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脳筋消防士、死んだら神にスカウトされた  作者: antomopapa


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第218話 神の仕事、マニュアル化される



天界・管理区画。

今日も平和だ。

平和すぎて、

書類の音しかしない。

「……なあ」

統括が椅子にもたれながら言った。

「最近、雷関係の報告書、減ってないか?」

ウェスタは淡々と書類を整理しながら答える。

「はい。

 下界側で自動制御が進みましたので」

「自動制御?」

「はい。雷の発生条件、電圧調整、放電経路――

 すべて“手順書”に落とし込まれています」

統括は眉をひそめた。

「……手順書?」

「はい。

 “雷運用マニュアル・第七版”です」

「第七版!?」

雷神ゼウスが、ひょこっと顔を出す。

「それ、僕も見たよ」

「お前も把握してるのか」

「うん。

 人間、すごいね。

 雷の“気分”を数値化してる」

「気分って言うな」

―――

下界。

ある研究都市。

巨大な施設の中央に、掲示板がある。

そこに貼られているのは――

【雷運用ガイドライン】

・雷は資源である

・怒らせない

・驚かせない

・勝手に祈らない

・異常時は再起動

研究者たちは真剣だ。

「雷流量、基準値内」

「神依存率、さらに低下しました」

誰も「神」とは言わない。

言うのは「雷」。

ただのインフラ。

―――

天界。

統括は、その様子を見て頭を抱えた。

「……俺たち、もう要らなくない?」

「要りますよ」

ウェスタが即答する。

「どこが」

「“最終責任者”です」

「嫌な役職だな!」

雷神ゼウスは画面を覗き込んで、感心していた。

「でも、ちゃんとしてるよ」

「何がだ」

「“神が何もしない前提”で組まれてる」

統括は黙った。

確かに。

そこには

「神の気まぐれ」

「神の怒り」

「神の慈悲」

そんな項目は一切ない。

あるのは、

・想定外

・再現性

・対処フロー

「……強くなったな」

統括が、ぽつりと言う。

―――

そこへ、エキドナが顔を出す。

「ほう。

 これが雷の運用表か」

「お前、仕事放り出して見に来るな」

「面白いじゃろ」

エキドナはにやりと笑った。

「神がいなくても回る世界。

 昔は夢物語だったがの」

「今は現実だな」

「じゃが」

エキドナは画面を指差す。

「“完全停止時の復旧方法”が空白じゃ」

ウェスタが答える。

「そこは未定義です」

「ほらな」

エキドナは肩をすくめる。

「最後の最後だけ、

 神の席が空いておる」

―――

雷神ゼウスは、少し考えてから言った。

「じゃあさ」

「ん?」

「僕の仕事、

 “マニュアルに書いてないことだけ”でいい?」

統括は一瞬、目を見開き――

そして、笑った。

「それ、最高に神っぽいな」

「でしょ?」

「仕事量は?」

「ほぼゼロ」

「……超ホワイト継続か」

―――

その夜。

下界では雷が安定して流れている。

誰も祈らない。

誰も感謝しない。

それでも、止まらない。

雷神ゼウスは、雲の上でマニュアルを閉じた。

「ふーん……」

そこには最後に、こう書いてあった。

【備考】

想定外の事象が発生した場合、

原因不明として処理すること。

「原因不明、か」

ゼウスは、少しだけ笑った。

「それ、僕だね」

雷は今日も流れる。

神の仕事は、

マニュアルの外側に移動した。


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