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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第62話 黒いスライムの噂

「忘れられた洞窟には変な黒いスライムがいる」


そんな噂が流れ始めて数日。


当然。


アルベルトは知らなかった。


興味もなかった。


今の彼の興味は別にある。


「主殿」


アダプトナイトゴブリンが呼ぶ。


「なんだ」


「順位」


「ん?」


画面を見る。


現在順位。


954位。


そのすぐ上。


952位。


951位。


950位。


近い。


非常に近い。


「行けそうだな」


アルベルトが呟く。


その瞬間。


リリスとアダプトナイトゴブリンが同時に嫌な顔をした。


「主殿」


「なんだ」


「その顔は危険」


「危険です」


完全に読まれている。


アルベルトは少し咳払いした。


「昇格挑戦戦だ」


「やはり」


「やっぱり」


最近の二人は息が合いすぎていた。


――――――


その頃。


訓練場。


プニシャドウは今日も元気だった。


「ぷに!」


ぽよん。


「ぷに!」


ぽよん。


「ぷに!」


ころん。


転んだ。


見事だった。


ナイトレイヴンウルフが呆れた目で見ている。


しかし。


プニシャドウは気にしない。


そのまま転がりながら移動する。


ころころ。


ころころ。


そして。


偶然。


訓練中だったフォレストウルフの足元へ。


どん。


フォレストウルフが転ぶ。


さらに後ろのウルフも転ぶ。


連鎖。


五体まとめて転ぶ。


大惨事だった。


沈黙。


プニシャドウも固まる。


「ぷに?」


何が起きたか分かっていない。


そこへ。


アダプトナイトゴブリンが現れた。


「……」


「ぷに」


「問題児」


初めてそんな評価を受けた。


――――――


夕方。


管理室。


アルベルトは挑戦相手を調べていた。


951位《黒霧砦》


霧属性中心。


奇襲型。


隠密型。


忘れられた洞窟とは少し似たタイプだ。


「相性は悪くありませんね」


リリスが言う。


「むしろ良い」


アダプトナイトゴブリンも同意する。


防御特化より戦いやすい。


問題は。


相手も知能型だということ。


「軍団戦になるな」


アルベルトが言う。


「望むところ」


アダプトナイトゴブリンの目が鋭くなる。


最近。


少しずつ変化していた。


配合だけではない。


戦いも好きになってきている。


「主殿」


「なんだ」


「勝利確率」


「どれくらいだ」


「六十八%」


悪くない。


かなり高い。


その時だった。


訓練場の方から悲鳴が聞こえる。


全員が振り返る。


またか。


三人ともそう思った。


外へ出る。


そこには。


巨大化したプニシャドウがいた。


「……」


「……」


「……」


少し目を離した隙に。


二倍くらいになっていた。


原因は明白だった。


近くには空になった魔力結晶箱。


「食べたのか」


「ぷに!」


胸を張る。


全く反省していない。


通知が表示される。


【プニシャドウ】


成長率35%



48%


沈黙。


リリスが頭を抱える。


「成長速度おかしくないですか?」


「おかしい」


「異常」


満場一致だった。


しかも。


身体が大きくなったせいで。


ぷにぷに感も増していた。


歩く。


揺れる。


跳ねる。


揺れる。


止まる。


揺れる。


「ぷに」


可愛かった。


非常に。


「主殿」


「なんだ」


「少し可愛い」


アダプトナイトゴブリンが真顔で言った。


リリスが吹き出す。


「認めましたね」


「事実」


プニシャドウが得意げに震える。


「ぷにー!」


褒められたと思ったらしい。


その直後。


勢いよく跳ねる。


天井にぶつかる。


落ちる。


転がる。


壁に激突。


「ぷにぃ……」


やっぱりポンコツだった。


――――――


その夜。


冒険者ギルド。


若い冒険者達が噂話をしていた。


「知ってるか?」


「何を?」


「忘れられた洞窟」


またその名前だ。


最近よく聞く。


「魔物が軍隊みたいに動くらしい」


「知ってる」


「幹部がいるらしい」


「知ってる」


「黒いスライムもいるらしい」


「……は?」


空気が止まる。


軍隊。


幹部。


そこまでは分かる。


だが。


黒いスライム。


意味が分からない。


誰も知らない。


その黒いスライムが。


後に忘れられた洞窟の象徴の一つになることを。


そして。


翌日。


アルベルトはついに決断する。


951位《黒霧砦》への昇格挑戦戦。


忘れられた洞窟は再び上位へ挑む。


新人リーグ卒業を決めた勢いは、まだ止まっていなかった。

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