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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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201/223

第201話 第四記録

蒼穹の塔との特別戦から二日後。


忘れられた洞窟は勝利の余韻に浸るどころか、過去最高レベルの忙しさを迎えていた。


理由は単純である。


蒼天竜将。


その存在が大きすぎた。


管理室の中央には終号が投影する大量の資料が並んでいる。蒼天竜将の能力解析、飛行戦術の分析、育成方針、そして新たに解放された配合候補一覧。


その数は百九十三件。


リリスは朝から頭を抱えていた。


「もう感覚がおかしいです」


「そうか?」


「おかしいです」


即答だった。


百九十三件。


普通の配合士なら一生分の研究対象である。


だがアルベルトは平然としていた。


その時、終号が新しい表示を出す。



第四記録


閲覧可能



戦闘観測区画


認証完了



管理室の空気が変わった。


蒼天竜将の話は一旦後回しになる。


王喰。


研究者。


王候補。


三十年前の真実。


全てに繋がる記録が目の前にあった。


「行くぞ」


アルベルトが立ち上がる。


全員が続く。



地下都市西区画。


戦闘観測区画。


研究施設のさらに奥に存在する巨大施設だった。


中へ入った瞬間、リリスは思わず息を呑む。


広い。


異様なほど広い。


壁一面に並ぶ無数の黒い結晶。


天井まで埋め尽くされている。


終号が説明する。



戦闘観測記録


保存数


124871件



「頭がおかしいですね」


リリスが呟く。


「研究者らしい」


アダプトキングが答える。


実際その通りだった。


育成記録ではない。


戦闘記録だけで十二万件。


研究者は狂気的なまでに実戦データを集めていた。



奥へ進む。


最深部。


一際巨大な黒い結晶があった。


第四記録。


終号が認証する。


青い光が広がる。


そして映像が始まった。



研究者だった。


今まで見た映像より若い。


疲れていない。


希望に満ちている。


机の上には大量の資料。


王候補育成記録。


進化実験記録。


戦闘観察記録。


その中心にあるのは。


王喰計画。


研究者は静かに言った。


「王候補は完成した」


全員が映像を見る。


夜狼王も。


影王も。


ヴァルクも。


誰も動かない。


研究者は続けた。


「だが王候補では足りない」


映像が切り替わる。


狼。


飛竜。


大型獣。


複数の王候補達。


どれも強い。


どれも軍団を率いている。


どれも単独で英雄個体を超えている。


それでも研究者は首を振った。


「単独では限界がある」



アルベルトの目が細くなる。


リリスも理解した。


これは進化ではない。


配合の話だ。



研究者は資料を取り出した。


そこに書かれていた文字。


王候補融合計画。


中央広間が静まり返る。


研究者は静かに続ける。


「王喰は失敗ではない」


リリスが息を呑む。


「完成形でもない」


さらに空気が重くなる。


そして。


研究者は最後にこう言った。


「王喰は中継点だ」


映像が終わった。


誰も喋らない。


王喰ですら途中。


その先がある。


研究者はそう言い残した。



その時だった。


終号が反応する。



王候補融合計画


解放



対象候補


夜狼王


蒼天竜将



成功率89%



中央広間が静まり返る。


リリスはゆっくり画面を見る。


「やっぱり出ましたね」


「ああ」


蒼穹の塔から奪った英雄個体。


夜狼王。


研究者の理論。


全てが繋がった。


だが。


終号はさらに表示を続ける。



個体成熟不足



夜狼王成熟度


82%



蒼天竜将成熟度


71%



推奨


非実施



全員が納得する。


前回と同じ数字だった。


まだ早い。


今やれば成功する可能性は高い。


だが最適ではない。



その時。


リリスがふと蒼天竜将の資料を見る。


「そういえば」


「ん?」


「蒼天竜将だけ扱いが違いますね」


終号が反応する。



蒼天竜将


実体契約済



白翼ハーピー


図鑑登録済



風刃イーグル


図鑑登録済



飛竜兵


図鑑登録済



アダプトキングが理解した。


「ああ」


「そういうことか」


リリスが説明する。


「倒しただけの魔物は図鑑登録です」


「育成はできません」


「配合研究には使えます」


アルベルトが頷く。


「実体はないのか」


「ありません」


そして蒼天竜将を見る。


「戦利契約した個体だけが本物です」


だから育成できる。


進化できる。


配合できる。


つまり。


蒼天竜将だけが特別だった。



その時。


王冠宰相が走ってくる。


全員が見る。


最近は嫌な予感しかしない。


だが今回は違った。


宝箱ではない。


結晶だった。


終号が解析する。


数秒後。


新しい表示が現れる。



戦闘観測区画報酬


解放



育成補助機能


使用可能



個体成熟速度上昇



中央広間が静まり返る。


そして全員が理解する。


第四記録の報酬は配合ではない。


育成だった。


夜狼王。


蒼天竜将。


影王。


アダプトキング。


全員を完成へ近付けるための施設。


つまり。


今やるべきことは決まっている。


育てる。


戦う。


成熟度を上げる。


そして。


その先で王候補融合計画を実行する。


アルベルトは夜狼王を見る。


夜狼王も静かに頷いた。


六百位台。


まだ上は遠い。


だが忘れられた洞窟は確実に進んでいる。


そして三十年前の研究者が辿り着けなかった場所へ。


あと一歩ずつ近付いていた。

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