第41話 禁忌と新配合
新人冒険者襲来から三日後。
忘れられた洞窟は少しだけ忙しくなっていた。
理由は単純。
冒険者が増えたのだ。
◇
「また来ました」
リリスが報告する。
「今度は二人組か」
「見習いですね」
入口では新人冒険者二人がスライムと格闘していた。
そして十分後。
泣きそうな顔で撤退していった。
⸻
DP獲得
80
⸻
「また増えた」
アルベルトが呟く。
「いいお客様ですね」
「その言い方はどうなんだ」
「事実です」
◇
その一週間。
忘れられた洞窟には合計七組の冒険者が来た。
全員新人。
全員生存。
全員撤退。
結果。
DPは大幅に増えた。
◇
そして。
アルベルトはそのDPを全て使った。
「やっぱりそうなりますよね」
リリスはもう驚かない。
召喚。
召喚。
召喚。
フォレストウルフが増えていく。
◇
現在戦力。
⸻
シャドウリーパー ×1
シャドウスライム ×2
ビッグスライム ×3
スライム ×12
フォレストウルフ ×8
⸻
かなり増えた。
特にフォレストウルフ。
初の獣系戦力である。
◇
「そろそろですね」
「ああ」
アルベルトの目が光る。
配合の時間だった。
◇
候補は大量にあった。
フォレストウルフ × スライム
フォレストウルフ × シャドウスライム
フォレストウルフ × ビッグスライム
フォレストウルフ × シャドウリーパー
成功率も表示されている。
だが。
アルベルトが見ているのは別だった。
◇
配合眼。
その最下部。
薄く表示された文字。
今まで気付かなかった項目。
⸻
人族
配合可能
警告
禁忌指定
成功率 0.03%
⸻
沈黙。
◇
「……」
「……」
リリスが無言になる。
アルベルトも無言。
数秒後。
リリスがゆっくり口を開いた。
「駄目です」
「まだ何も言ってない」
「顔で分かります」
「そうか」
「そうです」
◇
アルベルトは少しだけ考えた。
理論上。
可能らしい。
人間と魔物。
あるいは別の何か。
だが。
次の表示が出ていた。
⸻
禁忌配合
実行時
学園管理局へ自動通知
⸻
「なるほど」
「なるほどじゃありません」
リリスが即座に否定する。
◇
「そもそも人間を捕獲する予定なんですか?」
「ない」
「本当に?」
「ない」
「本当に?」
「今は」
「今はって言いました!」
◇
リリスは頭を抱えた。
一方。
アルベルトは冷静だった。
興味はある。
研究者だから。
未知の技術なら知りたい。
しかし。
今やる理由がない。
リスクが大きすぎる。
970位攻略の方が重要だった。
◇
「禁忌は後回しだ」
「後回しって言葉が怖いんですよ」
「そうか?」
「そうです」
◇
話を戻す。
今はフォレストウルフである。
アルベルトは配合候補を見る。
⸻
フォレストウルフ × シャドウスライム
成功率 64%
予測結果
シャドウウルフ
⸻
フォレストウルフ × ビッグスライム
成功率 71%
予測結果
ジェルウルフ
⸻
リリスが身を乗り出す。
「見えますね」
「ああ」
今までとの違いだった。
特殊配合型認定後。
結果の一部まで見えるようになっている。
◇
「どっちにします?」
「両方だ」
即答だった。
◇
まずはシャドウスライム。
フォレストウルフ。
融合開始。
黒い光。
影が揺れる。
そして。
一匹の狼が現れた。
◇
漆黒。
赤い瞳。
影のような毛並み。
⸻
シャドウウルフ
レア度:高
脅威度:中
⸻
成功。
◇
「かっこいい」
リリスが素直に呟く。
アルベルトも頷いた。
確かに強そうだった。
しかも。
次の瞬間。
シャドウウルフが姿を消した。
「消えた!?」
「潜伏系か」
影の中へ溶け込んでいる。
シャドウスライムの能力を継承しているらしい。
◇
続いて。
フォレストウルフとビッグスライム。
融合。
今度は青い光。
そして。
完成。
◇
……狼だった。
見た目は。
◇
ただし。
ぷるぷるしている。
「何ですかこれ」
リリスが吹き出した。
狼なのに。
身体の半分がスライム。
尻尾もスライム。
耳もスライム。
ぷるぷる。
ぷるぷる。
している。
◇
⸻
ジェルウルフ
レア度:中
脅威度:中
特殊能力
自己再生
衝撃吸収
⸻
「強いな」
「見た目に反してですね」
◇
アルベルトは満足していた。
新戦力二体。
しかも方向性が違う。
シャドウウルフは奇襲型。
ジェルウルフは前衛型。
970位攻略に必要な戦力だった。
◇
その夜。
再び通知が届く。
⸻
特殊昇格戦
開催まで
7日
⸻
いよいよだった。
翠緑の樹海。
フォレストウルフキング。
970位。
十九位差の格上。
◇
だが。
今のアルベルトは笑っていた。
「勝てそうですか?」
リリスが聞く。
少し前なら即答していただろう。
しかし。
今回は違う。
アルベルトは正直に答えた。
「五分だな」
「おお」
リリスが驚く。
つまり。
半分は勝てるということだ。
◇
アルベルトは立ち上がる。
視線の先には、
シャドウリーパー。
シャドウウルフ。
ジェルウルフ。
そして大量のスライム達。
忘れられた洞窟の戦力は急速に進化していた。
970位まであと7日。
次の戦いは、これまでで最大の壁になるはずだった。




