコアが反応する。
⸻
ナイトレイブンウルフ
進化条件達成率
47%
↓
52%
⸻
一気に増える。
◇
夜宝守が歓喜する。
「グルル!」
◇
アルベルトの目が細くなる。
◇
面白い。
実に面白い。
◇
狼王討伐。
黒影樹確保。
そして。
ナイトレイブンウルフの成長。
◇
全てが繋がり始めていた。
◇
戦場の奥。
黒霧狼王が再び咆哮する。
◇
対する忘れられた洞窟も動く。
◇
勝負は次の一撃で決まる。
そんな空気が戦場を支配していた。




