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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第68話 断鎌の森

ランキング戦まで六日。


忘れられた洞窟。


管理室。


アルベルトは管理画面を見つめていた。


現在順位。


【954位】


ここ数日の成長は順調だった。


森護兵将の誕生。


大成功配合。


冒険者増加。


昇格挑戦戦の解放。


忘れられた洞窟は確実に強くなっている。


だが。


アルベルトの視線は順位のさらに上へ向いていた。


950位台。


940位台。


新人リーグ上位。


そこにはまだ見ぬ強敵達がいる。


「また何か考えてますね」


リリスが言う。


「考えている」


「でしょうね」


最近は分かりやすい。


強敵を見つけると機嫌が良くなる。


困ったダンジョンマスターだった。


その時。


管理室へアダプトナイトゴブリンが入ってきた。


表情は真剣。


何かあったらしい。


「主殿」


「なんだ」


「発見」


短い。


だが。


重要な報告の時はいつもこうだった。


地図が広げられる。


北部森林地帯。


以前。


支配領域拡張の際に発見した場所。


巨大な切断痕。


不自然に倒れた樹木。


マンティス系魔物の痕跡。


そして。


近くにダンジョンが存在する可能性。


アルベルトは思い出した。


「あれか」


「そう」


アダプトナイトゴブリンが頷く。


「見つかった」


管理画面が光る。


【周辺ダンジョン確認】


【断鎌の森】


ついに名前が表示された。


リリスも身を乗り出す。


「本当にあったんですね」


「あったな」


予想はしていた。


だが。


実際に見つかると話は別だった。


さらに情報が表示される。


【初回確認時順位】


969位


【現在順位】


941位


沈黙。


「上がってますね」


「上がっているな」


「かなりです」


二十八ランク上昇。


忘れられた洞窟と同じ。


いや。


上昇幅だけなら相手の方が大きい。


アルベルトの目が少し細くなる。


面白そうだった。


リリスは嫌な予感がした。


――――――


映像が展開される。


深い森。


巨大な樹木。


複雑な地形。


そして。


無数の気配。


最初に現れたのはマンティスだった。


鋭い鎌。


緑色の外骨格。


俊敏な動き。


【フォレストマンティス】


一体。


二体。


三体。


十体。


さらに奥にもいる。


「多いですね」


リリスが呟く。


「群れ型」


アダプトナイトゴブリンが分析する。


確かに似ていた。


ホブゴブリンロード。


白骨の墓所。


強いダンジョンは統率を持つ。


それが最近のアルベルトの結論だった。


映像はさらに奥へ進む。


森の中央。


巨大な古木。


その上にいた。


黄金色の鎌。


黒い外骨格。


巨大な身体。


周囲の個体より明らかに大きい。


【ゴールドマンティスロード】


【ダンジョンボス】


管理室が静まり返る。


強い。


それだけは分かる。


画面越しでも伝わる圧力だった。


「勝てるか」


アルベルトが聞く。


アダプトナイトゴブリンは即答した。


「無理」


「即答だな」


「今は無理」


リリスも頷く。


同意見だった。


941位。


新人リーグ上位。


伊達ではない。


――――――


その時。


「ぷに!」


プニシャドウが画面へ飛び付いた。


ぺたり。


ゴールドマンティスロードを指差す。


「ぷに!」


挑戦する気らしい。


たぶん何も考えていない。


「やめてください」


リリスが回収した。


「ぷにぃ……」


不満そうだった。


森護兵将が苦笑しているように見えた。


――――――


アルベルトは映像を見続ける。


その時だった。


管理画面の下部に新しい表示が現れた。


【管理者存在確認】


沈黙。


「管理者?」


アルベルトが呟く。


リリスも目を細める。


さらに表示。


【ダンジョンマスター】


【詳細非公開】


管理室が静まり返る。


ダンジョンマスター。


つまり。


誰かがこのダンジョンを管理している。


「同期か」


アルベルトが聞く。


「分かりません」


リリスは首を振った。


「先輩か」


「それも分かりません」


「自然発生は?」


「可能性はあります」


誰も断定できなかった。


卒業生は全順位帯にいる。


上位ダンジョンへ配属された同期もいる。


長年運営している先輩もいる。


自然発生ダンジョンの可能性もある。


情報が足りなかった。


「なるほど」


アルベルトは頷く。


「正体不明か」


「はい」


リリスも画面を見る。


そして。


あることに気付いた。


「でも」


「なんだ」


「少し似ています」


「何がだ」


断鎌の森の順位推移。


969位。



941位。


忘れられた洞窟。


998位。



954位。


異常な速度で順位を上げている。


普通ではない。


「何かやっている」


アルベルトが呟く。


「私もそう思います」


偶然とは思えなかった。


強力な魔物。


特殊な戦術。


あるいは。


アルベルトの配合のような何か。


理由があるはずだった。


――――――


アルベルトは静かに笑う。


本当に僅かに。


「面白いな」


リリスが頭を抱えた。


「そうなると思いました」


「気になる」


「でしょうね」


「正体も」


「でしょうね」


「戦力も」


「でしょうね」


全部予想通りだった。


もう止まらない。


アルベルトの中で断鎌の森は完全に目標になっていた。


941位。


断鎌の森。


ゴールドマンティスロード。


そして。


正体不明のダンジョンマスター。


忘れられた洞窟が次に越えるべき壁。


ランキング戦まで六日。


新人リーグ上位への戦いが、静かに動き始めていた。

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