第31話 腐敗の地下墓地
ランキング戦まで二十二日。
シャドウリーパー誕生から三日。
忘れられた洞窟は着実に力を蓄えていた。
スライム達はDP回収。
リリスは幻惑訓練。
シャドウリーパーは潜伏能力の習熟。
そして。
アルベルトは――
「また徹夜ですか?」
「違う」
「何時間寝ました?」
「四時間」
「それを世間では徹夜と言います」
違わない気もした。
◇
三日前。
情報解析機能が進化した。
その影響をアルベルトは調べ続けていた。
そして今朝。
ようやく新しい発見があった。
「なるほど」
アルベルトが呟く。
「何か分かったんですか?」
リリスが覗き込む。
アルベルトの視界には新しい情報が表示されていた。
⸻
989位
小鬼の巣穴
支配魔物:ホブゴブリン
危険度:高
⸻
988位
霧隠れの洞窟
支配魔物:ミストウルフ
危険度:中
⸻
987位
腐敗の地下墓地
支配魔物:ボーンウォリアー
危険度:中
⸻
「危険度?」
「前は無かった」
アルベルトは頷く。
新機能だ。
以前より詳細な分析が可能になっている。
「小鬼の巣穴だけ高いですね」
「ああ」
そこが気になった。
順位は一つしか違わない。
だが評価が違う。
なぜか。
「調べる価値はある」
◇
アルベルトは腐敗の地下墓地の情報を開く。
以前より細かいデータが見える。
⸻
確認魔物
ボーンウォリアー ×12
ボーンアーチャー ×4
⸻
総数16。
思ったより多い。
しかし。
アルベルトの目は別の場所で止まった。
⸻
戦力評価
統率型
⸻
「統率型?」
リリスが読む。
「小鬼の巣穴と同じですね」
「ああ」
そこだった。
アルベルトは思考を始める。
ボーンウォリアー。
本来はそこまで知能が高くない。
なのに統率型。
つまり。
どこかに指揮役がいる。
「支配魔物はボーンウォリアーなのに?」
「違う可能性がある」
アルベルトは呟く。
支配魔物は最も強い魔物とは限らない。
情報が古い可能性もある。
あるいは。
別の個体が存在する可能性もある。
◇
昼。
アルベルトは小鬼の巣穴の資料を並べていた。
ホブゴブリンロード。
ホブゴブリン八体。
ゴブリン十五体。
見張り台。
巡回路。
育成中と思われるゴブリン達。
全てを書き出す。
そして。
腐敗の地下墓地の情報を隣へ置いた。
共通点があった。
「統率者か」
リリスも気付く。
小鬼の巣穴。
腐敗の地下墓地。
どちらも数で戦う。
どちらも連携する。
そして。
どちらも中心となる個体がいる。
「なるほど」
アルベルトの目が鋭くなる。
ようやく見えてきた。
「何がです?」
「順位の理由だ」
989位の小鬼の巣穴。
987位の腐敗の地下墓地。
単純な戦闘力だけなら大差ない。
むしろ小鬼の巣穴の方が強そうに見える。
だが順位は違う。
理由は統率の完成度。
群れをどれだけ効率よく動かせるか。
そこに差がある。
◇
その日の夜。
シャドウリーパーが影の中から現れる。
最近は気配を消したまま移動できるようになっていた。
正面戦闘も強い。
潜伏もできる。
奇襲も得意。
アルベルトは静かに頷く。
「やはりお前だな」
「何がです?」
リリスが聞く。
アルベルトは地面へ線を描いた。
群れ。
その中心。
ホブゴブリンロード。
そして。
そこへ一本の矢印を引く。
「正面からは戦わない」
「はい」
「群れも倒さない」
「はい」
「最初からホブゴブリンロードを狙う」
リリスが息を呑む。
ついに言葉になった。
ここ数日考えていた作戦。
その完成形。
「シャドウリーパーで暗殺するんですね」
「ああ」
群れを相手にする必要はない。
ホブゴブリンロードさえ倒せばいい。
統率型の最大の強み。
それは同時に最大の弱点でもある。
指揮官を失えば崩れる。
腐敗の地下墓地の情報は、それをアルベルトに確信させた。
ダンジョンコアが静かに光る。
⸻
ランキング戦まで
二十一日
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残り時間はまだある。
準備も続けられる。
だが。
勝ち筋は見えた。
忘れられた洞窟は初めて、格上を倒すための明確な作戦を手に入れたのだった。




