第71話 進化候補
ランキング戦まで三日。
忘れられた洞窟。
中央広間。
全員の視線が集まっていた。
アダプトナイトゴブリンへ。
本人は居心地が悪そうだった。
「見るな」
「気になる」
森護兵将が即答する。
「ぷに!」
プニシャドウも同意した。
何に同意したのかは分からない。
――――――
昨夜。
未知の魔物との戦闘。
シックルマンティス。
その戦闘データを配合眼が記録した。
そして。
アダプトナイトゴブリンの進化候補が更新された。
初めての出来事だった。
――――――
管理室。
アルベルトが画面を開く。
リリスも隣に立つ。
アダプトナイトゴブリンは腕を組んでいた。
平静を装っている。
だが。
少しだけ緊張している。
皆分かっていた。
――――――
「開くぞ」
光。
画面が展開される。
――――――
アダプトナイトゴブリン
進化候補
二件確認
――――――
「二つですか」
リリスが呟く。
予想より多かった。
――――――
第一候補。
――――――
アダプトブレードゴブリン
成功率72%
適応力上昇
斬撃適応獲得
敏捷上昇
――――――
「斬撃適応」
アルベルトが呟く。
そこだった。
ただ強くなるわけではない。
シックルマンティスの戦闘様式を取り込む。
アダプトらしい進化だった。
「お前らしいな」
リリスが言う。
アダプトナイトゴブリンも頷く。
確かに。
敵を学ぶ。
取り込む。
それは今までの戦い方そのものだった。
――――――
続いて。
第二候補。
――――――
アダプトガードゴブリン
成功率69%
適応力上昇
指揮補助能力獲得
防御上昇
――――――
空気が少し変わる。
「指揮補助?」
森護兵将が首を傾げる。
リリスが説明する。
「統率そのものではありません」
「違うのか」
「はい」
強い指揮官になる進化ではない。
仲間の動きを見て補助する。
状況へ適応する。
こちらもやはりアダプト系だった。
――――――
アルベルトは考える。
ブレード。
ガード。
どちらも違う。
だが。
根本は同じだった。
適応。
それが核にある。
――――――
「どう思う」
アルベルトが聞く。
当事者へ。
アダプトナイトゴブリンは少し考えた。
そして答える。
「皆を守りたい」
静かな言葉だった。
昔。
ただのゴブリンだった。
守られる側だった。
アルベルトに救われた。
仲間ができた。
強くなった。
だから。
今度は違う。
「支えたい」
それが本音だった。
――――――
森護兵将が頷く。
「良い」
短い。
だが本気だった。
シャドウリーパーも影の中から見ている。
プニシャドウは何となく跳ねている。
「ぷに!」
平和だった。
――――――
その時。
配合眼が再び反応した。
文字が浮かぶ。
――――――
注意
追加進化候補存在
解放条件未達成
――――――
沈黙。
全員が固まる。
「またですか」
リリスが頭を抱える。
二つではなかった。
まだある。
しかも。
隠されている。
――――――
アルベルトの目が輝く。
嫌な予感しかしない。
「調べる」
「そう言うと思いました」
即答だった。
ランキング戦まで三日。
昇格挑戦戦まであと少し。
そして。
アダプトナイトゴブリンの進化は、まだ誰も知らない先へ続いていた。




