第35話 ホブゴブリンロード討伐計画
ランキング戦まで十五日。
対戦候補情報が更新された。
アルベルトとリリスはダンジョンコアの前に立っている。
表示されたのは――
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989位
小鬼の巣穴
支配魔物:ホブゴブリンロード
危険度:高
推定魔物数:27
戦闘傾向:統率型
特記事項:
支配魔物撃破時、統率能力大幅低下
⸻
沈黙。
そして。
アルベルトが言った。
「答えが出たな」
「出ましたね」
リリスも頷く。
まさに今まで考えていた通りだった。
ホブゴブリンロードが核。
倒せば群れが崩れる。
システムがそれを証明した。
◇
「でも二十七体ですよ?」
リリスが現実を突き付ける。
こちらの戦力は、
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シャドウリーパー ×1
シャドウスライム ×1
ビッグスライム ×2
スライム ×3
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合計七体。
数で四倍近い差がある。
普通なら勝負にならない。
だが。
アルベルトは配置図を見ていた。
「戦う必要はない」
「ですよね」
「ホブゴブリンロードだけだ」
初めから変わらない。
問題は方法だった。
◇
その日から。
忘れられた洞窟は実戦訓練を始めた。
シャドウリーパー。
シャドウスライム。
二体を組ませる。
潜伏。
接近。
離脱。
繰り返す。
繰り返す。
さらに繰り返す。
「地味ですね」
「大事だ」
アルベルトは真顔だった。
派手な訓練ではない。
だが。
失敗すれば全滅する。
なら成功率を上げるしかない。
◇
三日後。
ランキング戦まで十二日。
アルベルトは決断した。
「行くか」
「どこへです?」
「小鬼の巣穴」
リリスが固まる。
そして。
目を丸くした。
「また偵察ですか?」
「ああ」
前回の偵察からかなり時間が経っている。
相手も成長しているかもしれない。
確認は必要だった。
◇
忘れられた洞窟を出発。
今回のメンバーは少数。
アルベルト。
リリス。
シャドウリーパー。
シャドウスライム。
スライム一体。
最小構成。
戦うためではない。
見るためだ。
◇
半日後。
小鬼の巣穴近辺。
アルベルト達は岩陰へ身を隠していた。
そして。
見た。
「増えてますね」
リリスが呟く。
見張り台。
二つになっていた。
さらに。
巡回ゴブリンも増えている。
以前より明らかに警戒が強い。
「成長している」
アルベルトは静かに言う。
このダンジョンも遊んでいた訳ではない。
当然だ。
向こうも生き残るために強くなる。
◇
その時だった。
シャドウリーパーが反応する。
ぴたりと動きを止めた。
アルベルトも気付く。
気配。
強い気配。
洞窟入口から現れたのは――
ホブゴブリンだった。
だが普通ではない。
大きい。
鎧を着ている。
斧を持っている。
配合眼が反応した。
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ホブゴブリンウォリアー
脅威度:中
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「新戦力か」
アルベルトの目が細くなる。
以前はいなかった。
つまり。
小鬼の巣穴も強くなっている。
◇
だが。
アルベルトは笑った。
本当に少しだけ。
「良かった」
「良かった?」
リリスが驚く。
強くなっているのに。
普通なら嫌な情報だ。
だがアルベルトは首を振る。
「見つけた」
「何をです?」
アルベルトは見張り台を指差した。
さらに巡回路。
ホブゴブリンウォリアー。
そして洞窟入口。
全てが繋がった。
「弱点だ」
ホブゴブリンロードは群れを強くした。
その結果。
守る場所が増えた。
指示する部隊も増えた。
だからこそ。
一瞬だけ生まれる隙がある。
アルベルトはその隙を見つけたのだった。
◇
帰還後。
忘れられた洞窟。
アルベルトは地面へ作戦図を書き込む。
一本の線。
入口を迂回。
見張りを回避。
中央広間へ直行。
そして。
ホブゴブリンロード。
その名前に大きな丸を描いた。
「これで勝てる」
静かな声だった。
リリスは地図を見る。
シャドウリーパー。
シャドウスライム。
二体だけが敵陣深くへ侵入する作戦。
あまりにも危険。
だが。
成功すれば終わる。
「本当に配合士なんですか?」
リリスが聞く。
「配合士だ」
「暗殺者じゃなくて?」
「配合士だ」
アルベルトは即答した。
リリスはため息をつく。
ランキング戦まで残り十二日。
忘れられた洞窟はついに決戦準備を終えたのだった。




