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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第69話 昔の記録

ランキング戦まで五日。


忘れられた洞窟。


管理室。


アルベルトは管理画面を見つめていた。


昨日発見した断鎌の森。


941位。


ゴールドマンティスロード。


そして正体不明のダンジョンマスター。


あの映像が頭から離れない。


強かった。


明らかに今の忘れられた洞窟より上だ。


だからこそ。


興味を引かれた。


「また何か考えてますね」


リリスが言う。


「考えている」


「でしょうね」


最近は分かりやすい。


強敵を見つけると機嫌が良くなる。


困ったダンジョンマスターだった。


その時。


アルベルトの視線が止まる。


【昇格挑戦戦】


その文字だった。


リリスが嫌な予感を覚える。


非常に。


「まさか」


「なんだ」


「挑戦する気ですか?」


アルベルトは答えなかった。


代わりに画面を押した。


沈黙。


リリスは頭を抱える。


「聞くまでもありませんでした」


――――――


画面が展開される。


【昇格挑戦戦】


【挑戦可能】


【勝利時順位上昇】


【敗北時ペナルティあり】


アルベルトが首を傾げる。


「ランキング戦まで五日だろう」


「はい」


「なら待てばいいのではないか」


リリスは頷く。


普通ならそうする。


「定期ランキング戦は三十日ごとに開催されます」


「知っている」


「新人リーグのほとんどはそちらで順位を上げます」


安全だからだ。


順位変動は比較的緩やか。


一度負けた程度で致命傷にはなりにくい。


だが。


リリスは昇格挑戦戦の説明欄を指差した。


「こちらは別です」


「別か」


「条件を達成したダンジョンだけが挑戦できます」


アルベルトは続きを待つ。


「勝てば大幅順位上昇」


「ほう」


「負ければDP減少」


「なるほど」


定期試験と飛び級試験。


そんな違いだった。


「だから普通はやりません」


リリスが断言する。


「危険だからです」


アダプトナイトゴブリンも頷いた。


「危険」


珍しく二人の意見が一致する。


しかし。


アルベルトは画面から目を離さない。


「だが」


嫌な予感。


「早く上へ行ける」


予想通りだった。


「言うと思いました」


リリスは深いため息を吐いた。


――――――


アルベルトは候補一覧を開く。


様々なダンジョン名が並ぶ。


そして。


ある名前で止まった。


【947位】


【岩牙の巣】


「近いな」


「近いですね」


現在954位。


十分に射程圏だった。


「戦力は?」


リリスが情報を開く。


「ゴブリン系中心です」


「ほう」


「数が多いですね」


映像が展開される。


洞窟型。


大量のゴブリン。


ホブゴブリン。


さらに上位個体らしき姿も見える。


統率も悪くない。


「またゴブリンか」


アルベルトが呟く。


少し懐かしい。


ホブゴブリンロードとの戦いを思い出していた。


――――――


その時。


森護兵将が現れた。


忘れられた洞窟最強戦力の一角。


「主」


「なんだ」


「挑む?」


「候補だ」


森護兵将は映像を見る。


しばらく考える。


そして答えた。


「五分」


管理室が静まる。


高い。


かなり高い。


以前の忘れられた洞窟では考えられない数字だった。


リリスも戦力表を開く。


シャドウリーパー。


森護兵将。


アダプトナイトゴブリン。


プニシャドウ。


スライム隊。


確かに強くなった。


「成長しましたね」


「したな」


アルベルトも認める。


――――――


その時だった。


「ぷに!」


プニシャドウが机へ飛び乗る。


ぺちぺち。


管理画面を叩く。


「あ」


リリスが固まる。


別の画面が開いた。


【挑戦履歴】


忘れられた洞窟の過去の記録だった。


――――――


【二十七年前】


昇格挑戦戦


敗北


――――――


【二十七年前】


昇格挑戦戦


敗北


――――――


【二十六年前】


昇格挑戦戦


敗北


――――――


沈黙。


誰も喋らない。


アルベルトが画面を見る。


リリスも見る。


アダプトナイトゴブリンも見る。


さらに下へ。


――――――


【三十年前】


昇格挑戦戦


勝利


順位大幅上昇


――――――


管理室が静まり返った。


三十年前。


忘れられた洞窟は今より強かった。


少なくとも。


昇格挑戦戦に勝てるほどには。


「昔の記録か」


アルベルトが呟く。


リリスは画面を見つめていた。


なぜか。


胸の奥が少しざわつく。


三十年前。


その数字だけが妙に引っ掛かった。


「どうした」


「いえ……」


リリスは首を振る。


理由は分からない。


だが。


何かを忘れている気がした。


――――――


「ぷに?」


プニシャドウが首を傾げる。


本人は何も分かっていない。


ただ画面を叩いただけ。


だが。


その偶然は。


忘れられた洞窟の過去へ繋がる小さな扉を開いていた。


――――――


アルベルトは立ち上がる。


「挑戦するのですか?」


リリスが聞く。


アルベルトは947位の岩牙の巣を見る。


そして。


941位の断鎌の森を見る。


まだ遠い。


だが。


近付くことはできる。


「準備をする」


即答だった。


リリスは再びため息を吐く。


予想通り。


完全に予想通りだった。


ランキング戦まで五日。


忘れられた洞窟は初めての昇格挑戦戦へ向けて動き始める。


その先に待つのは勝利か。


敗北か。


まだ誰にも分からなかった。

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