第42話 森林戦
特殊昇格戦まで七日。
忘れられた洞窟は着実に戦力を増やしていた。
冒険者も増えた。
DPも増えた。
配合も成功した。
順調と言えば順調だった。
だが。
970位という壁は、今までとは別格だった。
◇
その日の朝。
ダンジョンコアが光る。
新しい通知。
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特殊昇格戦情報公開
⸻
アルベルトとリリスが同時に確認する。
⸻
対戦相手
970位
翠緑の樹海
支配魔物
フォレストウルフキング
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戦場地形
森林地帯
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特殊効果
獣系魔物能力微上昇
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沈黙。
数秒後。
リリスが言った。
「最悪ですね」
「最悪だな」
アルベルトも同意した。
◇
森林。
狼。
獣系強化。
完全に相手の庭だった。
「嫌がらせですか?」
「たぶん違う」
「本当ですか?」
「たぶん」
リリスは信用しなかった。
◇
しかし。
嘆いても仕方ない。
アルベルトはすぐに思考を切り替える。
「確認するぞ」
「何をです?」
「戦力だ」
◇
現在戦力。
⸻
シャドウリーパー ×1
シャドウウルフ ×1
ジェルウルフ ×1
シャドウスライム ×1
ビッグスライム ×2
フォレストウルフ ×7
スライム ×12
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リリスが腕を組む。
「改めて見ると変な集団ですね」
「そうか?」
「狼とスライムが半々です」
「確かに」
◇
ジェルウルフがぷるぷるしている。
フォレストウルフが距離を取っている。
仲が良いのか悪いのか分からない。
◇
「相手は?」
リリスが聞く。
アルベルトは情報を表示する。
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フォレストウルフ ×39
ハイフォレストウルフ ×8
フォレストウルフキング ×1
⸻
「多い」
「多いな」
「かなり多い」
「かなり多いな」
二人は現実逃避をやめた。
◇
問題はフォレストウルフキングだった。
群れを率いる王。
そして単体でも強い。
ホブゴブリンロードとは違う。
指揮官でありながら前線にも立つ。
厄介極まりない。
◇
「暗殺します?」
リリスが言う。
「できればな」
「できないんですね」
「ああ」
アルベルトは素直に認めた。
◇
森林地帯。
視界不良。
相手も狼。
シャドウリーパーの奇襲が通る保証はない。
むしろ返り討ちの可能性もある。
◇
「珍しいですね」
「何がだ」
「アルベルトさんが慎重です」
「強いからな」
◇
リリスは少し笑う。
実はこれが珍しい。
今までのアルベルトは、
配合する。
突っ込む。
勝つ。
だった。
◇
だが。
今回だけは違う。
970位。
特殊昇格戦。
初めて本格的な壁に当たっている。
◇
その後。
二人は何日も作戦を練った。
敵の特徴。
群れの行動。
地形。
能力。
徹底的に分析する。
◇
そんな中。
アルベルトは一つの結論に辿り着いた。
「勝負はキングじゃないな」
「え?」
リリスが顔を上げる。
◇
「キングを倒せば勝ちじゃない」
「そうですね」
「問題は群れだ」
◇
フォレストウルフキングを倒しても。
狼三十九体。
ハイフォレストウルフ八体。
それらは残る。
◇
「つまり?」
「数を減らす」
アルベルトが答える。
◇
リリスは目を瞬かせる。
「普通ですね」
「普通だな」
「もっと変な作戦かと思いました」
「失礼だな」
「毎回変な作戦でしょう」
反論できなかった。
◇
さらに三日。
戦力強化。
配置訓練。
連携確認。
やれることは全てやった。
◇
そして。
特殊昇格戦前日。
ダンジョンコアが光る。
⸻
特殊昇格戦
開始まで24時間
⸻
◇
その夜。
リリスがふと尋ねる。
「勝てそうですか?」
静かな広間。
アルベルトは少し考える。
◇
「分からん」
珍しい答えだった。
◇
「おお」
リリスが驚く。
「そんなにですか」
「ああ」
◇
勝てるかもしれない。
負けるかもしれない。
正直半々だった。
◇
だが。
アルベルトは不思議と楽しそうだった。
「研究者ですね」
「何がだ」
「強敵が好きなんですよ」
「否定はしない」
◇
翌朝。
ダンジョンコアが輝き始める。
ついにその時が来た。
⸻
特殊昇格戦
開始
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白い光。
転移。
視界が塗り潰される。
◇
そして。
次の瞬間。
景色が変わった。
◇
森。
巨大な木々。
深い茂み。
倒木。
岩場。
どこを見ても森林だった。
◇
対面。
狼の群れ。
数十体。
圧倒的な数。
◇
そして中央。
銀色の巨体。
フォレストウルフキング。
◇
ガオオオオオオオオ!!
咆哮が響く。
森全体が震えた。
◇
リリスが顔を引きつらせる。
「大きいですね」
「ああ」
「思ったより大きいですね」
「ああ」
「帰ります?」
「帰れない」
「ですよね」
◇
戦闘開始まで十秒。
カウントダウンが始まる。
◇
10
9
8
◇
アルベルトは周囲を観察する。
地形。
敵配置。
逃げ道。
障害物。
全て記憶する。
◇
5
4
3
◇
リリスが小さく笑った。
「いつもの顔ですね」
「そうか?」
「何か思い付いた顔です」
◇
アルベルトの口元が少し上がる。
否定しない。
つまり当たりだった。
◇
2
1
0
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戦闘開始
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狼の群れが一斉に駆け出す。
970位。
翠緑の樹海。
フォレストウルフキング。
忘れられた洞窟最大の戦いが幕を開けた。




