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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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101/223

第101話 後継者認証

第一育成区画。


静かな森の中。


アルベルト達は幻影狼を見つめていた。


三十年以上前の研究施設。


そこに眠っていた研究個体。


そして。


アルベルトへ頭を下げた存在。


普通ではない。


どう考えても普通ではない。


「本当に研究個体なんですか?」


リリスが小声で聞く。


「そう表示されていたな」


「研究個体が三十年以上生きているんですか?」


「そこも気になる」


全員が警戒を解かない。


森護兵将。


岩牙守護将。


アダプトロード。


いつでも動ける状態だった。


だが。


幻影狼は敵意を見せない。


むしろ静かだった。


どこか懐かしむように周囲を見ている。


まるで。


主人の帰還を待っていたかのように。


その時。


再び通知が浮かび上がった。


⸻


後継者認証進行中


⸻


研究管理権限照合


⸻


沈黙。


リリスが固まる。


「また出ました」


「ああ」


アルベルトが画面を確認する。


そして。


次の瞬間。


第一育成区画全体が光った。


森。


小川。


育成槽。


全てが反応する。


管理者認証。


施設そのものがアルベルトを調べている。


そんな感覚だった。


数秒後。


通知が更新される。


⸻


適合率


61%


⸻


「低くないですか?」


リリスが言う。


「高くもないな」


研究者本人なら百%だったのだろう。


つまり。


アルベルトは完全な後継者ではない。


だが。


無関係でもない。


その時だった。


幻影狼が立ち上がる。


「グル」


低い鳴き声。


そして。


ゆっくり歩き始めた。


奥へ。


最終研究区画がある方向へ。


「案内してるのか?」


アルベルトが呟く。


幻影狼が振り返る。


そして再び歩く。


どう見ても案内だった。


「行きましょう」


リリスが言う。


探索隊が動き出す。


森を抜ける。


途中。


様々な施設が見えた。


育成檻。


訓練場。


特殊環境室。


どれも今は停止している。


だが。


昔は使われていた。


忘れられた洞窟が研究施設だった証拠だった。


その頃。


「ぷに」


ぷには寄り道していた。


当然だった。


小川を見つける。

 

飛び込む。


流される。


「ぷにぃぃぃ!」


夜宝守が慌てて追い掛ける。


いつもの光景だった。


リリスが頭を抱える。


「真面目に探索してください」


誰に言っているのか分からない。


本人達は楽しそうだった。


数分後。


一行は広場へ出た。


そこには石碑が並んでいた。


十本。


二十本。


三十本。


異様な数だった。


アルベルトが近付く。


一番手前。


そこに刻まれていた文字を見た瞬間。


全員が固まった。


⸻


研究個体001


失敗


⸻

 

次。


⸻


研究個体002


失敗


⸻


さらに。


⸻


研究個体013


失敗


⸻


失敗。


失敗。


失敗。


石碑のほとんどが失敗だった。


研究墓標。


そう呼ぶべき場所だった。


「これ……」


リリスが言葉を失う。


普通の配合士は成功率が低い。


だが。


目の前の研究者は違った。


成功率が低いから失敗したのではない。


成功した後。


さらに上を目指した。


その結果。


数え切れない失敗が積み重なった。


そんな気配を感じる。


そして。


最奥。


一つだけ。


黒い石碑があった。


他と違う。


失敗とも書かれていない。


幻影狼はその前で止まった。


静かに座る。


まるで墓守のように。


アルベルトが近付く。


石碑に触れる。


すると。


文字が浮かび上がった。


⸻


研究個体零番


⸻


成功


⸻


管理者補佐個体


⸻


名称


幻影狼


⸻


沈黙。


リリスが息を呑む。


アダプトロードも固まる。


幻影狼は研究個体だった。


だが。


失敗作ではない。


最初の成功作。

 

研究者が作り上げた最高傑作の一つだったのである。


その時。


さらに下の文字が現れた。


誰も見たことのない記録。


三十年前の研究者が残した言葉。


⸻


私が戻らなかった場合


零番に託す


⸻


後継者を導け


⸻


そこで映像が終わる。


静寂。


森を風が吹き抜ける。


幻影狼は何も言わない。


ただ。


ずっと待っていたのだ。


三十年以上。


研究者の代わりに。


後継者が来る日を。


そして今。


 

その役目を果たそうとしていた。

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