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晴天のプレリュード〜幼馴染を勇者に奪われたので、追いかけて学園と傭兵ギルドに入ったら何故かハーレムを作ってしまいました〜   作者: 妖刃ー不知火
第陸章・導魔の烙印・まにあったもの編

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同調

「……マリ……エナ?」


 目の前に現れた二人のマリエナの姿に、レクスは呆然と口を開けていた。


 髪色と瞳、衣服が違うだけの二人は全く同じ容姿をしている。


 身長や角、胸の大きさや尻尾に羽根の形などの身体つきはもちろんのこと、声までそっくりなのだ。


 そんな二人は、全く同時にレクスへと顔を向けた。


「レクスくん、大丈夫? ケガとかない!?」


「マスター。おねーちゃんとびぃが来ましたよ。安心してくださいね。」


 口に手を当てて上品に笑う少女はマリエナと同じ声なのだが、その声色はなぜかマリエナよりも幼いような雰囲気だった。


「は!? ま、マスター!? あ、あんた誰だよ?」


 唐突にマリエナと共に現れた少女に、「マスター」と言われ、レクスは困惑を露わにする。


 マリエナと全く同じ声で「マスター」と呼ばれることに、レクスは戸惑いと同時に妙なむず痒さを覚えていた。


 紅の目を見開いて指を向けるレクスに、正体不明の少女はにこやかな笑みを口元に浮かべていた。


「あぁ、この「姿」はマスターにとっては初めてだったんですね。……びぃの紹介は後です。今はあの化け物をぶっ倒しちゃうことが先です。」


「うん。そうだね。……レクスくん。「わたしたち」は強いんだよ? だから、あの怪物は任せて。レクスくんは、周辺の人たちを避難をお願い。」


 力強く口元を上げ、レクスに笑顔を向けるマリエナ。


 その笑顔は自信に満ち溢れている。


 傲慢や驕りなどではない言葉だったのはレクスから見ても間違いないものだった。


 だからこそ、そんな二人にレクスは頷いた。


「……ああ。わかった。……気を付けろよ。あれの弱点は、眉間だ。……頼んだ。」


「うん。任せて。……惚れなおしちゃ駄目だよ、レクスくん。」


「おねーちゃんとびぃを見ててくださいね。マスター。……できればびぃにも、これが終わったらマスターの「ご褒美」をしてください。そうすれば、頑張れちゃいます。」


 マリエナも、瓜二つの少女も。


 全くそっくりな美貌で妖しくレクスに微笑みかける。


 それは本当の姉妹のような笑顔だった。


 そんな二人に、レクスはこくん、と肯く。


「……ああ。……任せた! 二人とも!」


 レクスは二人に少し頭を下げた後、踵を返して駆け出した。


 巨人は四体もいるのだ。


 今この場でぼぉっとマリエナたちの戦いを観ながら、留まっているわけにはいかない。


 四体の巨人を撹乱し、広場に押し留めること。


 そのためにレクスは動く。


 ちらりと横目で闊歩する巨人たちを見ながら、レクスは顔を顰め、ぎりりと奥歯を噛んだ。


(……許せねぇ。一体、何だってんだ……!)


 この広場は、レクスの思い出がある場所なのだ。


 土足でそんな思い出を踏み荒らされた気がして、レクスは赤い爪の跡ができる程に拳を握り込んだ。


 ヒビの入った石畳を駆けるレクスの元へ、ふわりとキューが飛び寄る。


「レッくん! この周囲に人はいないよ! さっきの女の子と男の子だけだった!」


「ああ。すまねぇな! キュー!」


 キューの報告に、レクスは僅かながら安堵したように息を吐く。


 先ほどまでキューには、空からの偵察をしてもらっていたのだ。


 そんなキューは走るレクスの隣を飛びつつ、じっとりとした目を向けていた。


「……そーいえばレッくん、さっきのシスターみたいな女の子って、誰? ぼく見たこと無いんだけど。」


「……今は後回しだ! まずはあの怪物たちを何とかしねぇと!」


「りょーかい。……ぜったい後でしっかりと教えて貰うから!」


 何故か刺々した口調で話すキューとともに、レクスはボロボロになった広場を必死に駆ける。


 日常から戦場へと姿を変えた広場の中、不幸の連鎖を食い止める為に。


 ◆


 レクスを見送った直後。


 巨人はじっと立ち止まり、二人の少女をの動きを探るように見据える。


 マリエナと少女は、片腕を失った巨人の前に立ちはだかっていた。


 巨人は恨みを込めたように眼窩を明滅させ、二人に向かってその脚を進めている。


 にゅるにゅると肩口からどす黒い闇が湧き上がり、巨人の腕を一瞬で再生させる。


 響く地鳴りのような足音。


 マリエナと少女の二人は、そんな巨人に怯んでいなかった。


 ちらり、と。


 マリエナは、少女に目を向ける。


「じゃあ、行くよ! 合わせて!」


「わかりました、おねーちゃん! 合わせますよ!」


 ばさり、と。


 蝙蝠の羽根を拡げて、二人は地上から空へ飛び上がる。


 二人は両手を前に出し、指をそれぞれ前に突きだした。


 呼吸を合わせ、二人は異形の巨人を見据える。


 マリエナは少女の思いと自分の思いを合わせる事など、児戯に等しい程に容易であった。


 何故なら、マリエナにとって少女は《《自分自身であり》》、少女にとってのマリエナも、《《少女自身のこと》》なのだから。


 異形が、大きく拳を空中に向けて振り被った。


 瞬間。


「「ダークネスバインド!」」


 二人の声が同調シンクロする。


 少女たちの指先から、黒い縛糸がまるで蛇の如く異形の巨人に向けて伸び進む。


 真っ向から向かう巨人は知能があまり高くはないのか、避けずにただ突っ込んでくるのみだった。


 異形の巨人に、二十本もの黒い縛糸が一斉に絡みつく。


 次から次に巻き付けられていく縛糸は、その巨人の動きを制圧していく。


 戸惑うように、動きを止めた巨人。


 その隙に、二人は異形の真後ろに空中で回り込んだ。


 ギチギチと縛りつけられた魔力の縛糸を、巨人は振りほどく事も、引き千切る事も出来ない。


 身体全体ではなく、肘や膝、所謂関節部であろう場所に食い込んだ縛糸は、異形の身体の自由を奪い取っていた。


「おねーちゃん!」


「うん! 行くよ!」


 少女の掛け声に合わせ、マリエナはくるりと身体を翻す。


 少女も、全く同時にマリエナと動きを同調させた。

 自分が二人いる、と。


 そう言っても過言ではないほどに、マリエナと少女は動きを合わせることが出来ていた。


 二人はそのまま、勢い良く空中から地面に向けて羽ばたき、加速する。


 向かってくる地面に恐怖を感じる事も無く、手を引き寄せながら石畳に足をついた。


「「せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!」」


 二人同時に、縛糸を引きながら掛け声を上げる。


 そして、ふっと嘘のように縛糸が消えた瞬間。


 どがしゃああああああああん、と。


 少女たちの何倍もある異形の巨人が、たった二人の少女によって。


 地面に引き倒され、いとも容易く、その巨体を打ち据えられた。

お読みいただき、ありがとうございます。

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