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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第79話 昇格

岩牙隊長の大剣が振り下ろされる。


轟音。


地面が砕けた。


だが。


アダプトロードは既にそこにいなかった。


半歩。


さらに半歩。


戦闘開始直後なら避けられなかった。


しかし今は違う。


剣筋。


重心。


呼吸。


戦う中で全てを学んでいた。


適応共有。


適応指揮。


そして。


アダプトロード自身の成長。


全てが噛み合っていた。


「終わりだ」


静かに踏み込む。


岩牙隊長の懐。


完全な死角。


剣が突き出される。


岩牙隊長も反応した。


だが。


遅い。


ほんの僅か。


それだけで十分だった。


アダプトロードの一撃が胸部へ突き刺さる。


同時に。


森護兵将が動いた。


轟音。


護衛の岩牙重兵を殴り飛ばす。


さらに踏み込む。


拳が岩牙隊長へ叩き込まれた。


反対側。


影が揺れる。


シャドウリーパー。


爪が閃く。


首筋。


急所。


三方向からの同時攻撃。


岩牙隊長の身体が揺れる。


それでも倒れない。


947位の指揮官。


格上。


伊達ではなかった。


その時だった。


小さな影が飛び出した。


ナイトレイブンウルフ。


幼体。


まだ未熟。


それでも真っ直ぐ駆ける。


岩牙隊長の視線が一瞬だけ動く。


ほんの一瞬。


その隙。


アダプトロードが叫ぶ。


「今だ!」


渾身の一撃。


胸部へ深く突き刺さる。


沈黙。


そして。


巨体がゆっくり崩れ落ちた。


轟音。


岩牙隊長。


撃破。


しばらく誰も動かなかった。


信じられなかった。


格上だった。


それを。


忘れられた洞窟が倒した。


リリスが大きく息を吐く。


「勝ちました……」


「ああ」


アルベルトも頷く。


その瞬間。


戦場全体に光が広がった。


通知が表示される。



昇格挑戦戦勝利


順位更新中



さらに続く。



947位ダンジョン撃破


大幅昇格対象



森護兵将が笑う。


アダプトロードはその場へ座り込んだ。


消耗が激しい。


だが表情は満足そうだった。


シャドウリーパーも静かに立っている。


その時。


リリスが周囲を見回した。


「そういえば」


アルベルトが振り向く。


「今回は実領域戦だったんですね」


「実領域戦?」


アルベルトは初めて聞く言葉だった。


リリスは管理画面を開く。


学園資料。


昇格挑戦戦の説明。


そこには戦場選択について記されていた。


「昇格挑戦戦は防衛側が戦場を選べるんです」


「選べる?」


「はい」


リリスは頷く。


「仮想戦場か実領域戦か」


通常ランキング戦は仮想戦場。


専用の戦闘空間で行われる。


安全。


情報流出もない。


最も一般的な形式だ。


「じゃあ今回は」


「実領域戦です」


リリスが周囲を指差す。


岩壁。


補給路。


巡回路。


隠し通路。


全てが存在している。


「岩牙の巣が管理する支配領域ですね」


本体ではない。


コアもない。


だが。


実際のダンジョン環境を利用できる。


防衛側に有利な戦場。


「なるほど」


アルベルトは納得した。


確かに岩牙隊長は地形を利用していた。


護衛配置も完璧だった。


普通なら侵入者を圧倒できたはずだ。


「ただし」


リリスが続ける。


「情報も全部見られます」


沈黙。


アルベルトが周囲を見る。


補給路。


巡回経路。


隠し通路。


岩牙重兵。


全部見ていた。


「配合士相手には危険ですね」


リリスが言う。


「登録されますから」


アルベルトの視線が自然と岩牙重兵へ向く。


リリスが額を押さえた。


「ほら」


「登録しただけだ」


「その後が問題なんです」


森護兵将が笑う。


アダプトロードも少し笑った。


その時。


新たな通知が表示された。



順位更新


忘れられた洞窟


954位



942位



沈黙。


そして。


リリスが叫ぶ。


「十二位上昇です!」


昇格挑戦戦。


947位撃破。


その結果だった。


忘れられた洞窟は一気に940位台へ到達した。


先輩卒業生達が多く存在する領域。


自然発生ダンジョンも増える領域。


ここから先はさらに厳しくなる。


だが。


確実に前へ進んでいた。


その時だった。


ナイトレイブンウルフが再び唸る。


全員が振り向く。


視線の先。


岩壁の奥。


戦闘中にも気になっていた場所だった。


アルベルトが目を細める。


「まだ終わりじゃないな」


ナイトレイブンウルフが頷く。


そして。


アダプトロードも気付いていた。


岩牙隊長が最後まで守ろうとしていた場所。


補給路より奥。


戦闘とは無関係な区域。


そこに何かがある。


リリスが小さく呟く。


「947位ダンジョンの秘密……ですかね」


誰も否定しなかった。


勝利した。


昇格した。


だが探索は終わらない。


忘れられた洞窟は。


岩牙の巣が隠していた秘密へ足を踏み入れようとしていた。

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