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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第25話 違和感の正体

小鬼の巣穴から帰還した翌日。


忘れられた洞窟の中央広間では、一枚の大きな紙が床に広げられていた。


もちろん紙ではない。


正確には、アルベルトが木炭で描いた地図だ。


偵察で見た小鬼の巣穴の配置。


見張り台。


通路。


魔物の巡回経路。


岩場の位置。


覚えている限り全て書き出していた。


「アルベルトさん」


「何だ」


「学園の成績、本当に悪かったんですか?」


「悪かったぞ」


「嘘ですよね?」


リリスは地図を見ながら言った。


ここまで詳細に記憶している人間が落ちこぼれとは思えない。


だがアルベルトは首を振る。


「魔物学以外は普通だった」


「普通?」


「下から三番目だった」


「普通じゃありませんね」


それはかなり悪い。


リリスは納得した。


魔物のことになると異常なのだ。


本当に。


「しかし」


アルベルトは地図を見ながら呟く。


「やっぱり多い」


「何がです?」


「ゴブリンだ」


またその話だった。


昨日から何度も聞いている。


ホブゴブリンロード。


ホブゴブリン。


ゴブリン。


小鬼の巣穴の戦力構成。


アルベルトはずっとそこに引っ掛かっていた。


「普通ならホブゴブリンを増やす」


「そんなものですか?」


「ああ」


配合士は魔物の成長過程を学ぶ。


ゴブリンは弱い。


ホブゴブリンは強い。


維持コストは多少上がるが、それでも戦力効率は圧倒的にホブゴブリンの方が高い。


ならば。


なぜあのダンジョンは大量のゴブリンを維持しているのか。


「理由があるはずだ」


アルベルトが呟く。


その時。


アダプトジェルゴブリンが近寄ってきた。


地図を覗き込む。


そして。


ホブゴブリンロードの絵が描かれた部分を指差した。


「ん?」


アルベルトが顔を上げる。


アダプトジェルゴブリンは再び指差す。


さらにゴブリンの配置も指差す。


何かを伝えたいらしい。


「分かるんですか?」


リリスが驚く。


アダプトジェルゴブリンは元ゴブリンだ。


もしかすると。


何か気付いているのかもしれない。


アルベルトは少し考えた。


そして紙の上に木炭で丸を描く。


「こいつがホブゴブリンロード」


アダプトジェルゴブリンが頷く。


さらに別の場所を指差した。


「こっち?」


頷く。


「ゴブリン?」


頷く。


「関係がある?」


勢いよく頷く。


リリスが目を丸くした。


会話になっている。


完全ではない。


だが成立している。


「凄いですね」


「知能は高いようだな」


アルベルトは改めてアダプトジェルゴブリンを見る。


配合で生まれた新種。


見た目以上に賢い。


その時。


ふとアルベルトの頭に知識が蘇った。


学園の図書館で読んだ古い文献。


確か。


ゴブリン系統の群れには特徴があった。


「なるほど」


アルベルトが呟く。


「分かったかもしれない」


「何がです?」


「ゴブリンを残している理由だ」


リリスが身を乗り出す。


アルベルトは地図を指差した。


「ゴブリンは戦力じゃない」


「え?」


「資源だ」


意味が分からない。


リリスは首を傾げた。


しかしアルベルトは続ける。


「ホブゴブリンはゴブリンから進化する」


「はい」


「なら進化候補を大量に確保している可能性がある」


リリスが目を見開いた。


確かに。


それなら説明がつく。


今はゴブリンでも。


将来的にはホブゴブリンになる。


つまり。


あのダンジョンは現在の戦力ではなく、未来の戦力を蓄えているのだ。


「もしそうなら厄介ですね」


「ああ」


今戦うならまだいい。


だが時間が経つほど強くなる。


ホブゴブリンの数が増えるからだ。



午後。


アルベルトたちは二つ目の候補。


『霧隠れの洞窟』の情報整理を行っていた。


ミストウルフ。


ミストウルフキング。


霧地形。


奇襲特化。


こちらは小鬼の巣穴とは真逆だった。


少数精鋭。


一体一体が強い。


「どっちが嫌です?」


リリスが尋ねる。


「ミストウルフだな」


即答だった。


「やっぱり」


「見えない相手は面倒だ」


配合士は魔物の知識で戦う。


だからこそ情報が少ない相手は嫌だった。


すると。


隣で話を聞いていたシャドウが小さく胸を張る。


見えない。


という言葉に反応したらしい。


「お前も見えないな」


アルベルトが言う。


シャドウがさらに胸を張った。


褒められたと思っている。


可愛かった。


「単純ですね」


リリスが笑う。


アダプトジェルゴブリンも胸を張った。


なぜか対抗している。


「お前は違うだろ」


少ししょんぼりした。


本当に表情豊かである。



夕方。


ダンジョンコアの前。


アルベルトは一人で魔物図鑑を眺めていた。


ホブゴブリン。


ミストウルフ。


ボーンウォリアー。


そしてシャドウ。


様々な魔物の情報を確認する。


その時だった。


視界の端に見慣れた文字が浮かぶ。



シャドウ × アダプトジェルゴブリン


成功率 74%



相変わらず高い。


非常に高い。


アルベルトは思わず唸った。


学園の教官が見たら卒倒する数字だろう。


「見てますね」


背後から声がした。


リリスだった。


「見ているな」


「ダメです」


「まだ何も言っていない」


「配合したいんですよね?」


「したいな」


即答だった。


リリスは頭を抱える。


もう隠す気すらない。


しかし。


今回は少し違った。


アルベルトは配合候補を見ながらも、別のことを考えていた。


次のランキング戦。


その次。


さらにその先。


忘れられた洞窟はまだ990位。


ようやく最下層を抜け出しただけだ。


上にはまだ膨大な数のダンジョンが存在する。


ホブゴブリンロード程度で苦戦していては先へ進めない。


ならば。


今のうちに情報を集めるべきだ。


魔物を知るべきだ。


そして。


より強い配合を見つけるべきだ。


配合士として。


それが自分の戦い方なのだから。


その時。


ダンジョンコアが静かに光った。



次回ランキング戦まで


26日



まだ時間はある。


十分に。


忘れられた洞窟の準備期間は、まだ始まったばかりだった。

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