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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第26話 配合士の弱点

ランキング戦まで二十六日。


忘れられた洞窟では、珍しく真面目な会議が開かれていた。


参加者は三名。


アルベルト。


リリス。


そしてアダプトジェルゴブリン。


シャドウは少し離れた場所で話を聞いている。


なぜなら。


アダプトジェルゴブリンの隣に座るのをまだ怖がっているからだった。


「さて」


リリスが木箱の上に座りながら言う。


「今の戦力を整理しましょう」


アルベルトは頷いた。


重要な話だった。


小鬼の巣穴との戦いはまだ先。


だが準備期間は有限である。


今のうちに課題を洗い出さなければならない。


「まずリリス」


「はい」


「戦力」


「雑ですね」


リリスは呆れながらも説明を始めた。


サキュバス。


魅了。


幻惑。


飛行能力。


ただし近接戦闘は苦手。


防御力も高くない。


前線に立てるタイプではない。


「つまり補助役ですね」


「そうだな」


リリスは少し不満そうだった。


本音を言えばもっと活躍したい。


だが現実は厳しい。


ロックオーガ戦の時も正面から殴り合えば負けていた。


「次」


アルベルトが視線を向ける。


アダプトジェルゴブリン。


本人は胸を張った。


最近の定番ポーズである。


「主戦力」


「説明終わった!?」


リリスが突っ込む。


だが事実だった。


忘れられた洞窟最大戦力。


近接戦。


再生能力。


知能。


どれを取っても優秀。


現状のエースだった。


アダプトジェルゴブリンも満足そうに頷いている。


分かっているらしい。


「調子に乗ってますね」


「乗っているな」


少し傷付いた。


分かりやすい。


「最後」


アルベルトはシャドウを見る。


するとシャドウがぴくっと反応した。


「隠密」


説明終了。


「短いですね」


「まだ分からないからな」


実際その通りだった。


シャドウは能力の大半が未知数。


戦闘力も不明。


特殊能力も不明。


ただ。


隠れるのが上手い。


それだけは確実だった。


その時だった。


アルベルトがふと呟く。


「偵察向きだな」


シャドウが少し嬉しそうに揺れた。


褒められたと思ったらしい。


「確かに」


リリスも頷く。


「敵の様子を見るには便利ですね」


「そうだな」


そこでアルベルトは止まった。


数秒。


考え込む。


リリスは嫌な予感を覚えた。


この沈黙は危険だ。


何か思い付いている。


「アルベルトさん」


「ん?」


「何考えてます?」


「シャドウで偵察できるなと」


「まあそうですね」


普通の発想だった。


少し安心する。


しかし。


アルベルトは続けた。


「小鬼の巣穴の内部も見られるかもしれない」


「ダメです」


即答だった。


「まだ最後まで言ってない」


「言う前に止めます」


当然だった。


内部侵入は禁止。


ルール違反である。


リリスは学園時代の風紀委員みたいな顔になっていた。



その日の午後。


アルベルトは魔物図鑑を眺めていた。


ホブゴブリン。


ミストウルフ。


ボーンウォリアー。


様々なページを開いていく。


配合士にとって知識は武器だ。


学園時代。


成績最下位だったアルベルトが唯一評価されていた理由でもある。


その時。


リリスが後ろから覗き込んだ。


「また図鑑ですか」


「ああ」


「飽きません?」


「飽きない」


即答だった。


本当に好きなのだろう。


すると。


リリスはふと気付いた。


図鑑のページに書き込みがある。


大量に。


「これ全部アルベルトさん?」


「そうだ」


「えっ」


リリスは驚いた。


ページの余白が埋まっている。


観察記録。


行動傾向。


餌の好み。


進化条件。


教科書に載っていない内容ばかりだ。


「いつ調べたんですか」


「学園時代」


「全部?」


「全部」


リリスは絶句した。


魔物図鑑は数百ページある。


それを全て読んだのか。


しかも書き込みまで。


「もしかして」


「何だ」


「魔物学だけ首席でした?」


「首席だな」


やっぱり。


リリスは納得した。


天才ではない。


優等生でもない。


だが。


好きなことだけ異常だった。



夕方。


忘れられた洞窟の入口付近。


アルベルトはアダプトジェルゴブリンと向かい合っていた。


訓練である。


と言っても剣術ではない。


模擬戦でもない。


観察だった。


アダプトジェルゴブリンが岩を持ち上げる。


投げる。


走る。


止まる。


再び投げる。


アルベルトはそれを見ている。


ひたすら見ている。


「何してるんです?」


リリスがやって来た。


「成長確認だ」


「分かりますけど」


「?」


「普通もっと派手な訓練しません?」


確かに他のダンジョンならそうかもしれない。


だがアルベルトは首を振った。


「配合で生まれた魔物は資料がない」


「なるほど」


「だから調べる」


配合士らしい発想だった。


まず知る。


戦う前に知る。


それがアルベルトのやり方だった。


その時だった。


アダプトジェルゴブリンが突然足を止める。


何かを見つけたらしい。


入口の方を見ている。


シャドウも反応した。


リリスも気付く。


「誰か来ます」


「来るな」


足音だった。


複数。


しかも人間。


冒険者か。


商人か。


それとも別の何かか。


忘れられた洞窟は静まり返る。


そして数分後。


入口の向こうから現れたのは。


若い男だった。


学園の制服を着ている。


見覚えがある。


アルベルトも。


そしてリリスも。


交流会で見た顔だった。


卒業生の一人。


レオン・グランツ。


成績三位。


名門ダンジョン配属。


その本人が。


なぜか忘れられた洞窟へやって来ていた。


「よう」


レオンが手を挙げる。


「暇だったから来た」


アルベルトは少し考えた。


そして答える。


「嘘だな」


「バレたか」


レオンが笑う。


どうやら。


ただの訪問ではなさそうだった。

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