第64話 ぷに幹部会議
防衛戦勝利の翌日。
忘れられた洞窟は少しだけ騒がしかった。
理由は一つ。
プニシャドウである。
「ぷに!」
朝から元気だった。
非常に元気だった。
そして。
少し大きくなっていた。
「また大きくなってません?」
リリスが言う。
「なっているな」
昨日まで子犬くらい。
今は大型犬くらい。
それでもまだ丸い。
ぷにぷにしている。
威厳はない。
全くない。
「ぷに!」
得意げだった。
――――――
管理室。
今日は初めての幹部会議だった。
参加者。
アルベルト。
リリス。
アダプトナイトゴブリン。
アイアンシャドウウルフ。
そして。
なぜか。
プニシャドウ。
「ぷに!」
椅子の上で震えている。
「なんでいるんですか」
リリスが聞いた。
アルベルトは答える。
「勝手に入ってきた」
正確だった。
追い出しても戻ってくる。
三回追い出した。
三回戻ってきた。
諦めた。
「ぷに」
満足そうだった。
アダプトナイトゴブリンがため息を吐く。
最近増えた癖だった。
「主殿」
「なんだ」
「会議」
「そうだな」
「真面目に」
「しているぞ」
していなかった。
アルベルトは配合候補を見ていた。
――――――
現在順位。
954位。
次の目標。
951位《黒霧砦》。
さらに。
950位突破。
目前だった。
「戦力は十分です」
リリスが言う。
「ただし前衛不足は継続」
アダプトナイトゴブリンも補足する。
軍団規模は拡大している。
しかし。
まだ数が足りない。
「なら増やすか」
アルベルトが言う。
リリスが嫌な顔をする。
アダプトナイトゴブリンも嫌な顔をする。
最近よく見る光景だった。
「配合ですか」
「配合」
「成功率は」
「六十四%」
沈黙。
微妙だった。
高くもない。
低くもない。
だから危険だった。
「内容は?」
リリスが聞く。
アルベルトが画面を見せる。
【レッドファングロード】
【フォレストウルフ】
成功率64%
予測結果
【紅森狼】
「悪くないですね」
珍しくリリスが賛成した。
軍団向き。
前衛向き。
失敗しても被害は限定的。
「主殿」
アダプトナイトゴブリンも頷く。
「許可」
「おお」
初めて許可が出た。
アルベルトは少し嬉しそうだった。
――――――
配合開始。
光が溢れる。
久しぶりの本格配合。
緊張が走る。
プニシャドウだけはよく分かっていなかった。
「ぷに?」
光を見ている。
綺麗だった。
数十秒後。
通知。
【特殊配合成功】
成功。
巨大な狼が現れる。
赤い毛並み。
森林色の模様。
鋭い牙。
力強い体躯。
【紅森狼】
【希少種】
【特性】
・群れ強化
・森林適応
・高速移動
・連携補正
「当たりですね」
リリスが頷く。
「当たり」
アダプトナイトゴブリンも評価する。
軍団向き。
非常に軍団向き。
忘れられた洞窟らしい配合だった。
その時。
「ぷに!」
プニシャドウが近付く。
紅森狼を見る。
紅森狼も見る。
数秒。
そして。
ぺたっ。
プニシャドウが紅森狼の頭に乗った。
沈黙。
紅森狼も固まる。
降ろそうとする。
しかし。
プニシャドウが落ちない。
吸い付いている。
「ぷに」
満足そうだった。
「何をやっているんですか」
リリスが呆れる。
「ぷに」
説明はなかった。
――――――
その頃。
外の世界。
冒険者ギルド。
最近。
忘れられた洞窟の話題が増えていた。
「また勝ったらしいぞ」
「防衛戦も勝利」
「軍団型なんだろ?」
「らしい」
酒場でも。
掲示板でも。
少しずつ名前が知られ始める。
まだ有名ではない。
だが。
確実に認識され始めている。
954位。
忘れられた洞窟。
急成長中のダンジョンとして。
――――――
夜。
管理室。
アルベルトが資料を見ていた。
リリスも隣にいる。
アダプトナイトゴブリンもいる。
そして。
プニシャドウもいる。
なぜかいる。
「ぷに」
机の上で寝ていた。
ぷるぷる揺れている。
平和だった。
しかし。
その時。
通知が現れる。
【注目ダンジョン認定候補】
【条件達成率 83%】
全員が固まる。
「ん?」
アルベルトが読む。
リリスも読む。
アダプトナイトゴブリンも読む。
急成長。
特殊配合。
軍団育成。
防衛成功。
複数条件達成。
どうやらシステムが忘れられた洞窟を注目し始めたらしい。
「主殿」
「なんだ」
「面倒」
「面倒ですね」
珍しくリリスと意見が一致した。
その横で。
プニシャドウが寝返りを打つ。
ころん。
机から落ちる。
どさっ。
「ぷにぃ……」
起きた。
そしてまた寝た。
全員が見た。
そして。
少しだけ笑った。
忘れられた洞窟は強くなっている。
だが。
相変わらず変なダンジョンだった。




