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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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34/223

第34話 実験開始

ランキング戦まで十七日。


忘れられた洞窟は再び平穏を失っていた。


原因はもちろん――


アルベルトである。


「やるか」


朝。


中央広間でアルベルトが立ち上がった。


リリスは嫌そうな顔をする。


「何をですか」


「実験」


「でしょうね」


予想通りだった。


むしろそれ以外なら驚く。


◇


アルベルトの前には、


ビッグスライムが二体。


シャドウが一体。


正確には、昨日召喚したばかりのシャドウだった。


ビッグスライム×シャドウ。


成功率六十一パーセント。


それが昨日発見した配合候補である。


「成功率高いですね」


「思ったよりな」


配合は五割を超えれば十分狙える。


六割を超えるなら挑戦する価値がある。


特にアルベルトはそう考えていた。


「失敗したら?」


「素材が消える」


「軽く言いますね」


「事実だ」


研究者である。


素材への情はある。


だが実験を止めるほどではない。


◇


配合陣が光る。


ビッグスライム。


シャドウ。


二体が光に包まれていく。


リリスは少し緊張していた。


アルベルトはじっと見ている。


そして。


数秒後。


結果が出た。


⸻


配合成功


⸻


光が弾ける。


そこにいたのは――


黒いスライムだった。


◇


沈黙。


「黒いですね」


「黒いな」


本当に黒い。


説明が終わるレベルで黒かった。


サイズはビッグスライムより少し小さい。


しかし。


体の表面が不自然に揺れている。


影のように。


煙のように。


存在感が薄い。


アルベルトの配合眼が起動する。


⸻


シャドウスライム


脅威度:低


適性:奇襲


潜伏適性:高


⸻


「おお」


珍しくアルベルトが声を漏らした。


当たりだった。


◇


シャドウスライムは面白い魔物だった。


岩陰へ移動する。


すると。


見失う。


「え?」


リリスが目を瞬かせる。


本当に消えた。


気配も薄い。


存在感も薄い。


そして。


足元から突然現れる。


「びっくりしました!」


「潜伏能力か」


アルベルトは興味深そうだった。


戦闘能力は低い。


だが隠れる能力は高い。


シャドウリーパーほどではない。


しかし。


十分実用的だった。


◇


その日の午後。


アルベルトは新しい実験を始めていた。


「まだやるんですか」


「候補が増えた」


当然だった。


図鑑登録。


新種誕生。


つまり。


新しい組み合わせが解放される。


アルベルトの目の前には候補一覧。


その中で。


ある表示が目に入った。


⸻


シャドウスライム × ゴブリン


成功率43%


⸻


「やめましょう」


リリスが即答した。


「低いな」


「低いです」


「でも可能性はある」


「だから危ないんですよ」


完全に研究者の顔だった。


◇


しかし。


アルベルトはすぐには実行しなかった。


意外だった。


「やらないんです?」


「DPが惜しい」


リリスは少し安心した。


ちゃんと理性が残っていた。


今はランキング戦前。


遊んでいる場合ではない。


戦力も必要だ。


「まずはホブゴブリンロードだ」


アルベルトは地面へ視線を落とした。


そこには小鬼の巣穴の配置図。


見張り台。


巡回路。


ホブゴブリンロード。


何度も見返した地図だった。


◇


その時だった。


ダンジョンコアが光る。


通知。


アルベルトは視線を向ける。


⸻


月間ランキング変動予告


ランキング戦まで


十五日


⸻


さらに。


その下へ文字が浮かんだ。


⸻


対戦候補情報更新


⸻


アルベルトの目が細くなる。


リリスも気付く。


「更新?」


「ああ」


今までに無かった通知だった。


何かが変わった。


ランキング戦が近づいている。


だからかもしれない。


コアがゆっくりと新しい情報を表示する。


アルベルトは息を呑んだ。


そして。


数秒後。


静かに呟く。


「なるほど」


リリスが覗き込む。


「何です?」


アルベルトは画面から目を離さない。


「小鬼の巣穴」


「はい」


「思ったより厄介だ」


ランキング戦まで十五日。


忘れられた洞窟は、格上の本当の姿を知ろうとしていた。

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