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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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101/106

第101話 後継者認証

第一育成区画。


静かな森の中。


アルベルト達は幻影狼を見つめていた。


三十年以上前の研究施設。


そこに眠っていた研究個体。


そして。


アルベルトへ頭を下げた存在。


普通ではない。


どう考えても普通ではない。


「本当に研究個体なんですか?」


リリスが小声で聞く。


「そう表示されていたな」


「研究個体が三十年以上生きているんですか?」


「そこも気になる」


全員が警戒を解かない。


森護兵将。


岩牙守護将。


アダプトロード。


いつでも動ける状態だった。


だが。


幻影狼は敵意を見せない。


むしろ静かだった。


どこか懐かしむように周囲を見ている。


まるで。


主人の帰還を待っていたかのように。


その時。


再び通知が浮かび上がった。



後継者認証進行中



研究管理権限照合



沈黙。


リリスが固まる。


「また出ました」


「ああ」


アルベルトが画面を確認する。


そして。


次の瞬間。


第一育成区画全体が光った。


森。


小川。


育成槽。


全てが反応する。


管理者認証。


施設そのものがアルベルトを調べている。


そんな感覚だった。


数秒後。


通知が更新される。



適合率


61%



「低くないですか?」


リリスが言う。


「高くもないな」


研究者本人なら百%だったのだろう。


つまり。


アルベルトは完全な後継者ではない。


だが。


無関係でもない。


その時だった。


幻影狼が立ち上がる。


「グル」


低い鳴き声。


そして。


ゆっくり歩き始めた。


奥へ。


最終研究区画がある方向へ。


「案内してるのか?」


アルベルトが呟く。


幻影狼が振り返る。


そして再び歩く。


どう見ても案内だった。


「行きましょう」


リリスが言う。


探索隊が動き出す。


森を抜ける。


途中。


様々な施設が見えた。


育成檻。


訓練場。


特殊環境室。


どれも今は停止している。


だが。


昔は使われていた。


忘れられた洞窟が研究施設だった証拠だった。


その頃。


「ぷに」


ぷには寄り道していた。


当然だった。


小川を見つける。

 

飛び込む。


流される。


「ぷにぃぃぃ!」


夜宝守が慌てて追い掛ける。


いつもの光景だった。


リリスが頭を抱える。


「真面目に探索してください」


誰に言っているのか分からない。


本人達は楽しそうだった。


数分後。


一行は広場へ出た。


そこには石碑が並んでいた。


十本。


二十本。


三十本。


異様な数だった。


アルベルトが近付く。


一番手前。


そこに刻まれていた文字を見た瞬間。


全員が固まった。



研究個体001


失敗


 

次。



研究個体002


失敗



さらに。



研究個体013


失敗



失敗。


失敗。


失敗。


石碑のほとんどが失敗だった。


研究墓標。


そう呼ぶべき場所だった。


「これ……」


リリスが言葉を失う。


普通の配合士は成功率が低い。


だが。


目の前の研究者は違った。


成功率が低いから失敗したのではない。


成功した後。


さらに上を目指した。


その結果。


数え切れない失敗が積み重なった。


そんな気配を感じる。


そして。


最奥。


一つだけ。


黒い石碑があった。


他と違う。


失敗とも書かれていない。


幻影狼はその前で止まった。


静かに座る。


まるで墓守のように。


アルベルトが近付く。


石碑に触れる。


すると。


文字が浮かび上がった。



研究個体零番



成功



管理者補佐個体



名称


幻影狼



沈黙。


リリスが息を呑む。


アダプトロードも固まる。


幻影狼は研究個体だった。


だが。


失敗作ではない。


最初の成功作。

 

研究者が作り上げた最高傑作の一つだったのである。


その時。


さらに下の文字が現れた。


誰も見たことのない記録。


三十年前の研究者が残した言葉。



私が戻らなかった場合


零番に託す



後継者を導け



そこで映像が終わる。


静寂。


森を風が吹き抜ける。


幻影狼は何も言わない。


ただ。


ずっと待っていたのだ。


三十年以上。


研究者の代わりに。


後継者が来る日を。


そして今。


 

その役目を果たそうとしていた。

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