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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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54/106

第54話 最初の幹部

昇格挑戦戦まで残り一日。


忘れられた洞窟では珍しく配合が行われていなかった。


理由は単純。


「我慢しているんですね」


リリスが言う。


「ああ」


「奇跡です」


「失礼だな」


アルベルトは不満そうだった。


だが今回は本当に我慢していた。


グレイファングロードの配合候補。


成功率82%。


非常に魅力的だった。


しかし今は昇格挑戦戦直前。


戦力を減らすリスクは負えない。


「勝ってからだな」


「その判断ができるようになっただけ成長です」


「俺を何だと思っている」


「配合中毒者です」


否定できなかった。


その時だった。


洞窟内に通知音が響く。


【個体進化条件達成】


【対象個体:アダプトジェルゴブリン】


二人が同時に振り向く。


「来たか」


「来ましたね」


アダプトジェルゴブリン。


忘れられた洞窟初期から戦い続けてきた古参。


ホブゴブリンとジェルスライムの特性を受け継ぎ、何度も死線を潜り抜けてきた個体だ。


通知が続く。


【戦闘経験値蓄積】


【適応進化解放】


【進化先選択可能】


「選択式ですか」


リリスが目を見開く。


今までの進化とは違う。


画面には三つの進化先が表示されていた。


【アダプトウォーゴブリン】


前衛戦闘特化


【アダプトシャーマンゴブリン】


支援・魔法特化


【アダプトナイトゴブリン】


指揮・統率特化


アルベルトは黙って眺める。


どれも悪くない。


戦力不足の今ならウォーゴブリンも魅力的だ。


支援役も欲しい。


だが。


リリスも同じ結論だった。


「ナイトですね」


「ああ」


今の忘れられた洞窟に足りないもの。


それは戦力ではない。


指揮官だ。


シャドウリーパーは単独行動。


鋼影狼はエース。


ナイトレイヴンウルフはまだ幼体。


部隊を率いる存在がいない。


「決まりだな」


アルベルトが選択する。


光が溢れる。


アダプトジェルゴブリンが包まれる。


その姿が変わっていく。


筋肉質だった体格が引き締まる。


装甲のような皮膚が形成される。


目つきが鋭くなる。


そして腰には骨剣。


背には黒いマントのような皮膜。


数秒後。


光が消えた。


そこに立っていたのは。


もはや普通のゴブリンではなかった。


【アダプトナイトゴブリン】


【レア度:希少種】


【特性】


・適応進化


・部隊指揮


・戦術補正


・集団強化


・経験共有


「おお」


アルベルトが素直に感心する。


リリスも驚いていた。


最後の項目。


経験共有。


それが特に異常だった。


「これ……」


「ああ」


配下が戦えば戦うほど。


部隊全体の成長効率が上がる。


群れ運営向き。


まさに幹部だった。


その時。


アダプトナイトゴブリンが膝をつく。


アルベルトへ頭を下げた。


忠誠の意思表示。


最初期から共に戦ってきた古参らしい態度だった。


「偉くなりましたね」


「最初はゴブリンだったからな」


「最初はホブゴブリンに怯えてましたよ」


懐かしい話だった。


今ではそのホブゴブリンすら配下として率いられる。


成長したものだ。


だが。


通知は終わらなかった。


【条件達成】


【幹部システム解放】


二人が固まる。


「ん?」


「また新機能です」


画面が切り替わる。


今まで存在しなかった項目。


【幹部任命】


【部隊編成】


【軍団補正】


「なるほど」


アルベルトの目が輝く。


リリスは嫌な予感しかしない。


「何を考えてます?」


「組織化だな」


やっぱりだった。


今までの忘れられた洞窟は強い魔物を増やしてきた。


だがこれからは違う。


軍になる。


部隊になる。


指揮系統が生まれる。


アダプトナイトゴブリンはその第一号だった。


そして。


幹部システムの最下部。


見慣れない項目が表示される。


【第二幹部解放条件】


【昇格挑戦戦勝利】


沈黙。


アルベルトとリリスが顔を見合わせる。


「分かりやすいですね」


「ああ」


システムが言っている。


次へ進みたければ勝て、と。


昇格挑戦戦まで残り一日。


970位《忘れられた洞窟》。


新人リーグ卒業への道は、いよいよ大きく動き始めていた。

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