↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/223

第6話 勝ち筋

忘れられた洞窟へ戻った頃には、空はすっかり赤く染まっていた。


洞窟へ入るなり、アルベルトは真っ先にダンジョンコアの前へ向かった。


「お疲れ様でしたー……」


リリスはその場に座り込む。


精神的な疲労が大きい。


敵地の近くまで行かされるとは思わなかった。


しかも。


「普通、偵察ってもっと安全にやるものじゃないですか?」


「そうなのか?」


「そうなんです」


アルベルトは首を傾げた。


本気で分かっていない顔だった。


リリスは諦めた。


この人に常識を期待してはいけない。


⸻


アルベルトは机代わりの岩へノートを広げる。


学園時代から使い続けている研究ノートだ。


既に何冊も使い潰している。


「何してるんです?」


「整理だ」


「偵察結果ですか?」


「ああ」


リリスも興味が湧いた。


隣へ座る。


アルベルトがペンを走らせる。


⸻


《灰色の穴蔵》


推定環境


・乾燥型


・岩盤主体


・坑道系ダンジョン


⸻


確認魔物


・ゴブリン亜種


⸻


推定戦力


・ゴブリン系複数


・コボルト系統あり


・採掘特化魔物あり


⸻


リリスが首を傾げた。


「推定が多いですね」


「当然だ」


「当然なんですか?」


「中に入っていないからな」


それはそうだった。


しかし。


リリスには疑問がある。


「でもコボルトなんて見てませんよ?」


アルベルトはペンを止める。


「毛があった」


「毛?」


「茶色い毛」


「ああ」


確かに見た。


木に引っかかっていた。


だが。


それだけで種族まで分かるものなのだろうか。


「コボルトの冬毛だ」


「分かるんですか?」


「分かる」


即答だった。


リリスは聞く相手を間違えた気がした。


⸻


アルベルトは次のページを開く。


そこには簡単な地図が描かれていた。


敵ダンジョン周辺の地形である。


「見ろ」


「はい」


「足跡があった」


「はい」


「外へ向かうものが多い」


「はい」


「つまり巡回している」


「なるほど?」


「縄張り意識が強い証拠だ」


リリスは何となく頷く。


少しだけ分かる気がした。


「あと、採掘痕もある」


「採掘痕?」


「岩壁」


アルベルトは地図の一角を指差した。


「削れていた」


「そんなところまで見てたんですか」


「当然だ」


当然ではない。


普通は見ない。


⸻


アルベルトは続ける。


「つまり」


「つまり?」


「灰色の穴蔵は採掘型ダンジョンだ」


リリスは首を傾げた。


「それって重要なんです?」


「重要だ」


アルベルトは頷く。


「採掘型は数を揃えやすい」


「へぇ」


「だが強い個体は少ない」


「どうしてです?」


「戦闘より労働向きだからな」


リリスは少し感心した。


なるほど。


言われてみればそうだ。


鉱石を掘るなら大量の魔物が必要になる。


つまり。


一体一体は弱くても数が増える。


⸻


「じゃあ相手は大軍?」


「恐らく」


「うわぁ……」


ただでさえ不利なのに。


数まで負けているらしい。


⸻


アルベルトは自軍の戦力を書き出した。


⸻


スライム三体


ゴブリン一体


リリス一人


⸻


以上。


見事なまでに少ない。


「改めて見ると酷いですね」


「酷いな」


「否定してくださいよ」


否定できなかった。


⸻


しばらく沈黙する。


リリスは考える。


相手は大軍。


こちらは少数。


どうするのだろう。


その時。


アルベルトが言った。


「数では勝てない」


「そうですね」


「なら質を上げる」


「……配合ですか」


アルベルトが頷く。


ようやく話が繋がった。


偵察した理由。


敵を分析した理由。


全てここへ繋がる。


⸻


普通のダンジョンなら。


ゴブリンを増やす。


スライムを増やす。


数を揃える。


しかし忘れられた洞窟には時間がない。


ランキング戦まで二日。


今から繁殖を待つ余裕もない。


ならば。


少ない戦力を強化するしかない。


⸻


アルベルトはゴブリンを見る。


最後の一体。


貴重な戦力だ。


失えば後がない。


リリスも理解していた。


だからこそ聞く。


「失敗したら?」


「戦力が減る」


「ですよね」


「かなり困る」


「ですよね」


それでもアルベルトは迷わない。


理由がある。


⸻


彼はゴブリンの前へしゃがみ込む。


配合眼が発動した。


情報が浮かぶ。


⸻


ゴブリン


筋力E


知能E


適応力C


成長性E


⸻


スライム


再生能力D


柔軟性C


魔力E


⸻


リリスには見えない情報。


だが。


実際にアルベルトが見ているのはそれだけではなかった。


彼の頭の中には。


何百冊もの資料。


論文。


生態記録。


失敗事例。


成功例。


それらが蓄積されている。


⸻


適応力。


再生能力。


環境耐性。


生存能力。


肉体構造。


⸻


点と点が繋がる。


「大丈夫だ」


アルベルトが言った。


「成功する」


「何でです?」


「相性が良い」


「だから何で分かるんです?」


アルベルトは少し考える。


説明が難しい。


感覚ではない。


だが理論を説明できるほど整理されてもいない。


だから。


「経験だな」


「絶対違いますよね?」


リリスが即座に言った。


学園を卒業したばかりの男の経験で説明できる話ではない。


⸻


アルベルトは立ち上がる。


そして。


ダンジョンコアへ手を伸ばした。


「始めるぞ」


洞窟が静まり返る。


ゴブリン。


スライム。


二体の魔物が光に包まれた。


戦力を賭けた配合。


ランキング戦まで残り二日。


忘れられた洞窟の未来は。


今、この一回に懸かっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。