第83話 配合祭り
忘れられた洞窟。
中央広間。
久しぶりに全員が集められていた。
アダプトロード。
森護兵将。
シャドウリーパー。
ナイトレイブンウルフ。
そして大量の下級魔物達。
リリスは嫌な予感しかしなかった。
「始まるんですね」
「ああ」
アルベルトは頷く。
「配合だ」
やはりだった。
◇
942位。
ここまで来た。
だが上を見ればまだ足りない。
先輩卒業生。
自然発生ダンジョン。
どれも強敵ばかり。
だからこそ。
強化が必要だった。
アルベルトは配合一覧を開く。
今回の方針は決まっている。
主力は使わない。
まずは下級個体。
登録済み素材。
消えても被害が少ない個体から試す。
「珍しく慎重ですね」
「研究だからな」
「研究だから危険なんですよ」
リリスは知っている。
アルベルトの研究欲は危険だ。
◇
最初の候補。
⸻
ゴブリン
×
岩牙兵
予測結果
ゴブリンファイター
成功率 63%
⸻
「行くか」
「普通ですね」
配合陣が光る。
二体が包まれる。
数秒後。
光が消える。
そこに立っていたのは。
⸻
ゴブリンファイター
⸻
「成功ですね」
「ああ」
予測通りだった。
剣を持った戦闘型ゴブリン。
悪くない。
だが特別でもない。
量産向き。
そんな評価だった。
◇
二回目。
⸻
ゴブリンファイター
×
アイアンリザード
予測結果
アイアンゴブリン
成功率 51%
⸻
リリスが顔をしかめる。
「低くないですか」
「普通だ」
普通ではない。
アルベルト基準だった。
光が広がる。
しばらく沈黙。
そして。
光が消えた。
何もいない。
⸻
配合失敗
⸻
「あ」
リリスが呟く。
素材消滅。
久しぶりの失敗だった。
「消えましたね」
「ああ」
「二体とも」
「ああ」
少しだけ空気が重くなる。
これが普通の配合だ。
だから配合士は少ない。
成功する保証などない。
◇
しかし。
アルベルトは止まらない。
三回目。
四回目。
成功。
失敗。
成功。
失敗。
配合は続いた。
気付けば周囲に新しい魔物が増えている。
その一方で消えた魔物も少なくない。
リリスが呆れる。
「久しぶりに見ました」
「何をだ」
「普通の配合士です」
アルベルトは首を傾げた。
意味が分からないらしい。
◇
その時だった。
一つの候補で手が止まる。
⸻
岩牙重兵
×
ストーンゴーレム
予測結果
岩壁守護兵
成功率 68%
⸻
「これですね」
リリスも頷く。
前衛不足。
それを補える。
今後を考えても重要だった。
「行くぞ」
配合開始。
光が広がる。
全員が見守る。
そして。
数秒後。
異変が起きた。
光が揺れた。
リリスが眉をひそめる。
「ん?」
何かがおかしい。
予測時と反応が違う。
アルベルトも気付く。
その時。
ぷにが近付いてきた。
ぷるぷる揺れている。
配合陣のすぐ近く。
嫌な予感しかしない。
「ぷに?」
リリスが呼ぶ。
遅かった。
ぽよん。
ぷにが光へ飛び込む。
「ちょっ!?」
次の瞬間。
光が爆発した。
◇
しばらく誰も喋らなかった。
煙が晴れる。
そこに立っていた魔物を見て。
全員が固まる。
大きい。
重い。
だが。
予測結果と違う。
アルベルトの目が輝いた。
リリスは頭を抱えた。
通知が表示される。
⸻
配合成立
予測結果との差異を確認
特殊結果発生
⸻
沈黙。
さらに続く。
⸻
個体名
岩牙守護将
新種認定
⸻
誰も喋らない。
リリスだけが呟いた。
「岩壁守護兵じゃありません」
「ああ」
アルベルトは笑っていた。
久しぶりだった。
研究者の顔。
「面白いな」
「絶対そう言うと思いました」
予測外。
未知。
前例なし。
普通の配合士なら頭を抱える。
だが。
アルベルトは違った。
むしろ喜んでいる。
◇
岩牙守護将はゆっくりと周囲を見回した。
三メートル近い巨体。
岩の鎧。
岩牙重兵の重厚さ。
ストーンゴーレムの耐久力。
さらに。
その瞳には知性があった。
森護兵将が興味深そうに近付く。
アダプトロードも観察している。
情報解析。
結果が表示された。
⸻
岩牙守護将
戦闘適性:高
防御適性:極高
統率適性:中
成長適性:高
⸻
リリスが固まる。
「統率適性?」
防御型のはずだった。
壁役のはずだった。
なのに。
統率適性が存在する。
予測結果には無かった能力。
完全な予測外だった。
アルベルトは静かに呟く。
「異常成功か」
配合眼でも読めなかった結果。
研究資料にも載っていない。
だが。
一つだけ確かなことがあった。
忘れられた洞窟はまた新しい可能性へ足を踏み入れた。
そして。
ぷには満足そうに転がっていた。
リリスは確信する。
「絶対ぷにですね」
「かもしれないな」
「否定してください」
アルベルトは否定しなかった。
だから余計に不安だった。
配合祭りはまだ始まったばかり。
忘れられた洞窟の強化は。
ここからさらに加速していくのだった。




