第39話 970位の壁
忘れられた洞窟。
989位。
だがアルベルト達の次の相手は970位だった。
十九位差。
普通ならあり得ない。
しかし特殊配合型認定によって、その常識は覆された。
そして現在――
「強いな」
アルベルトはそう呟いていた。
◇
三日後。
忘れられた洞窟。
中央広間。
アルベルトは新たに表示された情報を眺めている。
⸻
特殊昇格戦
挑戦対象
970位
翠緑の樹海
支配魔物:フォレストウルフ
推定魔物数:48
⸻
「四十八」
リリスが読む。
「多いですね」
「ああ」
今までで最多だった。
小鬼の巣穴が二十七体。
ほぼ倍である。
しかも。
情報はまだ続いていた。
⸻
確認個体
フォレストウルフ ×39
ハイフォレストウルフ ×8
フォレストウルフキング ×1
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沈黙。
リリスがゆっくり顔を上げる。
「無理では?」
「まだ分からない」
アルベルトは冷静だった。
しかし。
これは確かに今までとは違う。
◇
その日から。
アルベルトは徹底的に調査を始めた。
特殊昇格戦には実地偵察権が付与されている。
これも特典だった。
相手ダンジョン周辺の調査が可能になる。
つまり。
今まで通り情報戦ができる。
「行くぞ」
「また遠足ですね」
「偵察だ」
「はいはい」
◇
翠緑の樹海。
到着した瞬間。
違いが分かった。
広い。
とにかく広い。
森が続いている。
木々が高い。
視界が悪い。
そして。
気配が多い。
「嫌ですね」
リリスが言う。
「嫌だな」
アルベルトも同意した。
今までの敵は洞窟だった。
狭い。
閉鎖空間。
だから少数でも戦えた。
しかし森は違う。
敵がどこにいるか分からない。
◇
その時。
シャドウリーパーが反応する。
木の上。
何かいる。
アルベルトが配合眼を発動した。
⸻
フォレストウルフ
脅威度:低
⸻
一体。
二体。
三体。
四体。
まだ増える。
全部木の上だった。
「狼ですよね?」
「ああ」
「何で木の上に?」
「知らん」
アルベルトも少し驚いていた。
◇
さらに奥へ進む。
すると。
別の群れを発見した。
今度は明らかに大きい。
体長二メートル近い。
筋肉量も違う。
⸻
ハイフォレストウルフ
脅威度:中
⸻
「これが八体ですか」
「ああ」
そして。
問題はその先だった。
◇
森の中心。
巨大な樹木。
その根元。
そこにいた。
全長四メートル。
銀色の毛並み。
圧倒的な存在感。
周囲の狼達が自然と距離を取っている。
⸻
フォレストウルフキング
脅威度:高
⸻
アルベルトの目が細くなる。
今までの敵とは違う。
ホブゴブリンロードは指揮官だった。
だが。
この個体は違う。
単純に強い。
「なるほど」
アルベルトが呟く。
「何がです?」
「統率型じゃない」
リリスが画面を見る。
確かに。
新しい項目が表示されていた。
⸻
戦闘傾向
王獣型
⸻
◇
帰還後。
アルベルトは考え込んでいた。
ホブゴブリンロード戦。
あれは簡単だった。
王を倒せば終わった。
だが今回は違う。
キングを倒しても群れは残る。
むしろ暴走する可能性が高い。
「面倒ですね」
「ああ」
「久しぶりに勝ち筋が見えません」
リリスが言う。
それは事実だった。
初めて。
本当に初めて。
アルベルトは即座に攻略法を思い付かなかった。
◇
その夜。
召喚一覧を眺める。
スライム。
ゴブリン。
シャドウ。
スケルトン。
ビッグスライム。
シャドウスライム。
そして。
新しく追加された項目。
⸻
フォレストウルフ
召喚可能
⸻
アルベルトの目が止まる。
リリスも気付いた。
「登録されたんですね」
「ああ」
「召喚します?」
「当然だ」
即答だった。
◇
翌朝。
召喚実行。
光が集まる。
そして。
一匹の狼が現れた。
フォレストウルフ。
初の獣系魔物だった。
「おお」
リリスが少し感動する。
スライムばかり見ていたので新鮮だった。
だが。
次の瞬間。
アルベルトの配合眼が反応する。
⸻
フォレストウルフ × シャドウリーパー
成功率 18%
⸻
フォレストウルフ × シャドウスライム
成功率 64%
⸻
フォレストウルフ × ビッグスライム
成功率 71%
⸻
沈黙。
リリスが天井を見上げた。
「嫌な予感しかしません」
「奇遇だな」
「アルベルトさんは嫌な予感してませんよね」
「全く」
知っていた。
その顔だ。
新しい素材を見つけた時の顔だ。
◇
970位との戦いまで残り十五日。
アルベルトはまだ勝ち筋を見つけていない。
だが。
新しい素材は手に入った。
そして。
新しい配合候補も。
忘れられた洞窟の急成長は、まだ終わりそうになかった。




