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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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198/223

第198話 第二防衛線突破

蒼穹の塔の侵攻部隊が第二防衛線へ到達した頃には、戦場の様子は当初の想定とは大きく変わっていた。


忘れられた洞窟側の被害は軽微。


対して蒼穹の塔は飛行部隊の三割近くを失っている。


それでも侵攻は止まらなかった。


五百位台まで上り詰めたダンジョンが、この程度で崩れるはずがない。


むしろここからだった。


蒼天竜将が上空で大きく翼を広げる。その動きに合わせるように残存飛行部隊が再編成された。分断されても崩れない。被害を受けても立て直す。その統率力は今まで戦ったどの相手よりも優秀だった。


「流石ですね」


リリスが感心する。


「強いな」


アルベルトも認めた。


夜狼王と戦いながら全軍を維持している。単純な戦闘能力だけではない。指揮官としても一流だった。


だが、その優秀さこそが蒼穹の塔最大の弱点でもあった。


アダプトキングは終始冷静だった。


敵軍の動き。


飛行ルート。


部隊配置。


全てを観察している。


そして既に結論を出していた。


「指揮官依存率が高い」


ヴァルクが笑う。


「つまりいつも通りか」


「ああ」


答えは単純だった。


落とすべき相手は最初から決まっている。


その頃、影王は既に蒼穹の塔軍の奥深くへ侵入していた。


飛行部隊の影。


崩れた岩壁の影。


味方の影。


戦場そのものが影王の領域だった。


誰も気付かない。


気付けない。


それが影王だった。


蒼穹の塔の指揮官もまた優秀だった。第二防衛線の突破を最優先に判断し、地下都市側へ主力を集中させている。崩落罠を突破し、拘束網を切り裂き、睡眠ガス区域も迂回した。


「罠だけじゃ止まらんな」


アルベルトが呟く。


実際その通りだった。


罠は効いている。


だが決定打ではない。


罠への対応能力も高い。


だからこそ忘れられた洞窟は罠だけに頼らない。


第二防衛線の先には夜狼王がいる。


ヴァルクがいる。


影王がいる。


そしてアダプトキングがいる。


蒼穹の塔の主力飛竜兵が地下都市入口へ到達した瞬間、巨大な影が通路を塞いだ。


ヴァルクだった。


飛竜兵達が一斉に突撃する。


重装甲。


大型槍。


正面突破。


理想的な突撃だった。


だが相手が悪い。


ヴァルクは避けない。


受ける。


止める。


そして殴る。


轟音と共に先頭の飛竜兵が吹き飛び、後続を巻き込んで転がった。


通路が狭い。


それが仇になった。


後ろの部隊は前へ出られない。


前の部隊は退けない。


そこへ崩落罠が発動する。


さらに混乱が広がる。


「嫌な場所ですね」


リリスが苦笑した。


「そう作った」


アルベルトは真顔だった。


その頃、上空では夜狼王と蒼天竜将の戦いが激化していた。


蒼天竜将は強い。


間違いなく今まで戦った飛行系最強クラスだった。


だが夜狼王も成長している。


王候補。


研究施設育成。


共鳴進化。


積み重ねてきた全てが今の力になっていた。


互いに傷付きながらも決定打を与えられない。


そんな均衡状態が続く。


そしてその均衡を崩したのは、戦場のど真ん中で戦う二体ではなかった。


影王だった。


蒼穹の塔指揮官の背後。


数メートル。


そこまで接近していた。


影王は焦らない。


機会を待つ。


王喰の記録。


暗殺者としての本能。


全てがそう告げていた。


一撃で終わらせろ。


蒼穹の塔の指揮官は優秀だった。


だからこそ異変に気付く。


何かがおかしい。


夜狼王もヴァルクも強い。


だが本当に危険なのは別にいる。


そんな直感が背筋を走った。


振り返る。


そして。


赤い瞳と目が合った。


影王。


蒼穹の塔指揮官の表情が凍り付く。


遅かった。


影が揺れる。


爪が閃く。


一撃。


完全な死角からの攻撃だった。


指揮官は咄嗟に防御する。


流石だった。


だが。


防ぎ切れない。


深い傷が刻まれる。


鮮血が舞う。


「敵襲!」


叫び声が響いた。


飛行部隊が反応する。


護衛が動く。


だが影王は既にいない。


再び影へ沈んでいた。


アダプトキングが小さく笑う。


「入ったな」


リリスも頷く。


蒼穹の塔はまだ負けていない。


だが。


戦場は確実に動いた。


指揮官が傷付いた。


蒼天竜将の統率に僅かな乱れが生じる。


飛行部隊の連携も鈍る。


忘れられた洞窟が待っていた瞬間だった。


夜狼王が翼を広げる。


ヴァルクが前へ出る。


影王が再び消える。


そしてアダプトキングが静かに命令を下した。


「総攻撃」


忘れられた洞窟最強戦力が、一斉に牙を剥いた。

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