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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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85/223

第85話 忠臣という生き物

夜宝守が誕生して一日。


忘れられた洞窟で、誰も予想していなかった異常事態が発生していた。


「変です」


朝一番、リリスが広間を見渡して言った。


「何がだ」


「夜宝守です」


アルベルトも視線を向ける。


そして即座に理解した。


問題は一つではない。


全部だった。


◇


中央広間。


ナイトレイブンウルフが寝ている。


その隣。


夜宝守も寝ている。


ここまでは普通。


問題はその周囲だった。


魔石。


牙。


鉱石。


薬草。


骨。


羽根。


何故か鍋。


何故かスプーン。


何故か片方だけの靴。


広間の一角が、夜宝守の集めた戦利品で埋め尽くされていた。


「……靴?」


リリスが拾い上げる。


夜宝守が慌てて取り返した。


そして。


宝の山へ戻す。


「お気に入りらしい」


「いりませんよね?」


「たぶん」


全員そう思った。


◇


夜宝守の収集癖は想像以上だった。


珍しい物を見る。


↓


拾う。


↓


ナイトレイブンウルフへ献上。


↓


満足。


非常に分かりやすい。


問題は基準だった。


夜属性魔石。


希少鉱石。


魔物素材。


ここまでは良い。


だが。


鍋。


靴。


壊れたスコップ。


意味が分からない。


◇


「グルル」


夜宝守が得意げにスコップを置く。


ナイトレイブンウルフは無反応。


当然だった。


「評価されてませんね」


リリスが言う。


夜宝守が少し落ち込んだ。


分かるらしい。


◇


昼。


アダプトロードが訓練を行っていた。


鉄牙兵。


重岩熊兵。


岩牙兵。


新戦力も増えている。


軍団再編の最中だった。


その時。


夜宝守が現れる。


全員を見る。


そして。


ナイトレイブンウルフを見る。


次の瞬間。


ナイトレイブンウルフの前へ立った。


完全な護衛姿勢。


「過保護ですね」


リリスが呟く。


◇


さらに。


森護兵将が近付く。


夜宝守が立ち塞がる。


アダプトロードが近付く。


立ち塞がる。


岩牙守護将が近付く。


立ち塞がる。


「敵じゃないですよ」


リリスが言う。


夜宝守は納得していない。


完全に護衛モードだった。


◇


しかし。


不思議なこともあった。


ナイトレイブンウルフが移動する。


夜宝守も付いて行く。


これは分かる。


だが。


ナイトレイブンウルフが転ぶ。


夜宝守が先に駆け寄る。


ナイトレイブンウルフが眠そうにする。


夜宝守が静かな場所を探す。


ナイトレイブンウルフが空腹になる。


夜宝守が食べ物を探しに行く。


「保護者ですね」


リリスが言った。


アルベルトも否定できなかった。


忠臣というより保護者だった。


◇


夕方。


ダンジョンコア前。


進化率確認。


⸻


ナイトレイブンウルフ


進化条件達成率


40%


↓


44%


⸻


沈黙。


「増えてますね」


「ああ」


二日で四%。


かなり大きい。


夜宝守が持ち込む素材。


その一部が確実に影響していた。


◇


情報解析。


アルベルトは改めて夜宝守を見る。


⸻


夜宝守


戦闘適性:中


探索適性:高


収集適性:極高


忠誠適性:極高


成長適性:高


特殊特性


王候補補佐


⸻


「補佐か」


アルベルトが呟く。


戦闘特化ではない。


統率特化でもない。


だが。


王候補を支えることに特化している。


そんな個体だった。


◇


その時。


夜宝守が戻ってきた。


今回の収穫。


黒い魔石。


影狼の牙。


希少鉱石。


そして。


木の枝。


「最後何ですか」


リリスが聞く。


夜宝守は自信満々だった。


ナイトレイブンウルフへ差し出す。


ナイトレイブンウルフは枝を咥える。


少し遊ぶ。


満足そうだった。


夜宝守も満足そうだった。


「喜んでますね」


「喜んでるな」


理由は分からない。


だが。


本人達は幸せそうだった。


◇


その夜。


アダプトロードが報告へ来る。


「主」


「どうした」


「準備完了」


軍団再編。


戦力確認。


訓練。


全て終了した。


忘れられた洞窟は過去最高戦力に到達している。


◇


そして。


ダンジョンコアが光る。


全員の視線が集まる。


表示が現れる。


⸻


定期ランキング戦


開催まで


一時間


⸻


沈黙。


リリスが息を吐く。


アダプトロードが頷く。


森護兵将も立ち上がる。


岩牙守護将が拳を握る。


シャドウリーパーは静かに影へ沈んだ。


夜宝守は。


ナイトレイブンウルフの前に立った。


守るように。


当然のように。


◇


942位。


忘れられた洞窟。


定期ランキング戦を迎える。


相手は同期ではない。


上位ランクのダンジョン。


自然発生ダンジョン。


本物の強者達。


アルベルトは静かに立ち上がった。


「行くか」


こうして。


忘れられた洞窟の新たな戦いが始まろうとしていた。

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