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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第28話 配合士の戦い方

レオンが帰った翌日。


忘れられた洞窟の中央広間では、アダプトジェルゴブリンが岩を持ち上げていた。


持ち上げる。


下ろす。


持ち上げる。


下ろす。


実に地味な光景だった。


「何をしているんですか?」


リリスが尋ねる。


「訓練だ」


アルベルトは即答した。


「見れば分かります」


リリスは呆れたように言う。


「そうじゃなくて、何の意味があるんです?」


アダプトジェルゴブリンは既にかなり強い。


少なくとも忘れられた洞窟では最強戦力だ。


今さら岩を持ち上げて意味があるのだろうか。


アルベルトは少し考えてから答えた。


「確認だな」


「確認?」


「どこまで成長しているか」


リリスは納得した。


配合で生まれた魔物。


前例がない。


成長速度も分からない。


能力の限界も分からない。


だから観察する。


調べる。


記録する。


それがアルベルトのやり方だった。


「普通は戦わせて調べません?」


「怪我をする」


「まあそうですけど」


「だから先に観察する」


相変わらずだった。


魔物を知ることを何より優先する。


配合士らしい考え方である。



その日の午後。


アルベルトは小鬼の巣穴の地図を眺めていた。


もう何度見たか分からない。


しかし。


見れば見るほど違和感がある。


「やっぱり変だ」


「またですか」


リリスが苦笑する。


最近のアルベルトはずっとそればかりだ。


ゴブリンが多い。


ゴブリンが多い。


ゴブリンが多い。


何度も聞いた。


だが。


今回は少し違った。


アルベルトは地図の一か所を指差す。


「ここだ」


「見張り台ですか?」


「ああ」


「何かあるんです?」


アルベルトは頷く。


「配置が変なんだ」


「配置?」


リリスも地図を見る。


しかし分からない。


見張り台がある。


ゴブリンがいる。


普通に見える。


「普通なら強い個体を置く」


アルベルトが説明する。


「ホブゴブリンとか?」


「そうだ」


「でもゴブリンだった」


リリスも思い出した。


確かにそうだった。


見張り台には弱いゴブリンがいた。


「それが何か?」


「理由がある」


アルベルトは断言する。


弱い個体を見張りに使う理由。


何かがある。


ただ。


まだ答えは見えない。



夕方。


忘れられた洞窟の入口付近。


シャドウが消えていた。


正確には。


消えているように見える。


アルベルトは岩陰を見る。


気配はある。


だが姿が見えない。


「やはり面白いな」


「何がです?」


リリスが近付いてくる。


「シャドウだ」


アルベルトは岩陰を指差した。


「いる」


「え?」


リリスは目を凝らす。


見えない。


本当に見えない。


だが。


よく見ると。


影が少しだけ揺れた。


「いた……」


「隠密能力が成長している」


アルベルトは興味深そうに観察する。


シャドウは戦闘力こそ不明だが、この能力は非常に優秀だった。


特に偵察。


情報収集。


奇襲。


そういった分野で役立つ。


そして。


その時だった。


アルベルトの視界に文字が浮かぶ。



シャドウ


適性:偵察


適性:奇襲


適性:潜伏



「……」


アルベルトが固まる。


「どうしました?」


「また増えた」


「何がです?」


「見える情報だ」


リリスは慣れてきた。


また配合眼だろう。


最近少しずつ機能が増えている。


成功率だけではない。


脅威度。


適性。


様々な情報が見えるようになってきていた。


「便利ですね」


「便利だな」


アルベルトも否定しない。


むしろ助かっていた。


配合士として欲しい情報ばかりだからだ。



夜。


全員が休もうとしていた時だった。


ダンジョンコアが光る。


見慣れた通知。


しかし内容は見慣れていなかった。



ダンジョン評価更新


忘れられた洞窟


特徴判定


【特殊配合型】



「ん?」


リリスが首を傾げる。


アルベルトも近付く。


初めて見る表示だった。


さらに文字が続く。



特定条件達成


情報解析機能解放



その瞬間。


アルベルトの視界に新たな情報が浮かぶ。


アダプトジェルゴブリンを見る。


すると。



戦闘適性:高


統率適性:中


成長適性:高



シャドウを見る。



戦闘適性:低


偵察適性:高


潜伏適性:極高



リリスを見る。



支援適性:高


幻惑適性:高


前衛適性:低



「なるほど」


アルベルトは思わず呟いた。


「分かるんですか?」


リリスが聞く。


アルベルトはゆっくり頷く。


そして。


小鬼の巣穴の地図を見た。


ホブゴブリンロード。


大量のゴブリン。


大量のホブゴブリン。


そして自分たち。


今までは漠然と考えていた。


だが。


情報が揃い始めた。


「勝ち方が見えてきた」


静かな声だった。


リリスが驚く。


「本当ですか?」


「ああ」


初めてだった。


ランキング戦の準備が始まってから。


アルベルトがここまで断言したのは。


「どうやって戦うんです?」


アルベルトは少し考える。


そして答えた。


「正面からは戦わない」


リリスは思わず笑った。


「ですよね」


当然だった。


相手は二十体以上。


こちらは四体。


真正面からぶつかれば不利だ。


なら。


配合士らしく戦う。


相手を知り。


情報を集め。


弱点を見つける。


それがアルベルトの戦い方だった。


ランキング戦まで残り二十四日。


忘れられた洞窟はようやく勝利への道筋を見つけ始めていた。

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