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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第21話 初めての来訪者

「考えないでください!」


朝から響くリリスの悲鳴。


その後も三十分ほど説得は続いた。


結果として。


アルベルトは渋々配合を延期することになった。


「一週間」


「長いです!」


「三日」


「長いです!」


「二日」


「短くなってるだけじゃないですか!」


結局、


次のランキング戦までは配合禁止


という条件で話がまとまった。


アルベルトは不満そうだった。


リリスは疲れ切っていた。


アダプトジェルゴブリンは何となく空気を察して離れた場所にいる。


シャドウは隅でぷるぷる震えていた。


「ぷるぷるじゃないんですよね」


リリスが言う。


「シャドウだな」


「でも震えてます」


確かに震えていた。


召喚されたばかりだからかもしれない。


するとシャドウは小さく頭を下げた。


礼儀正しい。


非常に礼儀正しい。


「いい子ですね」


「いい子だな」


「アダプトジェルゴブリンも見習ってください」


アダプトジェルゴブリンがショックを受けた顔になった。


分かりやすい。


その時だった。


ダンジョン全体が微かに揺れる。


アルベルトが顔を上げた。


リリスも気付く。


「ランキング戦ですか?」


「違うな」


戦闘の揺れではない。


もっと穏やかだ。


そして。


ダンジョンコアの上に文字が浮かぶ。



来訪者申請


受理しますか?



二人が固まる。


数秒。


沈黙。


先に口を開いたのはリリスだった。


「来訪者?」


「来訪者だな」


「人が来るんですか?」


「そういうことだろう」


忘れられた洞窟に。


人が。


来る。


二人は同時に広間を見回した。


崩れた壁。


散乱した岩。


補修途中の通路。


生活感ゼロ。


「まずいですね」


リリスが呟く。


「何がだ」


「汚いです」


アルベルトも見回した。


確かに汚い。


「そうだな」


「掃除しましょう!」


「今からか?」


「今からです!」


三十分後。


忘れられた洞窟は人生で一番綺麗になっていた。


リリスが頑張ったからだ。


アルベルトは途中から魔物図鑑を読み始めたので役に立たなかった。


「手伝ってください!」


「調べ物がある」


「掃除が先です!」


そんなやり取りをしているうちに。


再び文字が現れた。



来訪者到着まで


00:00:10



「来ますね」


「ああ」


「どんな人でしょう」


「分からん」


カウントが減る。


九。


八。


七。


そして。


ゼロ。


ダンジョン入口側の空間が揺らいだ。


転移ゲート。


下位ダンジョンでは珍しい。


その光の中から、一人の少女が現れる。


年齢は十六歳前後。


栗色の髪。


学園の制服。


胸元には見覚えのある紋章。


アルベルトの目が僅かに見開いた。


「学園?」


少女も驚いていた。


目の前にいる男を見て。


「あれ?」


数秒。


沈黙。


そして。


少女が目を丸くする。


「アルベルト先輩!?」


アルベルトは思い出した。


学園時代の後輩だ。


確か。


「エミリアか」


「本当にアルベルト先輩ですか!?」


失礼だった。


だが少し気持ちは分かる。


学園時代のアルベルトは有名人だった。


悪い意味で。


「こんな所にいたんですか!?」


「いたな」


「卒業後に消息不明って聞いたんですけど!?」


「配属された」


「忘れられた洞窟に!?」


「そうだ」


エミリアは絶句した。


学園卒業生なら誰でも知っている。


忘れられた洞窟。


希望者ゼロ。


閉鎖寸前。


実質的な左遷先。


その名前を。


そしてさらに驚く。


ダンジョン内を見回したからだ。


アダプトジェルゴブリン。


シャドウ。


サキュバス。


見慣れない戦力。


特に。


アダプトジェルゴブリンを見た瞬間。


「……?」


エミリアが首を傾げる。


知識には自信があった。


だから分かる。


見たことがない。


魔物図鑑にも載っていない。


「先輩」


「何だ」


「その魔物なんですか?」


リリスが固まった。


アルベルトも固まった。


まずい。


非常にまずい。


配合眼の秘密に直結する。


だがアルベルトは平然と答えた。


「ゴブリンだ」


「嘘ですよね?」


即答だった。


リリスが吹き出す。


エミリアも呆れた顔になる。


アダプトジェルゴブリン本人まで傷ついていた。


「ゴブリンではありません」


「そうか」


「先輩、説明下手になってません?」


「元からだ」


それはそうだった。


エミリアはため息を吐く。


そして本題を思い出した。


「実はですね」


手に持っていた封筒を取り出す。


学園の紋章入り。


正式な書類だった。


「先輩に届け物です」


「俺に?」


「はい」


アルベルトが受け取る。


封を開く。


中の書類を読む。


そして。


珍しく眉が動いた。


「どうしたんです?」


リリスが覗き込む。


そこには大きく書かれていた。



新人ダンジョンマスター交流会


開催決定


参加推奨



アルベルトが黙る。


リリスが黙る。


エミリアが笑う。


嫌な予感しかしなかった。


交流会。


つまり。


他の新人ダンジョンマスターと会う。


情報交換。


自慢。


競争。


そして。


配合師アルベルトにとって最も苦手そうなイベントだった。


「先輩」


エミリアがにっこり笑う。


「ちゃんと参加してくださいね?」


アルベルトは少し考えた。


そして。


「行かなくてもいいか?」


「ダメです」


即答だった。


こうして忘れられた洞窟に、新たな試練がやって来るのだった。

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