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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第85話 忠臣という生き物

夜宝守が誕生して一日。


忘れられた洞窟で、誰も予想していなかった異常事態が発生していた。


「変です」


朝一番、リリスが広間を見渡して言った。


「何がだ」


「夜宝守です」


アルベルトも視線を向ける。


そして即座に理解した。


問題は一つではない。


全部だった。



中央広間。


ナイトレイブンウルフが寝ている。


その隣。


夜宝守も寝ている。


ここまでは普通。


問題はその周囲だった。


魔石。


牙。


鉱石。


薬草。


骨。


羽根。


何故か鍋。


何故かスプーン。


何故か片方だけの靴。


広間の一角が、夜宝守の集めた戦利品で埋め尽くされていた。


「……靴?」


リリスが拾い上げる。


夜宝守が慌てて取り返した。


そして。


宝の山へ戻す。


「お気に入りらしい」


「いりませんよね?」


「たぶん」


全員そう思った。



夜宝守の収集癖は想像以上だった。


珍しい物を見る。



拾う。



ナイトレイブンウルフへ献上。



満足。


非常に分かりやすい。


問題は基準だった。


夜属性魔石。


希少鉱石。


魔物素材。


ここまでは良い。


だが。


鍋。


靴。


壊れたスコップ。


意味が分からない。



「グルル」


夜宝守が得意げにスコップを置く。


ナイトレイブンウルフは無反応。


当然だった。


「評価されてませんね」


リリスが言う。


夜宝守が少し落ち込んだ。


分かるらしい。



昼。


アダプトロードが訓練を行っていた。


鉄牙兵。


重岩熊兵。


岩牙兵。


新戦力も増えている。


軍団再編の最中だった。


その時。


夜宝守が現れる。


全員を見る。


そして。


ナイトレイブンウルフを見る。


次の瞬間。


ナイトレイブンウルフの前へ立った。


完全な護衛姿勢。


「過保護ですね」


リリスが呟く。



さらに。


森護兵将が近付く。


夜宝守が立ち塞がる。


アダプトロードが近付く。


立ち塞がる。


岩牙守護将が近付く。


立ち塞がる。


「敵じゃないですよ」


リリスが言う。


夜宝守は納得していない。


完全に護衛モードだった。



しかし。


不思議なこともあった。


ナイトレイブンウルフが移動する。


夜宝守も付いて行く。


これは分かる。


だが。


ナイトレイブンウルフが転ぶ。


夜宝守が先に駆け寄る。


ナイトレイブンウルフが眠そうにする。


夜宝守が静かな場所を探す。


ナイトレイブンウルフが空腹になる。


夜宝守が食べ物を探しに行く。


「保護者ですね」


リリスが言った。


アルベルトも否定できなかった。


忠臣というより保護者だった。



夕方。


ダンジョンコア前。


進化率確認。



ナイトレイブンウルフ


進化条件達成率


40%



44%



沈黙。


「増えてますね」


「ああ」


二日で四%。


かなり大きい。


夜宝守が持ち込む素材。


その一部が確実に影響していた。



情報解析。


アルベルトは改めて夜宝守を見る。



夜宝守


戦闘適性:中


探索適性:高


収集適性:極高


忠誠適性:極高


成長適性:高


特殊特性


王候補補佐



「補佐か」


アルベルトが呟く。


戦闘特化ではない。


統率特化でもない。


だが。


王候補を支えることに特化している。


そんな個体だった。



その時。


夜宝守が戻ってきた。


今回の収穫。


黒い魔石。


影狼の牙。


希少鉱石。


そして。


木の枝。


「最後何ですか」


リリスが聞く。


夜宝守は自信満々だった。


ナイトレイブンウルフへ差し出す。


ナイトレイブンウルフは枝を咥える。


少し遊ぶ。


満足そうだった。


夜宝守も満足そうだった。


「喜んでますね」


「喜んでるな」


理由は分からない。


だが。


本人達は幸せそうだった。



その夜。


アダプトロードが報告へ来る。


「主」


「どうした」


「準備完了」


軍団再編。


戦力確認。


訓練。


全て終了した。


忘れられた洞窟は過去最高戦力に到達している。



そして。


ダンジョンコアが光る。


全員の視線が集まる。


表示が現れる。



定期ランキング戦


開催まで


一時間



沈黙。


リリスが息を吐く。


アダプトロードが頷く。


森護兵将も立ち上がる。


岩牙守護将が拳を握る。


シャドウリーパーは静かに影へ沈んだ。


夜宝守は。


ナイトレイブンウルフの前に立った。


守るように。


当然のように。



942位。


忘れられた洞窟。


定期ランキング戦を迎える。


相手は同期ではない。


上位ランクのダンジョン。


自然発生ダンジョン。


本物の強者達。


アルベルトは静かに立ち上がった。


「行くか」


こうして。


忘れられた洞窟の新たな戦いが始まろうとしていた。

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