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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第19話 九百九十位

ランキング戦終了。


勝者。


忘れられた洞窟。


空中に浮かんだ文字を見上げながら、リリスはぽかんと口を開けていた。


「勝ちましたね」


「ああ」


「本当に勝ちましたね」


「ああ」


「九百九十七位に」


「ああ」


「下から二番目に」


「ああ」


「ギリギリでしたね」


「そうだな」


リリスは大きくため息を吐いた。


思い返せば酷い戦いだった。


敵の数は二十体以上。


落盤。


ロックオーガ。


そして戦闘中の配合。


どこを切り取っても普通ではない。


「私、普通のダンジョンに就職したかったんですけど」


「そうか」


「そうかじゃありません」


アルベルトは特に気にしていなかった。


視線は戦場に向いている。


倒れたロックオーガ。


崩れた岩柱。


瓦礫。


地形。


生き残った魔物。


戦いが終わった今も観察を続けていた。


研究者だった。


本当に。


その時。


アダプトジェルゴブリンが近づいてきた。


巨大な身体。


半透明の皮膚。


先ほどまでロックオーガと戦っていたとは思えないほど元気そうだ。


「傷が治ってるな」


アルベルトが言う。


リリスも見る。


確かにそうだった。


つるはしで受けた傷がほとんど消えている。


「再生能力も強化されてますね」


「そのようだ」


「便利ですね」


「便利だな」


アダプトジェルゴブリンは嬉しそうに胸を張った。


少し偉そうだった。


生まれたばかりなのに。


「調子に乗ってますね」


「乗っているな」


するとアダプトジェルゴブリンが不満そうな顔をした。


リリスが吹き出す。


「表情あるんですね」


「あるな」


「可愛いですね」


アダプトジェルゴブリンはさらに胸を張った。


完全に褒められたと思っている。


「単純ですね」


「単純だな」


「アルベルトさんに似てます」


「そうか?」


「自覚ないんですね」


その時だった。


空中の文字が変化する。


眩しい光。


そして新たな表示。



順位変動完了


忘れられた洞窟


998位 → 990位



「え?」


リリスが固まった。


二度見した。


三度見した。


数字は変わらない。


九百九十位。


「ええええええっ!?」


洞窟中に声が響いた。


アルベルトも少し驚いていた。


「思ったより上がったな」


「思ったよりじゃありません!」


リリスは大騒ぎだった。


「八つですよ!?」


「ああ」


「八つも上がりましたよ!?」


「ああ」


「もっと喜んでください!」


アルベルトは少し考えた。


そして頷く。


「嬉しい」


「感情が薄い!」


リリスは頭を抱えた。


しかし内心では嬉しかった。


配属された時。


忘れられた洞窟は終わっていた。


戦力はスライム二体。


維持も限界。


閉鎖寸前。


それが今は違う。


九百九十位。


まだ下位だ。


それでも。


確かに前へ進んでいる。


その時。


再び文字が現れる。



勝利報酬


DP 500獲得


特殊報酬抽選中



「特殊報酬?」


リリスが首を傾げる。


アルベルトも初めて見る表示だった。


学園で習った知識を思い出す。


「下位同士のランキング戦では稀に発生する」


「本当に?」


「らしい」


「らしいなんですね」


アルベルトも見たことはない。


教科書で読んだだけだ。


しばらくすると表示が変わる。



特殊報酬


魔物召喚石×1


獲得



二人が固まった。


数秒。


沈黙。


そして。


「出ましたぁぁぁぁ!!」


リリスが飛び跳ねた。


翼まで広げている。


大興奮だった。


「凄いです!」


「凄いのか?」


「凄いです!」


アルベルトは首を傾げる。


リリスが説明を始めた。


「召喚石ですよ!?」


「そうだな」


「新しい魔物が増えるんですよ!?」


「そうだな」


「仲間ですよ!?」


「そうだな」


「反応薄い!」


アルベルトは石を見る。


確かに価値は高い。


しかし。


彼の興味は別にあった。


「何が出るんだろうな」


「そこですか!?」


研究者だった。


完全に。


リリスは呆れながら笑った。


そして思う。


このダンジョンは大丈夫かもしれない。


普通ではない。


むしろかなり変だ。


だが。


閉鎖を待つだけだった洞窟は確実に変わり始めている。


九百九十位。


まだ下位。


それでも。


忘れられた洞窟の快進撃は、ここから始まるのだった。


その夜。


誰よりも早く召喚石を割ろうとして、リリスに全力で止められるアルベルトの姿があった。


「明日にしてください!」


「なぜだ」


「心の準備です!」


「必要か?」


「私に必要なんです!!」


洞窟に響く二人の声は、以前より少しだけ明るくなっていた。

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