第82話 新たな配合候補
翌朝。
アルベルトはダンジョンコアの前に座っていた。
理由は単純。
研究ではない。
偵察でもない。
配合だった。
「ようやくですね」
リリスが言う。
「何がだ」
「最近ずっと戦闘と調査ばかりでした」
確かにそうだった。
947位との戦い。
研究資料の回収。
先輩卒業生の偵察。
忙しかった。
だが。
忘れられた洞窟最大の強みは変わらない。
配合。
それこそが最大の武器だった。
◇
アルベルトは一覧を開く。
登録魔物。
以前よりかなり増えている。
アースベア。
岩牙重兵。
アイアンリザード。
アイアンフォートタートル。
その他多数。
その結果。
配合候補も増えていた。
リリスが数字を見て固まる。
「多いですね……」
「多いな」
百件以上。
普通の配合士なら一生かけても試せない数だった。
アルベルトは一つずつ確認していく。
そして。
途中で手が止まった。
「これだな」
リリスも画面を見る。
そこに表示されていたのは。
⸻
岩牙重兵
×
ストーンゴーレム
予測結果
岩壁守護兵
⸻
「壁役ですね」
「ああ」
現在の弱点。
前衛不足。
それを補える。
悪くない。
むしろかなり良い。
しかし。
アルベルトは首を振った。
「今じゃない」
「え?」
「戦力としては強い」
だが。
決定打ではない。
942位以降を突破するには足りない。
もっと必要だった。
◇
さらに候補を見る。
その時。
森護兵将の欄で手が止まる。
⸻
森護兵将
×
岩牙重兵
予測結果
???
⸻
リリスが目を細める。
「未知ですね」
「ああ」
成功率も表示されない。
結果も不明。
珍しい。
配合眼でも完全には読めないらしい。
「気になります?」
「かなり」
即答だった。
リリスは知っている。
この顔は危険だ。
研究者の顔である。
◇
しかし。
アルベルトはすぐには選ばなかった。
理由がある。
森護兵将。
現在の主力。
英雄級候補。
失えば困る。
シャドウリーパーの時とは状況が違う。
今は戦力を安定させる時期だった。
「保留だな」
「珍しいですね」
「まだ早い」
リリスは少し驚いた。
以前なら即決していた。
成長しているらしい。
たぶん。
◇
その時。
ナイトレイブンウルフが近付いてきた。
幼体。
しかし最近は存在感が増している。
アルベルトは何気なく一覧へ視線を向ける。
そして。
止まった。
「ん?」
リリスも見る。
そこには新しい候補が表示されていた。
⸻
ナイトレイブンウルフ
×
シャドウウルフ
進化補助候補
条件不足
⸻
二人とも固まる。
「進化補助?」
「初めて見ました」
通常の配合ではない。
進化でもない。
その中間のような表示だった。
さらに詳細を開く。
すると。
条件が表示される。
⸻
夜属性適性上昇
影属性適性上昇
成長段階到達
⸻
「なるほど」
アルベルトが呟く。
「まだ進化できないのか」
「幼体ですからね」
リリスも納得する。
だが。
重要な情報だった。
ナイトレイブンウルフは確実に進化先を持っている。
しかも。
影属性方向。
シャドウ系統と相性が良い。
◇
その後も確認を続ける。
そして。
もう一つ。
面白い候補を見つけた。
⸻
アースベア
×
岩牙重兵
予測結果
重岩熊兵
⸻
「強そうですね」
「強そうだな」
分かりやすい。
重装前衛。
壁役。
そして。
統率型軍団との相性も良い。
アダプトロードの指揮下に置けば強いだろう。
「これですね」
リリスが言う。
「これだな」
珍しく意見が一致した。
今必要なのは尖った戦力ではない。
安定した前衛。
942位以降は軍団戦が増える。
ならば。
前線を支える存在が必要だった。
◇
その日の夕方。
アルベルトは広場へ全員を集めた。
アダプトロード。
森護兵将。
シャドウリーパー。
そして各魔物達。
アルベルトは静かに言う。
「次の強化を始める」
全員が反応する。
リリスが苦笑した。
「やっぱり始まりましたね」
942位。
まだ通過点。
先輩卒業生。
自然発生ダンジョン。
その先にはさらに強敵が待つ。
だから。
立ち止まらない。
忘れられた洞窟最大の武器。
配合。
その力で。
さらに上を目指す。
アルベルトは配合陣へ手を置いた。
新たな進化の時間が始まろうとしていた。




