第37話 王を討て
ランキング戦開始。
忘れられた洞窟990位。
小鬼の巣穴989位。
順位差は一つ。
だが戦力差は大きかった。
ゴブリン十五体。
ホブゴブリン八体。
ホブゴブリンウォリアー三体。
そして。
ホブゴブリンロード。
対する忘れられた洞窟。
アルベルト。
リリス。
シャドウリーパー。
シャドウスライム。
ビッグスライム二体。
スライム九体。
普通に戦えば勝負にならない。
だから。
最初から普通には戦わない。
◇
「始めるぞ」
アルベルトが言った。
その瞬間。
スライム達が前進する。
ぷるぷる。
ぷるぷる。
ものすごく弱そうだった。
ゴブリン達が笑う。
完全に油断している。
「ギャハハ!」
実際弱い。
そこは否定できない。
だが。
アルベルトの目的は別だった。
「囮だ」
リリスが苦笑する。
「本人達は知ってるんですか?」
「知らない」
「可哀想ですね」
スライム達は元気に前進していた。
知らぬが仏である。
◇
ゴブリン達が迎撃へ向かう。
前線が動く。
ホブゴブリンも動く。
ウォリアーも動く。
その結果。
中央の守りが少し薄くなった。
アルベルトは見逃さない。
「今だ」
影が動く。
シャドウリーパー。
シャドウスライム。
二体が岩陰から滑るように進む。
誰も気付かない。
ゴブリン達の視線は前方。
スライム達へ集中している。
◇
一方。
前線。
スライム達は予想以上に頑張っていた。
体当たり。
体当たり。
また体当たり。
ダメージはほぼない。
しかし。
意外と邪魔だった。
「ギャッ!」
ゴブリンが転ぶ。
別のゴブリンも巻き込まれる。
さらに転ぶ。
ぐちゃぐちゃになった。
リリスが呆れる。
「思ったより有能ですね」
「そうだな」
アルベルトも少し驚いていた。
◇
その頃。
シャドウリーパーは敵陣奥へ到達していた。
ホブゴブリンロードまで残り二十メートル。
十五メートル。
十メートル。
誰も気付かない。
だが。
五メートルまで近付いた時。
「グルル?」
ホブゴブリンウォリアーの一体が反応した。
鋭い。
流石は精鋭だった。
だが。
遅い。
◇
シャドウリーパーが飛び出す。
黒い刃が閃く。
一直線。
狙いはホブゴブリンロード。
首。
ただ一点。
「ギィ!?」
ホブゴブリンロードが気付く。
反応する。
だが間に合わない。
黒刃が首へ迫る。
その瞬間。
ホブゴブリンウォリアーが飛び込んだ。
斧を振るう。
ガキィン!!
衝撃。
攻撃が逸れる。
首ではなく肩。
ホブゴブリンロードが吹き飛んだ。
「惜しい!」
リリスが叫ぶ。
致命傷ではない。
しかし。
重傷だ。
◇
ホブゴブリンロードが怒号を上げる。
「ギィィイイイ!!」
戦場が変わった。
全ゴブリンが振り返る。
全ホブゴブリンが振り返る。
全ての敵意がシャドウリーパーへ向く。
普通なら終わり。
包囲される。
だが。
アルベルトは待っていた。
「第二段階」
「やっぱりあるんですね」
リリスは半ば諦めていた。
当然ある。
アルベルトである。
一発勝負だけで終わる男ではない。
◇
その瞬間。
ホブゴブリンロードの足元から黒い影が飛び出した。
シャドウスライム。
誰も見ていなかった。
潜伏していたのだ。
「ギッ!?」
ホブゴブリンロードが驚く。
シャドウスライムは戦闘力が低い。
だが。
奇襲は得意。
黒い身体が跳ねる。
そして。
顔面へ直撃。
べちゃっ。
「……」
「……」
戦場が静まり返る。
なんとも締まらない絵面だった。
◇
だが。
その一瞬。
ホブゴブリンロードの視界が塞がれた。
その一瞬こそ。
アルベルトが待っていた隙。
シャドウリーパーが再び動く。
今度こそ。
一直線。
黒刃が振り抜かれる。
ホブゴブリンロードは反応できない。
視界がない。
避けられない。
そして――
斬撃が走った。
ランキング戦。
決着の瞬間が迫っていた。




