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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第84話 第三の因子

忘れられた洞窟中央広間。


アルベルトは昨日の記録を何度も見返していた。


岩牙守護将。


予測結果は岩壁守護兵。


だが実際は全く別の個体が生まれた。


配合眼が外れた。


初めての出来事だった。


「まだ考えてるんですか」


リリスが呆れたように言う。


「ああ」


アルベルトは資料を指差した。


三十二年前の研究記録。


その一節だった。



予測外変異を確認


第三因子流入の可能性あり


再現不能



「第三因子?」


リリスが首を傾げる。


アルベルトも頷く。


普通の配合は二体。


三体配合でも三体。


それ以上は存在しない。


少なくとも現在の常識では。



「三体配合とは違うんですか?」


リリスが聞く。


「違うな」


アルベルトは即答した。


「三体配合なら配合眼に表示される」


「確かに」


過去にもあった。


三体配合候補。


成功率も表示された。


予測結果も表示された。


つまり。


三体配合はシステムの範囲内。


予測可能。


だが。


昨日の岩牙守護将は違う。


配合眼は反応しなかった。


予測結果も変わらなかった。


それなのに。


別の結果が生まれた。


「だから予測外なんだ」


アルベルトが呟く。



しばらく考え込む。


そして。


立ち上がった。


「試す」


「ですよね」


リリスは知っていた。


そうなると思っていた。



今回の素材。



シャドウウルフ


×


アイアンリザード


予測結果


シャドウリザード


成功率 57%



普通だ。


少なくとも配合眼はそう言っている。


「これで検証する」


アルベルトが言う。


「何をです?」


「第三因子だ」



数分後。


配合陣の前。


素材が並ぶ。


そして。


アルベルトはさらに指示を出した。


「ナイトレイブンウルフを連れて来てくれ」


リリスが嫌な顔をした。


「またですか」


「ああ」


「絶対何か企んでますよね」


「研究だ」


いつも通りだった。



ナイトレイブンウルフが運ばれてくる。


本人はまだ幼体。


状況を理解していない。


そのまま配合陣の近くで丸くなる。


ぷにも転がってきた。


リリスの頭痛が増した。



配合開始。


光が広がる。


シャドウウルフ。


アイアンリザード。


融合が始まる。


順調だった。


予測通り。


そのはずだった。


その時。


ナイトレイブンウルフが小さく鳴いた。


黒い魔力が漏れる。


一瞬。


本当に一瞬だった。


しかし。


配合陣が反応した。


光が揺れる。


アルベルトの目が見開かれる。


「来た」



次の瞬間。


光が爆発する。


轟音。


魔力の奔流。


昨日と同じ現象。


異常反応だった。



やがて。


煙が晴れる。


そこにいたのは。


予測結果のシャドウリザードではなかった。


狼型。


黒い毛並み。


金色の瞳。


影のような身体。


そして。


通知が現れる。



配合成立


予測外変異を確認


第三因子流入を検出



沈黙。


さらに表示。



個体名


夜宝守


新種認定



リリスが固まる。


アルベルトも無言だった。


研究資料。


第三因子。


予測外変異。


全てが繋がった。



情報解析。



夜宝守


戦闘適性:中


探索適性:高


収集適性:極高


忠誠適性:極高


成長適性:高


特殊特性


王候補補佐



また見たことのない特性だった。



その時。


夜宝守が周囲を見回した。


数秒。


そして。


ナイトレイブンウルフを見つける。


次の瞬間。


全力疾走。


一直線。


ナイトレイブンウルフの前で停止。


深く頭を下げた。


まるで騎士。


まるで臣下。


まるで王へ忠誠を誓う存在。


「原因ですね」


リリスが言う。


「ああ」


ナイトレイブンウルフの魔力。


第三因子。


だから。


夜宝守はナイトレイブンウルフへ絶対忠誠を持って生まれた。



昼。


夜宝守は洞窟中を駆け回っていた。


魔石。


牙。


骨。


希少鉱石。


珍しい素材。


片っ端から集める。


そして。


全部。


ナイトレイブンウルフの前へ置く。


完全な貢物だった。


「何してるんですかね」


リリスが呆れる。


「捧げているな」


アルベルトは真面目に観察していた。



さらに。


集める物には共通点があった。


夜属性。


影属性。


希少素材。


進化に関係しそうな物ばかり。


偶然ではない。



その時。


ダンジョンコアが反応した。



ナイトレイブンウルフ


進化条件達成率


34%



35%



全員が固まる。


「増えました」


「ああ」


「今の貢物ですよね」


「ああ」


夜宝守の行動が。


ナイトレイブンウルフの成長へ影響している。



夕方。


ナイトレイブンウルフの周囲には小さな宝の山ができていた。


夜宝守はその隣に座る。


当然のように。


護衛するように。


絶対に離れない。


「変な奴ですね」


リリスが言う。


「ああ」


アルベルトは笑った。


異常成功。


第三因子。


予測外変異。


三十二年前の研究者が追っていた現象。


そして。


そこから生まれた存在。


夜宝守は単なる新戦力ではない。


未来の王候補を支える忠臣だった。


忘れられた洞窟はまた一歩。


配合士ですら知らない領域へ踏み込んでいた。

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