第205話 快進撃
鋼鉄迷宮との特別戦から二週間後。
忘れられた洞窟は異常な勢いで順位を上げていた。
理由は単純だった。
強かった。
それだけだった。
◇
五百四十二位。
《鋼鉄迷宮》撃破。
そこから始まった。
次に現れたのは五百二十一位《紅蓮火山》。
火属性特化。
溶岩地帯。
英雄個体保有。
普通なら苦戦する相手だった。
だが。
夜狼王が空を制圧した。
蒼天竜将が火山上空を支配した。
ヴァルグランが正面から防衛線を破壊した。
影王が指揮官を暗殺した。
戦闘時間。
三十一分。
勝利。
戦利契約。
紅蓮鬼将獲得。
順位上昇。
◇
次。
五百三位。
《雷帝山脈》。
雷属性特化。
飛行戦力多数。
下級リーグ上位では有名なダンジョンだった。
しかし。
ここでも忘れられた洞窟は止まらない。
夜狼王。
蒼天竜将。
飛行戦力二枚看板。
空中戦。
完全勝利。
雷帝鳥を戦利契約。
順位上昇。
◇
その頃になると学園でも話題になっていた。
掲示板。
食堂。
教員室。
どこへ行っても同じ話。
忘れられた洞窟。
また勝った。
また順位が上がった。
また英雄個体を奪った。
◇
ベルクも掲示板を見ていた。
無言だった。
周囲の卒業生達も同じだった。
もはや同期ではない。
別世界の存在になり始めている。
◇
さらに。
四百八十九位。
《氷晶宮》。
防御特化。
英雄個体二体保有。
複数英雄個体保有ダンジョンだった。
ここは少しだけ苦戦した。
少しだけ。
本当に少しだけ。
戦闘時間四十五分。
それでも勝った。
氷晶竜を戦利契約。
順位上昇。
◇
忘れられた洞窟は止まらない。
育成補助機能。
研究施設。
終号。
全てが噛み合っていた。
夜狼王成熟度。
八十五%。
↓
八十八%。
蒼天竜将。
七十五%。
↓
八十%。
影王。
さらに強化。
ヴァルグラン。
もはや移動要塞。
アダプトキング。
軍団全体を加速させる。
◇
そして。
四百五十一位。
《白銀天城》。
卒業生上位勢。
下級リーグ最上位クラス。
ここでようやく。
忘れられた洞窟は強敵と呼べる相手に出会った。
◇
白銀天城。
英雄個体二体。
飛行部隊。
防衛設備。
どれも高水準だった。
戦闘は一時間近く続いた。
最近では最長だった。
だが。
勝った。
◇
夜狼王が敵英雄個体を撃破する。
影王が指揮官を落とす。
ヴァルグランが城門を破壊する。
アダプトキングが軍団を導く。
そして。
白銀天城陥落。
◇
終号が表示する。
⸻
順位更新
⸻
451位
⸻
中央広間が静まり返った。
ついにここまで来た。
新人リーグ最下位付近。
そこから始まったダンジョン。
今は四百位台目前。
◇
リリスが順位表を見る。
四百位台。
その先。
三百位台。
中級リーグ。
上級リーグ。
まだ先はある。
だが。
手が届かない距離ではなくなっていた。
◇
その時だった。
終号が反応する。
青い光。
警告音。
管理室の空気が変わる。
全員が画面を見る。
⸻
特別戦招待
⸻
対象
417位
⸻
《冥府回廊》
⸻
中央広間が静まる。
初めて聞く名前だった。
◇
終号が情報を表示する。
⸻
王候補保有
⸻
英雄個体複数
⸻
研究施設保有
⸻
管理室が凍りつく。
初めてだった。
研究施設。
自分達以外で。
◇
ミレイが顔色を変える。
「待ってください」
全員が見る。
ミレイは資料を見つめていた。
その表情が硬い。
「この名前」
「知っているのか」
アルベルトが聞く。
ミレイはゆっくり頷いた。
そして。
静かに言った。
「学園の要注意指定ダンジョンです」
◇
中央広間が静まり返る。
今までとは違う。
本能的に分かった。
ここから先は。
快進撃では終わらない。
◇
終号が最後の情報を表示する。
⸻
過去戦績
⸻
敗北者からの
戦利契約取得率
92%
⸻
沈黙。
誰も喋らない。
奪う。
ではない。
奪われる。
初めて。
その可能性が現実味を帯びた。
◇
夜狼王が静かに画面を見る。
影王も。
ヴァルグランも。
アダプトキングも。
誰も笑っていない。
四百五十一位。
忘れられた洞窟はついに。
自分達と同じ匂いを持つ相手へ辿り着いてしまったのだった。




