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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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第13話 研究者の戦い方

敵の数は二十を超えていた。


コボルト。


ゴブリン。


そして採掘用の道具を持った個体たち。


暗闇の奥から次々と姿を現すその光景に、リリスは思わず後ずさった。


対するこちらはアダプトゴブリン一体、スライム二体、そして自分。


数だけ見れば話にならない。


普通なら逃げる。


少なくとも正面から戦う戦力差ではなかった。


しかし、隣に立つアルベルトは逃げる気配を見せなかった。


むしろ岩場や通路を見回しながら何かを計算している。


その姿を見て、リリスは嫌な予感しかしなかった。


「アルベルトさん」


「何だ」


「勝てるかもしれないって言いましたよね?」


「ああ」


「根拠は?」


アルベルトは前方を指差した。


敵軍の先頭がいる場所だ。


「見ろ」


「何をです?」


「通路」


リリスは目を凝らした。


確かに敵がいる場所は少し広くなっている。


だが、その先は違う。


こちらへ向かうためには幅の狭い通路を通らなければならない。


横に二人並ぶのも難しいほどの細さだった。


「あ」


リリスも気付いた。


アルベルトは頷く。


「数の利点を殺せる」


採掘型ダンジョンらしい地形だった。


広い採掘場と細い連絡通路。


敵が二十体いても、一度に攻撃できる数は限られる。


ならば。


こちらは一体ずつ相手にすればいい。


「なるほど!」


リリスの顔が明るくなる。


しかし次の瞬間。


別の問題に気付いた。


「でも、それでも二十体ですよ!?」


「そうだな」


「結局多いですよね!?」


「多い」


アルベルトはあっさり認めた。


リリスは頭を抱えた。


話が進んでいるようで進んでいない。


そんな二人をよそに、敵軍も動き始めていた。


コボルトたちが吠える。


ゴブリンたちが棍棒を振り回す。


こちらを敵と認識したらしい。


やがて群れの中央から一体のコボルトが現れた。


他の個体より大きい。


毛並みも良い。


腰には鉄の短剣まで下げている。


「指揮官か」


アルベルトが呟く。


群れの統率役。


つまり頭だ。


そいつが何かを叫ぶ。


次の瞬間。


敵軍が一斉に動いた。


「来ます!」


リリスが叫ぶ。


だがアルベルトは慌てない。


むしろ静かにアダプトゴブリンへ視線を向けた。


「頼む」


短い命令。


アダプトゴブリンは力強く頷いた。


そして狭い通路の入口へ立つ。


まるで門番だった。


最初に飛び込んできたコボルトが牙を剥く。


だが。


速さならアダプトゴブリンも負けていない。


拳が振り抜かれる。


ドゴッ!


鈍い音。


コボルトが吹き飛んだ。


そのまま後ろの仲間を巻き込みながら転がる。


「おお!」


リリスが声を上げる。


強い。


予想以上に強い。


しかし敵も止まらない。


二匹目。


三匹目。


次々と飛び込んでくる。


アダプトゴブリンは拳を振るい続けた。


殴る。


蹴る。


投げる。


通路が狭いため敵は一度に攻撃できない。


完全に地形が味方していた。


「すごい……」


リリスが呟く。


まるで要塞だった。


一体で通路を封鎖している。


その時だった。


敵の後方から石が飛んできた。


採掘ゴブリンだ。


投石。


アダプトゴブリンの肩へ命中する。


鈍い音が響いた。


「危ない!」


リリスが叫ぶ。


だがアダプトゴブリンは後退しない。


肩の傷がゆっくりと塞がっていく。


再生能力。


敵もそれを見て動揺したらしい。


ざわつきが広がる。


「いいぞ」


アルベルトは小さく頷いた。


アダプトゴブリンは予想以上だった。


だが。


本当に注目していたのは別だった。


視界の端。


スライム二体。


ぷるぷると震えている。


戦況を見守っているだけに見える。


しかしアルベルトには見えていた。


頭上に浮かぶ文字。


スライム。


アダプトゴブリン。


成功率 六十一%


昨日と変わらない。


まだ表示されている。


つまり。


今でも可能だ。


「ダメです」


隣から声が飛んできた。


アルベルトは振り返る。


リリスだった。


「まだ何も言っていない」


「顔です」


「顔か」


「絶対配合考えてましたよね?」


否定できなかった。


リリスは額を押さえる。


敵二十体。


戦闘中。


普通なら戦況を心配する。


だがこのダンジョンマスターは違う。


新しい配合のことを考えている。


「本当に研究者ですね……」


半ば呆れながら呟く。


しかしその時だった。


敵軍の動きが変わる。


後方にいた指揮官らしきコボルトが前へ出てきたのだ。


さらに。


その周囲に数体の護衛が集まる。


「アルベルトさん」


「ああ」


リリスも気付いた。


あれが中心だ。


あいつが指揮している。


倒せば敵は混乱する。


だが。


そこまで届かない。


普通なら。


しかしアルベルトは周囲の岩壁を見上げていた。


天井近くまで伸びる巨大な岩柱。


その一部には亀裂が走っている。


恐らく長年の採掘で弱くなっているのだろう。


そして。


敵軍はその真下に集まっていた。


アルベルトは静かに口元を上げる。


リリスの背筋が寒くなった。


「あの」


「何だ」


「またろくでもないこと考えてません?」


「考えている」


即答だった。


「聞くんじゃなかった!」


リリスの悲鳴が響く。


その横でアルベルトは冷静に岩柱を見つめていた。


研究者は知識で戦う。


力がないなら知恵を使う。


そして今。


彼の頭の中では、一つの作戦が完成しようとしていた。


その作戦の標的は。


敵軍の真上にそびえる巨大な岩柱だった。

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