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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第50話 新種の欠点

世界初個体。


その言葉の響きは魅力的だった。


だが。


「動かないな」


「動きませんね」


誕生から三十分後。


アルベルトとリリスは新種の前で腕を組んでいた。


巨大な黒い魔物。


鋼のような毛並み。


漆黒の翼。


圧倒的な存在感。


しかし。


動かない。


微動だにしない。


「置物ですね」


「置物だな」


世界初の置物が誕生していた。


【名称未設定】


【成長率:極高】


【潜在能力:極高】


【現在状態:幼体】


「幼体?」


アルベルトが眉をひそめる。


どう見ても大きい。


鋼影狼より大きい。


アースベア級の体格がある。


だがシステムは幼体と表示している。


リリスが情報を開く。


そして。


「あー……」


嫌そうな顔になった。


「どうした」


「見ない方が幸せかもしれません」


「見せろ」


リリスは諦めて画面を出した。


【成長必要DP】


【10,000】


沈黙。


二人とも黙った。


もう一度見る。


10,000。


見間違いではない。


「高いな」


「高いですね」


「高すぎるな」


「高すぎますね」


忘れられた洞窟の現在保有DPを超えていた。


つまり。


育成できない。


「なるほど」


アルベルトが頷く。


「欠陥だな」


「言い方」


せっかく世界初個体を作ったのに育てられない。


本末転倒である。


しかも問題はそれだけではなかった。


【召喚維持コスト】


【通常魔物の15倍】


「高い」


「高いです」


【食料消費】


【通常魔物の22倍】


「高いな」


「高いですね」


【管理難度】


【極高】


「帰っていいですか?」


「駄目だ」


リリスは頭を抱えた。


世界初個体。


聞こえは良い。


だが実態は超高級品だった。


新人リーグのダンジョンが持つには早すぎる。


そんな存在である。


その時。


黒い魔物が初めて動いた。


ゆっくりと顔を上げる。


赤い瞳。


異様な威圧感。


そして。


アルベルトに近付く。


リリスが警戒する。


しかし攻撃はしなかった。


代わりに。


ぐい。


頭を押し付ける。


「……」


「……」


もう一回。


ぐい。


「甘えてますね」


「甘えているな」


威厳が一瞬で消えた。


世界初個体。


超高コスト。


圧倒的な潜在能力。


そして。


妙に懐いている。


「犬ですね」


「犬だな」


翼付きだが。


その後。


正式な解析結果が表示された。


【名称:ナイトレイヴンウルフ】


【レア度:伝説級候補】


【特性】


・飛行


・影歩き


・夜間強化


・成長型


・群れ指揮


リリスが固まった。


「待ってください」


「どうした」


「伝説級候補って何ですか」


「伝説級候補だな」


「見れば分かります」


新人リーグで見る表示ではない。


少なくとも970位が持つ魔物ではなかった。


だからこそ。


次の一文が重かった。


【推奨保有順位】


【500位以上】


沈黙。


「無理ですね」


「ああ」


完全に早すぎた。


500位以上。


つまり中級リーグ上位クラス。


今のアルベルトには扱い切れない。


だが。


同時に希望でもある。


「育てれば強いな」


「育てればですね」


「そのために上へ行く」


アルベルトが言う。


リリスは少し笑った。


そうだった。


この男は昔から変わらない。


無理だと言われるほど燃える。


扱えないと言われるほど欲しがる。


そして大体成功する。


だから厄介なのだ。


その時。


新しい通知が表示された。


【昇格挑戦戦開催まで残り3日】


アルベルトが目を細める。


リリスも表情を引き締める。


いよいよだ。


新人リーグ卒業への近道。


950位台への挑戦。


そしてその先にある900位の壁。


アルベルトは眠っているナイトレイヴンウルフを見る。


「まずは勝つか」


「そうですね」


世界初個体を育てるためにも。


忘れられた洞窟は、さらに上を目指さなければならなかった。

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